表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/182

第九十一話 獅子と猫の家

 地下都市観光よりも、ある意味濃い体験(借りパク宇宙人との遭遇)をしたオレっちは、キックボードが気に入ったエイベルと共に、それぞれチップ(100ベルビー)込みで500ベルビーを、ラモンとミーナに支払い、洞窟住居の出口で別れた。


 「また、来てね!案内しきれてない洞窟施設は、まだまだいっぱいあるから!」


 ラモンの言葉に納得する。

 そりゃ、地下都市の壁周り全域だから広いわな。しかも、上にも下にも通路があるから、部屋数が、ここはアリの巣かっ!?って、ぐらいに多かったし。

 さすがに個人宅は個別の鍵の付いた扉だったけど、結局、モグランたちの住処は共同スペースが多いんだよな。大浴場もあったし、広い食堂もあった。食堂の方は、観光客にも開放されてたけど。


 「キュ?セーラとメロスは、観光しないの?」


 きっちり待ち合わせた時間で再会したオレっちたちだが、セーラとメロスは、このまま魔馬車に戻って、先に進むと言う。


 「ん〜⋯⋯もうちょっと寝たいし、それなら魔馬車の中で寝た方がいいと思うの」

 「オレもだ。どーせまた壁ばかりの道だしな。このまま眠って、目的地に着いた方がいい」


 「ふ〜ん⋯⋯まあ、帰りもここを通るしな。じゃあ、今度ってことで!」

 次に立ち寄った時、メロスとセーラを連れて、またラモンたちに案内を頼めばいいか。それに、メロスはともかく、セーラは、仮眠所でよく眠れなかったのかもしれない。旅慣れてないと、無意識に緊張して、眠りが浅くなるからな。






 ◇◇◇◇◇ 


 魔馬車で再び、神トンネルを移動していく。次は、終着地──ユーロシアンだ。大きな街ではあるが、ポラリス・スタージャーの王都からは、かなり離れている。

 そもそも王都は、西方だもんね。ユーロシアンは、東方に近い街だから、余計に距離がある。


 ⋯⋯。なんだか眠い。地上時間だと、もう深夜だもんな。よし、寝よう。グー。





 「タロス〜、タロス〜!着いたよ〜、起きて〜!」

 「⋯⋯あれ、もう着いたの⋯?」

 おかしいな〜?さっき目を瞑ったばかりだったのに⋯⋯


 目を擦って、う〜んと背伸びした後、座席の下に置いてあったリュックを背負う。

 終着地だから、焦る必要はない。


 「ほら、サッサと降りるぞ!」

 「う、うん⋯⋯」

 焦る必要がないというのに、せっかちな猫が急かすので、ボーっとしたまま、人の流れに乗って下車した。


 「よし、昇降機に乗るぞ!」

 素早く列に並ぶメロスの後ろに、セーラ、エイベル、オレっちが続く。

 

 あふ⋯⋯今、何時だっけ?

 左手首の白い毛に埋もれている腕時計を見てみる。

 朝の──4時5分か。地上じゃ、まだ太陽が昇ってないかも。あ、でも、上に着く頃には出てるかな?


 タッタッタ。

 昇降機から改札口のある階段へと向う。さすがにこの時間じゃ、地下に降りる客は少ない。地上へと上がる客はそこそこいるが。



 「太陽の光だわ──!」

 すでに太陽が顔を出していた。セーラが嬉しそうに、空を見つめる。

 「やっぱ、地下の光と太陽の光じゃ、全然違うな」

 こうして視界いっぱいに広がる白々とした光を見ると、清々しい気持ちになる。

 

