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LEP「能力がないのよ」

 2ヶ月後再び旅人は訪れた。残りの乾燥蜥蜴3匹を木箱に入れ旅人に手渡す。旅人は中くらいの麻袋から


旅人「この前と同じ場所ダンジョンで見つけたアイテムだ」


と言って木製の宝箱を取り出しバーリアに見せた。


旅人「ほらよ、例の品だ。バーリアこれはSランク以上のアイテムだ。オレ1人で探したものじゃねぇから悪いが報酬金15万ポンドールより2倍の30万ポンドールで買い取って貰えねぇか?」


旅人は偉そうに言っている。バーリアはいつになく冷静でいた。本物なら飛びつく代物なのだが、今回ばかりは違っていた。


バーリア「査定してから考えるわ。アヌビス、お茶をお出しして」


アヌビス「はい。女主人様」


アヌビスは店の奥にあるキッチンへ向かい紅茶の葉とハーブを調合ブレンドした特別ハーブティーをティーカップに注ぎサイドテーブルの上に置く。それと一緒に小皿に4枚サクサクの生地の中にシナモンの風味が利いた乾燥フルーツやくるみがたっぷりの焼き菓子のマームールをそえた。この前の対応と全然違っていたので、旅人はアヌビスに話しかけた。


旅人「お、おい。この前は何もお茶なんて出さなかったのに、今回はえらくビップな扱いじゃねぇか。何か企んでねぇか?」


アヌビスは微笑む。


アヌビス「女主人様の依頼を受けて下さったのですからビップな扱いになるのは当然でございます。少しお時間がかかりますので、我が国伝統のお菓子マームールと紅茶ハーブティー)をご堪能下さい」


アヌビスは一礼し店の外へ出てドアノブに掛けた薄い木の板を【Open(オープン)】から【Close(クローズ)】へひっくり返す。店の裏側の勝手口から店に入りバーリアと内緒話しを始めた。


アヌビス「女主人様どうですか?本物でしょうか?」


バーリアはふんっと鼻を鳴らす。そして——。


バーリア「急ぎで村の腕っぷしの強い男達を集めて欲しい。それから精肉店から縄も貰ってきて」


とアヌビスに頼んだ。アヌビスは裏から路地へ周り心当たりのある村の男達を集め店の裏口と店の入口に数人待機させた。精肉店の店主はアヌビスともに店内に入り世間話をしつつ旅人の様子を伺っている。査定が終わったバーリアは、アヌビスへ目で合図する。


バーリア「旅人さん。申し訳ないけど、これは偽物でしょ。錬金術で作りさも本物のように見せているようだけど……あたしの眼は騙せないわよ!!この詐欺師が!!」


旅人は探検家ではなく詐欺師だった。詐欺師のあの言葉『オレ1人で探したものじゃねぇ』と言った時点でバーリアは協力者がいる事に確信を得たのだ。

詐欺師は舌打ちをして逃げるように店の出入口へ向かう。しかし精肉店の店主がドアを塞ぐ。


精肉店の店主「おいおい、爺さん慌ててどこへ行くんだ?」


詐欺師(旅人)「と、トイレだよ!」


アヌビス「お手洗いなら店内にありますけど、わざわざ外でされるんですか?それではまるで動物じゃないですか」


アヌビスは逃げられないように挑発する。単純な詐欺師はその挑発に乗りアヌビスに殴りかかろうとする。やはりそこは老人だ、動きが遅くあっさり精肉店の店主に縄で手首と体をぐるぐる巻きにされ身動きが取れなくなった。店の入口に待機していた2人の男達に詐欺師(旅人)は町の警察へ送られた。

バーリアは店の裏で待機していた男達に騒ぎは治ったと報告しアヌビスも数名の男達と精肉店の店主にお礼の言葉を述べた。

騒ぎが落ち着いたその日の夜。

店の奥でバーリアはアヌビスが淹れてくれた紅茶を一口飲む。


バーリア「また振り出しねぇ。今度こそは当たりだと思ったんだけどなぁ」


アヌビス「Sランクですから、そう簡単に手に入りませんよ。待っているのがツライならいっそのことご自分で探されてはどうですか?」


バーリア「絶対イヤよ。あたし鑑定の能力スキルはあっても探索の能力ほぼないんだもの。店で待っているのが正解なのよ!」


後日、魚人のクアトから連絡があった。あの詐欺師(旅人)は近隣諸国で争っているナイル川ダム建設の噂を流した張本だった騒ぎを起こして何かしようと企んでいたらしい。その話を聞いたところでバーリアは興味がなさそうにいつも通り青銅の頭蓋骨を撫でていた。


15年後再びバーリアを悩ます旅人が店を訪れることをまだ彼女と獣人アヌビスは知らないのである。


LEP(ラストエピソード)

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