10
とりいそぎ大沢はトランクスを穿いて、Tシャツを下ろし、パーカーを羽織りなおした。
そして浅井を見上げると、着崩れもせずにすっきりと立っている。
やはり大沢は少し腹が立った。
俺をこんな格好にさせて、自分は全然変わっていない。
おまけに、可愛いとか言われて。
大沢も立ち上がった。
「コーヒー入れる?」
そう訊いた浅井を大沢が後ろから抱いた。
「いらない」
そう言って首に唇をつけた。
「髪、染めたんだね」
「そう、チョコの色」
「花の匂いがする。香水?」
「あれ?まだ残ってる?つけたの夕方なのに」
「この匂い……」
あの夜、外に匂ってきたものと同じだ。
「バラの香水」
「バラなんだ」
「ジョイって名前」
「……洗剤?」
「そういうこと言わない!」
笑う浅井の首に唇をつけたまま、上着に手を滑り込ませて素肌を抱いた。
スカートの下から手を入れると、あ!と浅井が座り込んだ。
「何?浅井さん?」
大沢がしゃがんで訊くと、
「さっき下全部脱いじゃったから……」
と答えられて呆れた。
「知ってるよ。てか俺なんかさっき全部脱がされたんだよ?」
そして大沢はため息をついて、座り込んだ浅井を抱き上げ、
「寝室どっち?」
と訊き、指さした方に浅井を運んだ。
ベッドの上に浅井を置いて、改めて服を脱がしにかかった。
自分で脱ぐという浅井を押さえつけて、無理やり脱がせた。
そして、宣言した。
「この後、俺に触らないでよ。分かってると思うけど」
浅井はわずかに絶句してから、反論した。
「そんなの、おかしいわよ!だって先にそういうことしてきたのは大沢君でしょ!」
「だってさっき、俺を可愛いって言った。俺は、可愛くないよ」
「え?なにそれ?」
浅井が反論する前に、大沢はもう始めていた。
二人は、二つの夜と二つの昼をほとんどそのベッドの上で過ごした。
ジョイは先輩だけの香りじゃなくなった。