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回収業務

「予定地点はこのあたりだな。オタ、狙撃の準備は?」

「今スコープの調子を確かめてる。……ハリス、それらしい車は見つかったか?」


 ここにくるまでの道中でハリスにも協力を要請してある。衛星画像を見ながら、リチャードが言っていたトラックを探している最中だ。


『それらしい車を見つけた。ハンドフードのトラックだ。ハンドフードが持ってる食肉加工場を調べたが、どの工場でもトラックの入出予定はないぜ。コンテナのデザインも古いタイプだから間違いない』

「ダン、1発目だけ観測手を頼む。トラックが見えたら教えてくれ」

「わかった」


「ハリス、トラックは見つけてるか?」

『ばっちりだ。今のスピードなら、5分後には近くを通るぞ。他に追跡しているような車は見当たらない』

「噂をすればご登場みたいだぜ。だがさすがに豆粒みたいで狙うなんて出来ねぇだろ」

「ああ、もう少し引き付ける。合図を頼むぞ」


 周りの車を弾き飛ばすかのような猛スピードでトラックが爆走している。特徴的な鶏が描かれたコンテナを積んでおり、『ハンドフード』という店名も刻まれている。有名なコンビニ『バランスタンド』と同様で、ドラマティック・エデンが経営しているフライドチキンのファストフード店だ。


「オタ、そろそろ行けるか?」

「こっちはOKだ。2発目を撃ったらすぐに走って乗り込めよ?」

「ならそっちは俺の合図で撃ってくれ。1発目はいつでも……」


 ダンが土壇場の打ち合わせがてら話している最中、オタのライフルから軽い射撃音が鳴った。リチャードの計らいで、簡単なサプレッサーが付けられていたおかげだ。

 見る見るうちにタイヤの空気が抜けて、トラックの車高がアンバランスに崩れる。ダンはすかさず望遠鏡を車に放り投げると、反対車線へと飛び出しながら3カウントを始めた。


「…3、2、1、GO!!」


 合図と同時に、また小さな射撃音。

 急いでスコープを運転席の方へとむると、2つのタイヤがパンクしたことで慌てている運転手がスコープに映った。ためらいなく引き金を引くと、トラックに乗っていた2人の男の頭がザクロのようにはじけ飛んだ。


「運転手たちは始末した。死体は捨てておけ。タイヤを運ぶ」

『わかった。俺は前を交換する』


 すでに車を奪いに走り出しているダンから通話越しに返事が聞こえる。ダンの愛車の後ろに積み込んだトラックのタイヤを転がして反対車線にぶん投げる。トラックの周りを走る車は怪訝な顔をしてタイヤを避けているが、関わりたくないと言わんばかりに逃げて行った。


 手際よくパンクしたタイヤを交換すると、トラックの荷台を開けて中身を確認する。段ボールで作られた壁の向こう側には大量の武器が保管されていた。


「ダン、例の場所で落ち合うぞ。ハリス、引き続きトラック周囲の監視を頼む」


 スキンヘッドの男は作戦が順調に進んでいることに喜びながら、親指を立てて車へと乗りこんだ。オタもそれに返すと、急いでダンの車へと戻る。


 大量の銃器を乗せたトラックが、再び走り始める。それを見送ってからダンの車を隠すために近くのサービスエリアへと駆け込んだ。適当に端の方に止めておいて、代わりになりそうな車を探す。この手の場所であれば、エンジンをかけたまま、トイレに行く運転手が多い。


「見つけた。ハイ、レディ。悪いが、タクシーとして使いたいんだ。車を降りてくれるかな?」

「ヒィ、う、撃たないで……!!」


 ピストルを構えながら、助手席に乗っていた女を追い出す。無人になった車に乗り込んで奪取するとサービスエリアを抜けて逆方向へと走り出した。一気に加速して勢いをつけて反対車線へと飛んでダンの乗っていたトラックを追いかける。


「ダン、今から追いかける。そっちはどうだ?」

『控えめに言って最悪だな。ギャングと警察のサンドイッチだ』

「警察!? おいおい、どういうことだよ……」

『簡単な話だ。あのクソガキがハメたってことだろ』


 さらに車を加速させて、銃器を積んだトラックを追いかける。微かにサイレンの音と派手な銃声が鳴り響いているのが聞こえ始めた。彼がピンチという状況は間違いないらしい。


「ハリス、聞こえるか? 警察の通報履歴を調べてくれないか!?」

『もう調べたよ。通報した住所は……ドラマティック・エデンが所有するビルがあるな』

『やっぱり裏切りやがったか、クソガキ!!』


『いや、通報したのはリチャードじゃねぇ。別のメンバーだな』

『ドラマティック・エデンが裏切ったのは変わらねぇだろ?』

「横取りの横取りってことだろ。ダンを追いかけてるギャンググループは銃器密売を計画していたグループじゃない。警察も抱き込んで儲けようとしてやがる」


 リチャードが得るはずだった利益を奪い取ることで、彼を蹴落としつつ自分は横取りした銃器を売りさばくことで仕入れ値0で利益を上げる。卑怯卑劣極悪非道なドラマティック・エデンならだれでも考えるようなことである。


 もとはと言えば、リチャードも同じことを企んでいたわけで……。


「このクソギャングは、俺たちと同じようなものってことだ。ただ、向こうは人数も資金力も警察とのパイプも持ってたってわけだが」

『じゃあどうするんだ? このままじゃ逃げ切れないぞ?』

「今追いかけてる連中は俺が始末する!!」

『また次が来るだけだろう? 先に言っておくが、俺のハッキングスキルじゃ警察のネットワークをのぞき見するのが限界で、攪乱なんて芸当は出来ないぞ?』


 トラックに追いついたオタが、運転席の窓からハンドガンを向ける。運転席に乗るダンを撃ち殺そうとするギャングの車を後ろから射撃してエンストさせた。続いて警察のパトランプとタイヤを撃って機能停止させると、鈍くなったパトカーとすれ違いざまに運転席に乗っていた警官を撃ち殺す。


