表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
JOY  作者: co
第12章・アッシュグレイの鬼
111/130

「あ、君島連れて帰ります。お大事に」

 バーテンがおじぎをして立ち去ろうとするので、

「待って!」

 と浅井はバーテンの腕を取って廊下を走り出した。

「なんですか!どこに行くんです!」

「屋上!」

「はぁ?ここ1階ですよ!屋上ってなんですか!」

「ここから逃げる!誰もいないところに行く!」

「それなら!」


 バーテンが浅井の腕をつかみなおして急停止し、言った。

「こっちの先が、入院病棟です。そこの渡り廊下はほとんど人が通りません」

 そしてその腕を離してバーテンが歩き出したので、浅井はやはりバーテンの腕を取って走り出した。

「なんで走るんですか!」

「逃げるって言ってるでしょ!」

「何からですか」

 浅井は返事をしなかった。



 走って走って、渡り廊下に着いた時には息が切れていた。

 そして病室から離れたせいか、運動して気が晴れたのか、少しすっきりしていた。

 これなら頭もすっきりしてるかしら。

 バーテン君に上手く説明できるかしら。

 まだ口を開けて息をしながら、バーテンを見上げると、バーテンはさほど息を上げてはいなかった。

 浅井が落ち着くのを待っているのか、場所が珍しいのか、あちこちに視線を飛ばしている。

「バーテン君」

 浅井が声を掛けると、バーテンが浅井を見下ろした。

「あなたに、猫の時みたいな、簡潔な答えを、出して欲しいの」

「は?」


 あ、だめだ。私全然すっきり落ち着いてなんかいない……。


「えっとね、説明するから、教えて欲しいの」

「何を?」

「何でもいいの。あなたの答え」


 バーテンの答え。

 猫のことを、俺が不愉快だったからやっただけで、猫のためじゃないです、と答えたバーテン。

 きっと私の問題も簡潔に本質を掴んでくれる、浅井はそう思った。


「まず、私今日会社で同僚に刺されて、」

「ああ、さっき病室の外でだいたい聞きました。君島の声がでかかったんで」

「そう……?」

「で、それが?」

「……わかんない」

「え?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