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第七十七話 タロスとワケアリ編入生

 春の大祭が終わり、ミンフェア先輩の初めての恋が終わった頃。(やっぱフラれたらしい)少し暑くなってきたかな〜?でも、冷却魔法具を装着するにはまだ早いかな〜って季節の日、新しい編入生が入ってきた。



 「編入生を紹介するね──アレイム君だ」

 「ア、アレイム・エリンです⋯よ、よろしくお願いします⋯⋯」


 第2レベルからの編入生だという彼には、見覚えがあった。

 確か秋の大祭の順が八番目ぐらいで、オレっちたちほどではないが、かなり総数が激減している加護種のはずだ。

 淡いオレンジ色の体毛に、大きな耳のネズミ似の外見──そして、背中から尻尾にかけてのエリンギに似た白とピンクのキノコ──あ、そうそう、アレだ!背中のキノコを粉末にして食べると腹持ちが異常にいいっていう、ネズエリン神の加護種!


 一昨年の秋の大祭で前任者が引退(参加年齢超え)したから、去年からの舞手で、尻尾を怪我したとかで包帯をグルグル巻いてたんだよな。それをミンフェア先輩が見栄えが悪いってんで、オレンジ毛の彼に似合うように、水色のリボンを巻いて包帯を隠したんだっけ。


 ⋯⋯あれから半年以上経つのに、まだ包帯巻いてるな。それに、範囲が広くなっているような⋯?


 めっちゃ気になる!


 こーいう時は、ステータス、オープン!⋯⋯ニーブ君(さん?)には注意されたけど、気になるもん!



 名前 アレイム  加護種名 エリン


 HP 300/500  MP 300/600


 土LV3  水LV2


 スキル 魔素栄養変換 家事(LV6) 麻痺毒噴霧


 古き神々の一柱、ネズエリンの加護種。

 背に生えているキノコは魔素栄養変換(魔素を体内に取り込み、凝縮した栄養素に換える)による効能を持ち、乾燥させて粉末して飲むと、約一年は食事をしなくても栄養状態の良い体になる。そのため、彼らのキノコは高額で取り引きされている。特に近年はエリンの数が少ない事もあって、少量の粉末でも貴重。


 三年前に母親が事故で死亡。その後、父親がすぐに再婚。実は後妻は不倫相手。その連れ子も異母弟。昨年は異母妹も生まれ、後妻は先妻の子であるアレイムを邪魔だと思っている。そのくせ、彼の神キノコを金づるにして、贅沢三昧の暮らしをしている。

 父親はとある商会で働いていたが、後妻に感化されたのか、アレイムの神キノコを半ば強制的に採らせ、それを売って豪遊生活をすることに慣れてしまい、現在は無職。

 特にこの一年、アレイムはほとんど食事をとれない生活を強いられている。だが、加護スキルの魔素栄養変換と獣学校の無料メニューで、なんとか最低限の健康状態を保っている状態。

 しかし、家事全般を押しつけられ、暴力も受けている悪環境からの過度のストレスで負荷がかかり、徐々にHPが減ってきている。ハッキリ言ってヤバい。

 その上、虐待が発覚することを恐れた後妻が、獣学校を休学させようと目論んでいる。本当にヤバい。




 ⋯⋯。⋯⋯。はあ!?はああ!??


 「タロス〜どうしたの〜?」


 エイベルの声でハッとすると、いつの間にか椅子から立ち上がっていた。急いで、再び着席する。


 ⋯⋯アカン。オレっちの怒りが収まらない。許せん、無職カスオヤジにクズ後妻!!


 前世でも子供の虐待やその果ての死亡事件は、多々あった。なかにはそうした通報があったのにもかかわらず、放置されて亡くなった子供たちもいた。

 対応職員数の少なさや親子関係の重視──死亡後、そうした言い訳をする大人たちは、それを根本から変えようとはしなかった。

 特に、親子関係云々。虐待している時点でその情は皆無、意味がない。一番大切なのは、子供たちの命だ。

 親権だとかはすぐさま取り上げ、刑務所に行く代わりに強制労働させて金を巻き上げる(子供への慰謝料)懲罰を喰らわせるべきだと、何度、思ったことか。


 事情を知ってしまった今、オレっちも行動に出るべきだ。まずは、彼の観察を──


 しまった。一番前に座ってるから、後ろの席に着いた彼をガン見することができない。メロスの時と同じく、時々チラ見で見よう。



 まだ顔色はそんなに悪くないけど、よく見ると毛がところどころ薄い箇所がある。服も靴も普通だけど、これは多分、後妻の偽装工作だな。狡猾な!!

 でも、獣学校の先生たちは──モブラン先生も気づいてないのかな?いや、でも、オレっちだってステータス画面視るまでは、分かんなかったし!


 そういえば今回のステータスさん⋯⋯ヤバいヤバいの連発だったな。それはつまり、オレっちになんとかしろとのことですな?ハイっ、お任せを!!

 とりあえず接近して、親しくならねば。





 「アレイム君!オレは、タロス・カリス!秋の大祭の一番目だよ!!」

 「う、うん⋯知ってる⋯⋯」

 「そう、オレたちは少数派の仲間だ!ゆえに、仲良くしよう!!」

 「⋯う、うん⋯?」





 ◇◇◇◇◇


 ボビン&エイベルサイド


 「タロス、なんかヘンじゃね?」

 「そう〜?」

 「まあ、もともとヘンだから、分かりづらいかもしれないけどな」

 「あのね〜タロスのテンションが高い時は〜何か意味があるんだよ〜」

 「⋯⋯そうなのか?」

 「うん〜!」


 癒しの友の観察力は、神レベル。






 ☆ 補足 ☆


 アレイムの家事スキルですが、これは通常、スキルとしては表記されません。当たり前過ぎる生活スキルは、スルー対象なのです。

 今回は、ステータス画面さんの暴走です。力が入り過ぎたんですね。

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