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「その証言次第であなたの気持ちが変わるということで、今のところ決着じゃないですか?」
「……そう……か。さすがねバーテン君」
まるで扇子がパタパタと畳まれて一本の棒になったように、片が付いた。
大沢君の証言次第
逮捕された栗尾さん
みんなが栗尾さんに同情的なのは、私が追い詰めたと思っているせい
それには根拠がないと、バーテン君が分析した
ただそれが、栗尾さんの妊娠が事実なら、大沢君とは別れる
そして
そこまで考えて、浅井はしゃがみこんだ。
そこで事が終わらないと気付いた。
ついさっき、母に帰って来いと言われたではないか。
浅井にとってそれは地獄に堕ちろと言われているに等しい。
浅井はしゃがんだまま壁に寄りかかり両手で顔を覆った。
「バーテン君」
しばらく経ってから、呟いた。
「はい」
上から返事が降ってきた。
もういなくなっているのではないかと思いながら呼んだので、やはりこの子は親切なのだなとほっとした。
「バーテン君のお母さんは、どんな人?」
訊きたくないのに訊いてしまう。
だけどこの子なら、あなたのお母さんだってあなたのことを思っているからこそ厳しいのだ、なんて非情なことは言わないはず。
そんな期待をして、訊いた。
その期待が、おかしな方向に外れた。
「俺、両親いません」