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JOY  作者: co
第11章・錆色の狂気
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 日曜の夜遅く、大沢は自分の部屋に戻った。

 そのマフラー、クリスマスに間に合わないよね、と言い残して。

 そして部屋に戻ってから携帯の電源を切っていたことを思い出したが、まだ浅井との時間の余韻を消したくなくてそのまま放っておいた。




 翌朝浅井は久々に出勤した。

 ちょうど一週間の病欠。後ろめたい気持ちは全くなかった。

 ただ困ったのは、誰一人として浅井を一目で認めてくれなかったことだ。そして必ず驚きの大声を上げること。



 驚かなかった人間が一人だけいた。

 栗尾だ。


 もちろん探偵から報告が入っていたから浅井の変身はとっくに知っていた。

 大沢が浅井の部屋に泊まったことも知っていた。

 朝礼の後に浅井が部長に声をかけ会議室に二人で入っていったが、それもどんな話かの予想はついている。

 大沢と別れなければ退社に追い込むと部長に脅させたのが、栗尾だからだ。

 事務員との不倫を社長の耳に入れないこととの交換条件。部長は二つ返事で呑んだ。

 それなのに昨日まで大沢と一緒に二晩いたのなら、部長への返事は一つだろう。


 栗尾は、鼻で笑った。


 

 困ったおばさんね。




 大沢も出社して、田村とばったり会ったので挨拶すると、首を傾げて無視された。

 不可解に思ったが朝は準備に忙しいのでそのまま放っておいた。

 そしていざトラックで出かけようと運転席に乗り込もうとした時に、田村の大声が聞こえた。

「大沢!お前、昨日までどこ行ってたんだ!携帯も切って!」

 大沢はあっけにとられてしばらく動作を止めてから、答えた。

「お前に教える必要ねぇだろ」

「ふざけんなよお前!いいかげんにしろ!」

 被せるように田村が怒鳴った。


 大沢には田村のその態度がやはり不可解で、何かあったなというわずかな不安も覚えた。

「何怒ってんだよ?」

 大沢はトラックを降りて、田村に相対した。

 田村は大きくため息をついて、怒った表情のまま、言った。


「もうみんな知ってんだぞ。あんまりだろ?」

「みんなって何が?あんまりって何だよ?はっきり言えよ」

「んなこと言わせんなよ!みっともねぇ!」

「言わねぇとわかんねぇだろ!何だよ一体!」

「どうせ浅井さんのとこに行ってたんだろってことだよ!」

 大沢は口を噤んだ。

「ほらみろ!そうなんだろ!少しは栗尾の気持ち考えろよ!」

「あ?」

 大沢が目を見開いた。

「あじゃねぇよ!最低だなお前!栗尾の腹に子供がいるんだろ?!」

「ああっ?!!!」

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