 「ん〜⋯⋯空気も〜違うよ〜」

 「そりゃあ、風があるから。あと、土と草の匂いもするな。ラモグラン道の内部は雑草でさえ生えてないから、こんな微かな匂いさえしなかったもんな〜」


 やっぱり、ラモグラン神の聖遺物は、トンネル内のメンテンナンスも兼ねてるんだな。その弊害として、木や花も育たないけど。


 「ここからは、魔牛車移動になる。オレの家は、ユーロシアンから三時間ほどかかる町の⋯外れにあるからな」

 「三時間も魔牛車に乗るの!?」

 「途中の町で一度乗り換えるが、どっちにしても魔牛車だな」

 「⋯⋯今更だけど、ビスケス・モビルケへの留学って、マルガナじゃなくても良かったんじゃない?アモリンにだって学校はあったのに」

 セーラの指摘通り、鳥浮船で空を移動する必要のある遠くのマルガナより、神トンネルの小獣国側の終着地であるアモリンの学校の方が、距離的には近い。ただ、学校の規模は、全く違うが。


 「マルガナの第一中央小獣学校は、オレの父方の曾祖父(ひいじい)さんが卒業した学校なんだ。曾祖父さんも、小獣人だったから⋯⋯だから父さんが、ビスケス・モビルケに行くならそこに行けって」

 「なるほど。まあ、第一中央は、留学生も多いしなー」


 だから、学生寮もデカい。ウルドラシルの間に建つ木造建築物だけど、構造的にはマンションみたいな造りだしな。


 



 早朝から多くの人が行き交うユーロシアンの街は、魔牛車の数も多かった。

 メロスの案内で、中距離用の魔牛車に乗り込む。途中、大きな街に停車し、次の町でまた別の魔牛車へと乗り換える。

 ユーロシアンを出てから二時間──お腹が空いたので、停留所近くの売店でおにぎりやパンを買って、魔牛車の座席で食した。

 おにぎりもパンも、小獣国のサイズより二倍ほどデカい。満腹。


 陽が上へと昇るにつれ、気温がグングンと上がっていく。それでも冷却魔法具のスイッチは、まだオンにしていない。セフィドラもまた、ウルドラシルと同じく巨大な木であり、その木陰の道は、非常に涼しかったからだ。

 それに、ここはウルドラム大陸の北。夏とはいえ、マルガナとは平均気温そのものが違う。


 「よし、ここから個人魔牛車で移動するぞ!」

 「えっ⋯⋯この町じゃないの!?」


 魔牛車を降りた途端、ようやく着いた感があっただけに、セーラが驚く。

 そーいえば、魔牛車に乗る前に、町の外れって言ってたっけ。


 「ここがオレの家に一番近い町なんだが、歩くと二時間もかかるんだ。魔牛車なら、三十分ぐらいで着く」

 「そ〜なんだ〜」

 「セフィドラの大森林の中なんだな」


 この町も、周囲をセフィドラの木に囲まれている。メロスの家は、大森林のどこかにあるのか。




 それから約三十分──個人魔牛車の窓から見える外には、車道沿いの家や建物が何軒かあり、メロスの家は思ったほど孤立した感じではなさそうだ。


 「そろそろ、家が見えてくるぞ!」


 メロスが言うと同時に、ズドドーンと、近くで大きな激しい音した。音だけでなく、地面が大きく揺れる。魔牛車は魔馬車と違って車輪付きなので、当然、大きく跳ね上がった。


 「じ、地震!?」

 「いや。多分、父さんか姉さんが、木を切り倒したんだ」

 「き、木ってセフィドラの木よね!?あの大きな木を、一人で切ってるの!?」

 セーラの声がひっくり返る。

 

 オレっちも驚いた。ウルドラシルと同じく、この幹周りが十メートル以上もある巨木(セフィドラ)を!?しかも、父さんか姉さんって言った!?


 「風魔法のレベルが高いんだ。父さんは斧だけど、姉さんの場合、素手で切り倒してる。⋯⋯姉さんはダンジョンの冒険者でもあるから、訓練がてらにな」

 「冒険者なんだ!?」

 そういえば⋯⋯前に、お姉さんが大武闘会に参加したこともあるって、手紙に書いてた!


 「ねぇねぇ〜あの家って〜、もしかして〜メロスの家〜?」


 エイベルの声にハッとして大きな木々の間を見ると、それらしき木の家──屋敷?が見えてきた。デカい。しかも、母屋だけじゃなく幾つかの建物も見える。

 ⋯⋯ここに家族だけで住んでるの!?


 獅子の⋯(プラス)猫の家って──デカっ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