「ダン、トラックに追いついた!! 周りは俺が片付けるから、運転に集中してくれ」

『何か作戦があるんだな!? このまま隠し場所には行けねぇし、少し遠回りするぞ!!」


 2人の車の背後から、さらに何台もの車が追いかけてくる。警察の車両だったり違法改造されたギャングの車だったりとさまざまだ。さらに奪われたトラックを取り返そうと追いかけてきたギャングたちもやってくる。


「リチャード、聞こえるか!! 俺たちに協力しろ!!」

『おやおや、ミスターO様。随分と大変なご様子ですね。協力と言いますが、代金は?」

「取引の相手は良く選べクソガキ。いいか、この銃器類を無事に届けてほしいなら、今すぐ警察に偽の通報をして攪乱しろ。お前ならその伝手ぐらいあるだろう?」

『脅迫ですか? ギャングですらないただの亡霊の分際で。それを届けないのなら、ドラマティック・エデンがあなたたちを追い詰めるでしょうね』


「よく聞けクソガキ。物事には順番があるんだ。俺たちを追いかけて始末するよりも、銃器の納品が出来なくてお前が始末される方が先だ。もう一度言うぞ、()()()()()は選べ!!」

『納品が遅れても困るのはあなたたちだ。私じゃあない』

「お前に銃器調達を依頼したのは【オーアレオ】の連中だろう。俺たちの強盗に提供する銃器にしては、今運んでる量は多すぎる。俺たちの分は()()()()()、違うか?」


『さすが伝説と呼ばれるだけはある。交渉にも長けてるとは……』

「御託はいい。早く偽の通報と捜査の攪乱をしてくれ」

『既にやっていますよ。いくつか伝手を使って、ギャングたちにも偽情報を流してます』

「ダン、聞こえたな? 援護はするから引き続き頼むぞ」


『こちらでダミーのトラックも動かしています。今追いかけてる分を始末したら、なるべく目立たずに隠し場所までお願いします』

『へいへい、了解!! あくまでドライバーなんだから、頼むぜ……』

「いわれなくても!!」


 オタは運転を続けながら、片手でライフルのスコープを付け替える。ハンドルと車の窓にライフルをひっかけるとサイドミラーを見ながら、追いかけてくる車を狙撃する。さすがに直撃させるのは難しいが、進行方向から狙撃されたことで追手のスピードは確実に緩んでいた。


「その速度なら当てられる!!」


 長い直線。

 一瞬だけ窓から身を乗り出して、ハンドガンを構える。


 片手はハンドルを握ったまま。

 先頭を走る車の運転席に狙いを込めて、引き金を引く。割れたフロントガラスに血しぶきのペイントがなされたのを確認すると、再び運転席に座りなおした。


 運転手が居なくなった車がスリップし、回転しながら道路をふさぐ。トラックを追いかけるためにアクセル全開にしていた後続車は止まりきれずに事故を起こし始める。


「ダン、かなり数は減った。もう少しスローペースでも平気だぞ」

『助かった。そろそろ隠し場所に向かう』


 早くも偽通報とダミートラックの効果があったのか、先ほどまでうるさかったサイレンの音とギャングの罵声ははるか遠くで聞こえる程度になっていた。リチャードが指定した隠し倉庫まで向かうと、すでに待機していたドラマティック・エデンのメンバーがコンテナ内の荷物を降ろし始めた。


 いくつかのバンに小分けして詰め込むと、またさらにどこかへと走り去っていった。おそらく、リチャードが所有する別な隠し倉庫に在庫として保管しておくためだろう。

 そのリチャードに連絡しようとスマホを取り出すと、倉庫の陰から彼がやってきた。


「ミスターO。いい仕事ぶりでした。伝説の名は伊達じゃありませんね」

「リチャードの協力もあったからだ。それにダンの運転が無ければ、逃げ切れなかった。俺1人のおかげじゃない」

「意外と謙虚ですね……。では、約束通り、武器と車を用意しておきますね。あとは宝石をお持ちいただければ、上手くさばいておきます。必要なものがあれば、いつでもお申し付けください」

「近々、もう少し詳しい計画を用意して尋ねるよ。追加で必要になるものがあれば、その時に」


 2人が固く握手を交わす。

 リチャードは去り際に深々と礼をして、銃器を積んだバンへと乗り込んだ。ごてごてとした金のブレスレットを光らせながら倉庫を後にどこかへ走り去っていく。


「こんなきたねぇ下水道近くの倉庫にまで、あんなブランド物をつけてくる必要があるのかね」

「アレは彼なりの鎧なんだろ。若いと、どっかの誰かさんに舐められちまうからな」

「……ケッ。ギャングや汚職警官も嫌いだが、ドラマティック・エデンの連中も信用できなくて嫌いだぜ」

「奇遇だな。アイツらが信用できないってのは同感だ。だから、互いを利用するみたいな今の距離感が正しいんだろうぜ」


「ギャングが正しさを説くのかよ」

「今は()()だよ」


 スキンヘッドの男は肩を竦めながら、オタの乗ってきた車に乗り込む。トラックは目立ちすぎるのでここに捨てていくつもりらしい。サービスエリアに置き去りにしたダンの愛車を迎えに行くため、2人も倉庫から消えていった。

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