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CHANGE the WORLD  作者: 清泪(せいな)


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12 死ねっ!と死んでたまるかっっ!!

「ぐあああああああああああああっ!!」


 自分のものとは思えない叫び声が喉を裂く。

 武志は意志もなく、全身の感覚を吹き飛ばす激痛をただ吐き出す。

 胸を抉る螺旋、司馬が成り変わった殺意をぶつけるドリル。


「死ねぇぇぇぇぇぇぇ、本庄武志ぃぃぃ!!!!」


 司馬の咆哮、脳に揺らす音波、武志の胸を抉る螺旋が血飛沫を撒き散らす。

 言われるがまま、望まれるがままに死ぬのか。

 いや、こんな簡単に死ねるわけがない。

 父親と姉が生きているとするならば、また会いたいと思う。

 司馬が、いやあのバスの事故にあった皆が得体の知れない何かにより変貌して殺意に狂ってしまうのなら、救いたいと思う。

 ここで死んでしまえばそのどちらも叶うことはない。

 ならば、歯を食い縛り、やることがあるはずだ。

 痛みになど、胸を抉る程度の痛みになど負けていられるはずがない。


「死んでたまるかぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


 武志は歯を食い縛り消え入りそうな腕の感覚を辛うじて繋ぎ止めて、ドリルの先端部、司馬の脚を抱え込むように掴んだ。

 ドリルの螺旋回転の速度を少し緩める程度の足掻き。


「さっきと同じように投げれるなんて、思うなよっっ!」


 司馬は変形した“指”に力を込める。

 それは翼と変形した手を支え伸びる骨格の部分。

 力を込めたことで骨格が曲がり鋭角な凹凸を生み出す、まるでノコギリのような抉り斬る為の凹凸。

 螺旋を掴む武志の腕の中で形状は変化し、翼に生まれた刃が腕を、黒鉄の腕を傷つけ抉っていく。


 崩れた胸の影響だけではない。

 全身の感覚が吹き飛び、消えかけているのは、痛みだけのせいではない――指向性を持たせた音波は胸部一点突破など生易しいものでない。

  武志の全身の黒鉄を崩し破壊する、音波兵器。

 変貌して間もないというのに、硬さを誇る優越は一時しか持たず、あっという間に危機的状況だ。

 こんなにも簡単に黒鉄の外装が剥がされるのならば、生身同然である。

 生身で、ただの一介の高校生が化け物に変貌した同級生をどうやって止められるというのか。

 このままでは、司馬のドリルに身体が貫かれるか、差し向けられた患者たちに今度は容赦なく押し潰されることになるだろう。


 考えろっ!

 武志は自分を鼓舞する。

 叔父(おやっ)さんの教え。

 どうしようもない時、最後の最後に自分のケツを叩けるのは自分だけだ。

 考えろっ!

 回り続ける螺旋、抉るドリル。

 黒鉄の外装を剥ぎ、皮膚を裂き、脂肪と筋肉を切り裂いて、骨まで砕こうとする。

 翼のノコギリに両腕は既に骨が僅かに見えるほど抉られていた。

 痛みは既に激痛を通り越し麻痺している、神経すらやられたか。

 考えろっ!

 腕はもう駄目だ、使い物にならない、動かない。

 だったら、動かせるものは何だ?

 足だ、頭だ。


 武志は頭を大きく後ろに振りかぶった。

 神経がイカれたのか、痛みも意識も薄れていく。

 頭を後ろに振りかぶったことでそのまま倒れそうになる。

 倒れたらそのまま死ぬことになるだろう。

 武志は歯を食い縛り、足を踏み込んで、頭を前へと振りかぶる。

 脳を揺らす音波を振り切るような一撃、渾身の頭突き。

 届く範囲はすぐそこだ、当てる狙いはすぐそこだ。

 ドリルの先端部、司馬の脚、先程折った左足。

 一撃で、破壊してやる!

 消えそうになる意識、感覚、全てを武志は頭突きに、額に集中させた。


 ゴォォッキッッ!!!!


 ドリルの先端部、翼をも巻き込んで司馬の左足を砕き折る音。

 螺旋は止まり、翼が開かれる。

 痛みの声を上げる暇もなく、司馬はすぐさま翼を羽ばたかせて上空へ逃れようとする。

 折れた左足が更に折られる、なんて生易しいものではない、武志もまた、得体の知れぬ“何か”に変貌を強いられた存在だ。

 意識を額に集中させたことにより、黒鉄は本来の硬さを額一点に取り戻し、朦朧とする意識は殺意を振り払うことはできず、司馬の左足を頭突きで粉々に砕き(・・・・・)吹っ飛ばした。


 頭突きの一撃で足が無くなる。

 そんな脅威的な破壊力、接近して戦うものではない。

 司馬はそう判断して上空へ逃れようとする。

 しかし、それを武志が許すわけはなかった。

 ドリルが離れ、音波が途切れ、黒鉄が再び武志の身体を覆い出した。

 硬さに破壊力、そして再生力。

 全身を黒鉄が覆うだけではない、抉れた皮膚すら回復する再生力。

 司馬にはない力、翼と音波とは違う力。

 それはあまりに卑怯じゃないか。

 そんなことを思いながら司馬は上空(・・)を見上げていた。


 浮かぶ月を背に、影に包まれた武志が構えている。

 ほんの一瞬前まで地面にいたはずの武志はアスファルトを砕くほど強く踏み込むと空高く跳躍していた。


「翼を持つオレより高く飛ぶのかよっ、本庄っ!!」


「コイツはお前を止めるための一撃だっ!!」


 あのバスの中、手は届かなかった。

 それは自分の力量不足に他ならない。

 守りたいものを守る、それが出来ないという現実を突き付けられた。

 でもいつかは手を届けるのだと、武志は自分を奮い立たせた。

 そして、力量不足な今は、手が届かないのなら、届くものを伸ばせば良いと開き直った。

 頭でも、足でもいい。

 何があっても、届けて、救ってみせる。

 

 武志の跳躍は最頂点に達し、司馬に向かって急降下、飛び蹴りが蝙蝠の片翼を吹っ飛ばした。

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