EP4「これと同じ品はないの?」
陽が沈みかけた頃、1人の旅人が骨董店に訪れた。旅人は店内を見回すとしゃがれた声を張り上げ店員を呼んだ。
旅人「ぅおーい!。誰かいねぇか〜〜!!」
アヌビスが店の奥から小走りでカウンターへやって来る。
アヌビス「お待たせして申し訳ございません。何用でしょうか?」
旅人は偉そうにアヌビスを見て、主人を呼べと叫んだ。アヌビスはあまりの声の大きさにびっくりして両耳を抑え、店の奥にいるバーリアを呼ぼうとカウンターを離れようとしたところでバーリアが両耳の穴を両手の人差し指で塞いだままカウンターへ来た。
バーリア「大きい声出さないでよ。近所迷惑だわ!それにうちには見てのとおり獣人がいるの、声の大きさには気をつけて頂戴。難聴になっても責任とってくれるのかしら?」
旅人「そりゃあ、悪かった。オレは生まれつき声がデカくてな(笑)ところで主人のおやっさんは居ねぇのか?」
旅人の言う主人のおやっさんとはバーリアの祖父の事だ。バーリアは祖父が既にこの世にいない事、そして今は孫である自分が店を継いだと説明した。
旅人がまだ20歳前後探検家を始めて2年経ったある日。村の近くに建てられたピラミッドの中を探索する為、アイテムの買取りと食料を求め、今日のように骨董屋を訪れたらしい。
旅人「ところでお前さん……」
バーリアはお前と呼ばれる事に不愉快に思い名乗った。
バーリア「バーリアです。“お前“なんて呼ばないで」
旅人「そりゃ、失礼。……ところでバーリア、オレは魔女の依頼でとある物を探している。この店にあれば……このダンジョンで見つけたアイテムと交換して欲しいんだ」
旅人は腰につけた巾着の中からアイテム【黄金の指の骨】をカウンターの上に置いた。するとバーリアの目がキラリと光る。素早く白い手袋を両手に装着し、早速査定が始まる。バーリアは鼻息を荒くさせ旅人に尋ねた。
バーリア「魔女の依頼は何なの?アヌビスに調べさせるから教えて頂戴!」
やや引き気味の旅人は答えた。
旅人「蜥蜴の乾燥だよ。出来れば頭から尻尾の先まで綺麗に形が残っているものが望ましいんだが、8匹程あるか?」
バーリアはアヌビスを呼びよせ、魔女の依頼を探させた。旅人はバーリアが指の査定に夢中になっている間、店内にある骨董品を見てまわっている。数分後アヌビスは木箱に乾燥蜥蜴を5匹だけ入れそれをカウンターの上に置く。夢中になっているバーリアに声をかけた。
アヌビス「女主人様!ご用意出来ました!あーるーじ様!!」
バーリアはハッと我に返り木箱の中身を確認した。3匹足りない。何故だろうか、この前棚卸しした時は10匹程在庫はあった筈だ。
バーリア「アヌビス。もしかして食べた?」
バーリアは小声で話すと、アヌビスも一緒になって小声で返した。
アヌビス「食べませんよ。……僕の勘違いだったら良いのですが、あの旅人なんだか怪しいんですよね」
アヌビスの能力、獣の感ってヤツだろうか。悪い事を企んでいたり、嘘をついている現代人は体臭がキツイらしい。バーリアも少し怪しいと睨んでいるみたいだ。ここは一つあの旅人を泳がせてみる事にした。バーリアは旅人に声をかける。
バーリア「すみませ〜ん。大変お待たせしてごめんなさい。今、5匹しか在庫がなかったの。後日また来てもらえませんか?残りをお渡しするので……」
旅人は素直に木箱を受け取る。バーリアは自分が役所で掲示している依頼を旅人に頼んでみた。
バーリア「あの、これと同じ品はもうないの?もしあるならあたしの依頼、受けて貰えない?勿論報酬は出すし、前払いとして麦パンと飲み水を渡すわ」
旅人は二つ返事でバーリアの依頼を受けた。
EP4(完)