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浅井の視線に気付き、二人の警官は広げた手帳をバッグに仕舞って、
「またお話伺いにくるかもしれませんのでよろしく」
と言ってカーテンを開け、そこにいた浅井の母に会釈をした。
すると母は深々と頭を下げて、言った。
「この度は娘のみっともない不始末にお手を煩わせてしまって本当に申し訳ありません」
そして振り返り、カーテンを閉めて、浅井に言った。
「あんたは何年経っても結局こんな見苦しい真似ばっかりしてうちに恥をかかせるんだね」
鼓動が激しくなり
呼吸が早くなり
体が震えてきた。
妊娠している娘さんの彼氏を寝取ったって?
さぞかし簡単だったでしょうよ
刺されて当たり前だわ
恥ずかしいと思わないの?
こんなことで呼び出されて、いい迷惑だわ
わからない
わからない
助けて
誰か
先輩
先輩
浅井はベッドの上で膝を立て、体を丸めて耳を塞いでいた。
だけどその甲高い大声は、聞こえた。
「誰だよ、そんな鬼のようなこと浅井さんに言ってんのは!」
カーテンを開けて、オレンジのブルゾンを着た君島が立っていた。