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第九十話 この世界って、SFだっけ?

 「⋯⋯」


 気のせいじゃない。生きてる!でも、でもだよ!この世界は魔法があるファンタジー世界だけど、小人はいないはずだよ!?いるって聞いてないよ!?

 よし、確認してみよう!


 す、ステータス、オープン!!



 名前 テル・デル・リチル(男) 


 HP 200/300


 身長 15センチ  体重 170グラム


 超古代文明時代にこの星に降り立った、宇宙人──リチル星人の末裔の一人。

 この星で進化した生物ではないので、魔力を持たない。かつて、母星の地核に異変が起こり、彼らの先祖たちは、大型の宇宙船で移住できる星へと旅立った。


 永い時の果てに、その中の一団が、この星へと辿り着く。当時、古き神々とは別の神族がこの星を支配していたため、コッソリ、地下へと潜った。

 その後、オーバーテクノロジーを駆使して、地下深くに都市を造る。その頃から地上へは物資の調達で頻繁に出ていた。

 やがて、超古代の神々が去り、人間が支配する世界となると、かなり大胆に人から物資を借りるようになった。(借りパク)


 さらにその後の古代文明崩壊後の古き神々の時代でも魔素の影響は受けず、地下で密かに繁栄していた。(しかし、暗黒時代、地上で物資を調達できなかったので、数年間、物資不足に苦しんだ)


 古き神々のなかには彼らを認識している者もいたが、特に問題視しなかった。ラモグラン神も、当然知っていたし、神トンネル作成中から彼らと交流もしていた。

 そして、この世界を去る直前に、己の神器を彼らに渡す。


 実のところ、この神器は、リチルたちのオーバーテクノロジーの一つ、マグマエネルギー変換システムを取り入れた合作物で、そうした経緯もあって、リチルたちに託されたのである。

 当然、モグランたちの探している聖遺物は、彼らの聖地──すなわち、旧移民船の地にあり、モグランたちには申し訳ないが、端末はともかく、本体を発見することは不可能だろう。


 ところで⋯⋯テル・デルは、チーズの下敷きになって気絶しているだけなので、これ以上体温が低下する前に、起こしてあげた方がいい。





 ああ、うん⋯⋯。


 水魔法で掌に水をためる。そして、宇宙人⋯もとい、小人──テル・デルさんの顔にかけてみた。


 「✕✕✕!!」


 飛び起きた。そして、オレっちの顔を凝視する。少し丸顔で黒い大きな瞳が印象的な青年?だ。

 しばし、互いに見つめ合ったが、テル・デルさんの方が先に目を逸らし、食糧庫の棚の奥へと走っ⋯逃げていった。


 宇宙人──そうか、アレが宇宙人。前世でもお目にかかったことのない、宇宙人。

 神々と宇宙人か⋯⋯うん、前世のオレっちなら、どっちの方がショックだったろう?


 混乱したまま、外の庭へと出た。エイベルがホバリングしてるなぁ⋯⋯と思いながら、フラフラと白い木製のベンチへと座った。


 アカン。キャパオーバーや。バタン。




 「花のお兄ちゃん、大丈夫?」


 モグラン妹?が、ベンチへと倒れたオレっちを、心配そうに見つめていた。


 「タロス〜?どうしたの〜?」

 「いや⋯⋯ちょっとショックなことがあって⋯⋯」


 小人→宇宙人→聖遺物の正体→モグランたちの悲願は絶望的⋯⋯などとは言えん。

 君たちの神様は聖遺物を自分の加護種ではなく、宇宙人に託したんだよ──などとは!!

