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第八十一話 予定のない夏休み?

 あれから、半月以上が経った。

 アレイムを救出してから二日後には、散財クズ父と暴力デブ女は、獣警団に、虐待及び違法取引容疑で速攻逮捕された。

 クズ父は、アレイムのキノコを最初の一本以外、全て闇に流していたらしい。その関連で闇組織に目をつけられ、カジノでボッタクられていたとか。

 でも、アレイムはもう動じなかった。彼の中では、すでに見切りをつけた親子関係なのかもしれない。


 新聞によると、あの二人が受ける罰は、闇取引き及び虐待での犯罪奴隷落ちと、アレイムに対する慰謝料の支払いだった。

 つまり、数年で犯罪奴隷を終えたとしても、アレイムに慰謝料を払い終えるまでは、あのゲスデブ夫婦は、借金奴隷として働かなければならない。ザマァ!

 その慰謝料の一部として、あの新築のログハウスは、すでにアレイムの所有となっている。


 「あの家は売るよ。そして、売却したお金の半分は、神殿に寄付するんだ。残りは──いざという時のために貯めておく」


 アレイムは賢く、逞しい。これが本来の彼の姿なのだろう。

 ちなみに、アレイムへの慰謝料は、億単位のベルビーらしいので、奴らが自由になれるのは数十年⋯いや、百年後ぐらいかもしれない。ザマァ✕2






 ◇◇◇◇◇


 「コレを着けると、夏って感じだよな!」

 毎年おなじみの冷却魔法具を、カチカチッと手首と足首にはめる。

 うむ、涼しい。極楽、極楽。


 と同時に、夏が近いとすることが多くなる。

 基礎学科のテストにお屋敷の夏パーティー、そして、秋の大祭に向けての特訓──つまり、またミンフェア先輩の指導が始まるのだ。まあ、毎年踊ってんのに、たった一年でビミョーな動きになってるオレっちも悪いんだが。


 今年の夏パーティーは、手品。マジックショー。

 前世と大きく異なるのは、あり得ない現象を見せるためのショーじゃなくて、魔法ありスキルありの、なんでもいいから派手に盛り上げてくれよ!的な──つまり、一発芸みたいなもん。


 オレっちは困った。激しく困った。例の如くエイベルとペアを組んでも、ネタが浮かばないのだ。


 「う〜ん、う〜ん⋯どうすれば⋯⋯」

 ウロウロと自室をうろつきながら、考える。

 「痛っ!」

 部屋に置いてあるポールハンガーの脚に、足先がぶつかった。

 ちょこっとだけ痛かったが、すぐに治まる。


 今更だが、今世、オレっちは、ほとんど怪我や病気をしたことがない。

 多少のすっ転びや物に当たったりしてもほぼ無傷だし、熱が出てもすぐに平熱に戻る。スキルの自己治療のおかげで、三分もしないうちに傷が完治し、体内のウイルスも五分ぐらいで死滅するからだ。

 即死でもしない限りは、死なないって感じなのかな?今のところ大怪我や瀕死になったことがないから、分からないけど。


 カシャン!

 ポールハンガーから、何がが落ちた。


 「なんだ⋯⋯光ベルトか」

 春の大祭の前座パレードで使用したフラフープ代わりの光ベルトをポールハンガーに吊っていたのだが、どうやらそれがぶつかった拍子に、床に落ちたらしい。


 ん?フラフープ?

 そーいえば、ダイエット用のフラフープはあっても、ビスケス・モビルケには新体操とかは無かったよな。⋯⋯ふむ。

 風魔法でフラフープを操り、ダンスをしながら輪をくぐったり、放り投げてキャッチしたり──それを二人でやれば、結構、派手にいけるんじゃねぇ?

 いや、それより新体操といえば、アレだ、アレ!


 そう、リボン!!


 次の日、オレっちは、アランに派手に目立つグラデーション入りの布を発注した。

 全財産+小遣い前借りで。






 ◇◇◇◇◇


 夏休み前の基礎学科テストも無事に終わり、勉強疲れで半分死んでいたアランが、フラフラしながら、鞄から布を取り出した。


 「どうだい?魔素鉱石の粉末を混ぜ込んだ染料を使ってみたんだ。キラキラして綺麗だろう?風魔法の持続効果も長いし」


 ほう。前世のグリッターみたいな布だな。色も濃い紅から薄いピンクまでのキレイなグラデーションで、照明が当たれば、もっとキラキラと輝くだろう。しかも、風魔法のコントロールがしやすい!


 「スゴいよ、アラン!最高の布だ!!」

 「かなり予算オーバーしたけど、そこはマケといてあげるよ」

 「ありがとう!将来、倍返しにして返すからな!」

 「⋯⋯キミは面白いね」


 何が⋯?オレっちは不思議に思いながら、その布をエイベルに渡した。

 「エイベル、この布で、例のものを作ってくれ!」

 「うん〜、任せて〜!」

 すでにエイベルには、新体操用のリボンの絵を描いて説明している。我が癒しの友は、必ずや完成させてくれるだろう。

 ちなみに、布を裁断する作業を手伝おうとしたら、初っ端から失敗し、エイベルにやんわりと断られた。

 おかしいな⋯⋯真っ直ぐ切ったつもりだったのに。布って紙よりも切るのが難しい。

 




 ◇◇◇◇◇


 「今日から秋の大祭の練習に入るけど──夏休み明けに、贅肉つけて戻ってくるんじゃないわよ!」


 レッスン開始前からミンフェア先輩に釘を刺される。去年の激太りが思い出され、オレっちは素直に頷いた。


 「ハイ⋯気をつけマス」

 「分かればいいのよ。じゃあ、最初からいくわよ!はい、背筋を伸ばして──」


 気をつけるも何も今年の夏は旅行の予定が無いから、珍しい食べ物も食べられない。よって、太る要素が無い。


 とか、思っていたら──


 「お前ら、ポラリス・スタージャーに来ないか?ウチに招待してやるよ!」


 え、メロンん()!?

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