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また白い天井。
ベージュのカーテン。
あの時の夢だろうか。
浅井が病室で目を開けた。
メガネをかけていないので、ぼやけた色しか見えない。
しかし悪夢で何度となく見ている色と同じだ。
体を起こして周りを見回し、手を伸ばしてメガネを探した。
ザッという音がしてからしばらくして、手にメガネが渡された。
ありがとうございます、と言ってメガネをかけ顔を上げると、スーツを着た男女が立っていた。
「県警の佐藤と鈴木です。お話伺ってよろしい?」
女性が訊いてきた。
あの時の夢じゃないようだ。あの時は男性警官二人だった。
しかし訊かれることはあまり違わない。
名前、年齢、住所、職業。ばかみたいな質問だ。
「それで、何があったかあなたの口から聞かせてくれる?」
言葉が馴れ馴れしく高圧的だ。
以前の男性警官は、明らかに小娘の自分に対して始終敬語だった。
女性の方が怖いのだな、と浅井はぼんやり感じている。
「聞こえてます?何があったか、覚えてますよね?」
何があった?
一瞬紗が掛かったような事務所の様子が頭に浮かんだ。
砂利を踏む音
被さってきた重いもの
床に広がる黒い染み
「……大沢君」
「そうそう、そのことね」
「大沢君は、容態はどうなんですか?」
「手術も終わって、命に別状はないそうよ。よかったわね」
はぁ……と浅井は心臓を押さえた。
「そのことを訊きたいのよ?こっちは」