 ⋯⋯とか言っても、宇宙人って概念自体ないし、ワケわからんだろ、きっと。

 あと、古代文明の前の超古代文明時代に、別の神々が降臨してたのは驚いた。

 前世でも、レムリアやムー、アトランティスなんかの古代文明説があったから、文明が何回目だとかはもういいとして、その都度、いろんな神様の関与があったとしたら──



 「──ねえねえ、その頭の花って、ビスケス・モビルケではいっぱい咲いてる花なの?」

 モグラっ娘の明るい紫の瞳が、オレっちの花冠を映す。


 「タロスの花は〜、神々の世界の〜花だから〜、小獣国にも〜無いよ〜?」

 着地したエイベルが、コッチに向かって歩いてきた。

 「そうなんだ。でも、キレイだね。あたしも、時々、地上の花を摘んで飾ってるんだ」

 「花の栽培は⋯⋯そうか、ここじゃできないんだ」


 太陽光じゃないから、花だけじゃなく野菜も育たない──アレ?じゃあ──


 「ここの木と花は、なんで普通に育ってんの?」

 オレっちは、中庭を見渡す。

 ちょっと幹は細めだが木々は青々としてるし、花壇には白い花も咲いている。


 「魔法改良されたヤツだからだよ。だから、どれも同じ種類の木と花しかないんだ。しかも、二十年ぐらいで枯れちゃうし」

 モグラっ子が、木の枝を見上げながら説明してくれた。

 「大きなホテルの花とかは、地上のものを植え替えたりしてるんだけど⋯⋯家だと上から摘んでくるしかないの」

 モグラっ娘が、ションボリしながら言った。


 「そっか。面倒だな。⋯⋯アレ?上から摘むって──」

 「あたしたち専用の昇降機で、この真上にある地上に出るの。日光浴をしに行く場所だから、周りは岩場しかないんだけど⋯⋯時々、岩の間に花が咲いてて、それを摘むのよ。あとは⋯⋯お祖母ちゃんたちが時々、外の花を買ってくれるぐらいかな」

 「お祖母ちゃん⋯⋯」

 ああ、あのチケット売り場にいたモグランか。


 「お父さんと〜お母さんは〜、他所へ仕事〜?」

 エイベルの言葉に、二人は頷いた。


 「うん、そうだよ。ラモンの叔父さんと叔母さんも」

 「ラモンって?」

 「ボクだよ。ボクたちは従兄妹なんだ」

 ふ〜ん。兄妹じゃなくて従兄妹だったのか。


 「こいつは、ミーナ。ボクには兄ちゃんもいるけど、地上の遠い場所の学校の寮に入ったから、時々しか会えないんだ」

 「そうか〜、お兄さん〜寮に入ってるんだ〜。寂しいね〜」

 「仕方ないよ。ここの神殿じゃ、第2レベルまでの勉強しかできないから。近くの町の学校も規模が小さいから、第5までだし」

 「あのさ、ちなみに学校って、何時からなの?」

 オレっちは、謎に思っていたことを訊いた。


 「神官様や神殿で奉仕活動してる爺ちゃんや婆ちゃんたちが交代で教えてくれてるから、何時でもいいんだ。本当は、上の時間に合わせた方がいいんだけど⋯⋯」


 やっぱ24時間なんだ。

 しかも先生が、獣神官様と御老体たちとは。まあ、第1、2は小学校の低学年レベルだから、それでもいいのか。


 「ねぇ、それよりボクたちの専用通路で、洞窟内を案内してあげるよ!コッチにきて!」


 ラモンが行った先には、色とりどりのキックボードがズラッと並んでいた。

 「ボクたちは、これで地下通路を移動するんだ。速いし、楽しいよ!」


 オレっちは、赤色のキックボードを選んだ。エイベルは、グリーン、ラモンはブルー、そして、ミーナはイエローのキックボードをセレクト。

 ラモンを先頭に、人が4人ほど横に並べる広さの通路を、キックボードで駆け抜ける。楽しい!


 これで周りに風景さえあれば、もっと楽しかったんだが。

 それでも、ところどころにある扉の先には、共同の大きな地下公園や集会所、娯楽施設や銭湯まであった。

 他の観光客とは違うルートでの観光は、急かされることもなく待たされることもなく、マイペースで行動できたので楽しかった。





 う〜む。あの小人や神々の降臨数にはショックを受けたが、だからって人に言える話でもないしな。もうスルーでいいや。


 ただ──小人たちに関しては、一つだけ、ものすご〜く気になることがある。

 当然、彼らはビスケス・モビルケ⋯マルガナの地下にもいるだろう。となると、オレっちもそのうち、借りパクの被害に遭うかもしれない。


 食べ物とかならいいけど、いざって時に、『ここに置いてあったハズなのに〜!』って、困る物は、勘弁してね!

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