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JOY  作者: co
第11章・錆色の狂気
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 大沢の出現で事務所内のざわつきが一段高くなったが、浅井は電話に出ていたので気付かなかった。

 電話を終えようとした時に悲鳴が混じったので、顔を上げた。

 ジャッジャッという、砂利を踏むような音が耳についた。

 右を向くと、栗尾が近づいてきていた。

 浅井さん!と、聞きなれた大声がした。


 その声に顔を向けようとした時に、



 肩に、焼けるような痛みが走った。

 直後に大きく重いものが被さってきた。

 その大きいものからは、慣れた匂いがした。

 そしてそれは、徐々に浅井の体からずり落ちていった。


 その大きい体の脇腹には、カッターナイフの刃が、全部埋まっていた。



 事務員たちの悲鳴が部屋の中で反響する。

 営業マンたちは声も出せず、動けもしなかった。

 やっと一人だけ、救急車を呼ばなければと気付き受話器を外したものの、番号が浮かばない。

 事務員たちも、救急車!救急車!と言い出した。

 119!119!

 そうか、そうか、と営業マンは、震える指を渾身の力で押さえ込み、1を押した。


 悲鳴が途切れない中、最も大声を張り上げているのは栗尾だ。

 事務員たちに押さえられながらも大声を上げ続けている。

 どうしてこんな女庇うのよ!

 全部この女のせいじゃないの!

 だまされてるのよ大沢君!

 起きてよ!聞いてるの!



 浅井の耳は、何も聞いていない。

 目の前に倒れている大沢の姿に時を止められた。

 大沢は椅子に座る浅井の下に体を丸めている。


 じきに、脇腹から流れる血が、床に黒い染みを広げていった。


 浅井は椅子から下りてそのまま膝をつき、大沢の側に両手をついた。


 もう、いや

 浅井は首を振った。

 もういやなのに


 浅井もゆっくり、大沢の上に被さった。



「救、救急車、刺されて、男が腹、刺されてて、はい、一人、一人です、警察?まだで、……あっ!!!もう一人!もう一人倒れた!救急車追加!」

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