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Dual World War  作者: 清水香凜
第1章 滅亡の再来
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第1話 日常(前編)

 この世界は『想定外なこと』で溢れている。

 想像だにしていないような出来事が全くの想定外なカタチで生じる。

 

 誰しも1度は経験したことがあるだろう。

 交差点での再会。校舎裏での告白。部活動での衝突。遊園地での離別。。。

 

 ときに思わぬ悦びを。ときに思わぬ悲しみをもたらすが、

 そのどちらが得られるかは総じて出逢うまでわからないのである。


 いまもどこかで『予想外な事態』は繰り広げられている。

 計画どおりに事が進むなんていうケースのほうが珍しいのかもしれない。


 そう、まさにこんなふうに……

 

 5月中旬。長期休暇(ゴールデンウィーク)が終わりを告げてから24時間と経たぬうちに、俺こと水奈(ミズナ) (リョウ)は絶体絶命の危機に瀕していた。


【問14】


(1) 967年、村上天皇の崩御後に紫宸殿(ししんでん)で即位し、藤原実頼を関白とした天皇は誰か。


 ……はい? まずね、俺が知らない単語が3つも登場しているんだが。


 必殺一夜漬けのおかげかこれまでは難なく進んで来れていたのに、始めのほうでこの有様とは。全く。少年のペンは机上を(ツツ)くばかり。眉間にしわを刻めど、耳の穴を指でホジホジすれど、藤原の何某(なにがし)を関白にした天皇が思い浮かばない。 

 

「はーい、試験終了まで残り10分ねぇ」


 つい数分前。苦手な文系科目のために、日本史用語集を何度も確認したのに。反吐(へど)が出る地歴公民がために、教科書を何度も黙読したというのに。時を告げる好好爺(じじい)の声にイラつく自分がいた。


 ああ、このひと。多分、見覚えはある。そう、たしか家系図かなんかに名を連ねていて、それでいてなんかこう結構カッコいい名前で。。。


 ああ、出そうで出ない。俺ね、こう何処かで(つまづ)くとそれが解決しない限り『飛ばして次へ』ってできない人間なんだよな。とくに、『現代文』とか『日本史』とか。こんなふうに「A」だの「B」だの、虫食い状態な文章に各設問が添えられているような問題が大の苦手で。こういうので空欄部分が埋まらない感じが気になり過ぎてドツボにハマるんだよ、性格上。


「答案用紙、名前は書きましたかぁ?」


 名前はすでに。学年や教室(クラス)もバッチリだ。創作物でいう『肝心な名前書き忘れて0点だぁ』みたいなヘマはしない主義なのでね。好好爺(じじい)が『最後くらいは』と徘徊(はいかい)しはじめた。

 

 ペタペタとサンダルの音が近づいてくる。その一方で、【問14】の回答は一向に歩み寄る気配すら感じられない。ここは四の五の言わず諦めるべきか。それとも、まだ考えるべき? いずれにせよ、俺の答案用紙は不出来だが、この際、回答率(クオリティー)は無視しよう。


「はぁい。試験終了まで残り1分ねぇ」


 この問題。そうだ、たしかこの人物。家系図上で【第二皇子】だったな。そうか、その名前が書ければいい。でも、その肝心の名前が出てこない。悔しい。俺の脳内(アーカイブ)には記憶されている。それを上手く引き出せれば……


 ――――――――キーンコーンカーンコーン。


 ……え?


「ああ、鳴りましたねぇ。それじゃあ、試験終了です。皆さん、答案用紙をねぇ後ろから回収しますよぉ」

 

 ……え!?


 試験終了のお知らせとともに、俺の悲惨(ひさん)な答案用紙がドナドナされていく。ある晴れた昼下がりに……なんて、悠長(ゆうちょう)なことをぬかしている場合ではない。アレじゃ、追試は確定かぁ……冷静さが保てなくなりそう。て、あ!


 その刹那、俺の脳内(アーカイブ)から【問14】の答えにあたる人物名が引き出された。

 そうか、この人物の名は……

 

 

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