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JOY  作者: co
第1章・キャメルの天使
11/130

10

 浅井は驚いて自分の頬に触れてみようとして、君島にその手を握られた。

「触らないで、コンタクトは僕が取るから」

 そうか、涙でコンタクトが取れたのか。


 そうか、泣いてるのか。

 そう認めたら、次々と涙が湧いてきた。


 なんだろうこの涙は。


「ああ、ごめんね、このコンタクトもう使えないんだよね、」

 君島がおろおろしながらそんなまぬけなことを言う。

 可笑しくて、笑った。それでも涙は止まらない。


 なんだろうこの涙。


「僕、ハンカチもティッシュも持ってないよ。このペーパーナプキンでいい?」

 君島がそれを浅井の頬に当て、涙を吸い取った。

 またわずかに触れた指が温かい。



 その、温かい手が、嬉しい。

 温かい視線が嬉しい。

 涙の理由なんてわかっていた。




 私は寂しかったのだ。こんなにも。




「ごめんね~、浅井さん、今度また飲みに行く話、ナシにしないでね!」

 浅井はまた声を上げて笑ってしまった。泣きながら。

 こんな涙は初めてだ。

 浅井は目を押さえて、涙を収めようとした。

 笑ってごまかす方法はないだろうかと考えながらも、涙は止まらない。


 今は嬉しいのに、笑ってるのに、どうして止まらないんだろう。

 そしてその涙も、ずいぶん気持ちがいいのだ。

 君島を困らせていることも、気持ちがいいのだ。


 こんな涙は初めて。

 ありがとう。君島君。


 浅井は笑いながら、泣きながら、そんなことを考えていた。





 その時、聞き覚えのある声が浅井を呼んだ。




「あの、……浅井さん、ですよね?どうしたんですか?」




 大沢が二人のテーブルの横に立っていた。

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