第六十四話 パクリの連鎖
「オレは、魔導器具学科に入ったんだ」
「マドウキグガッカ──アレ?格闘技学科じゃないんだ?」
てっきり、そっち系だとばかり思ってたんだけど。あ、そーいえばメロスのステータスに、魔導回路作りがあったよーな⋯?
「⋯⋯そもそもビスケス・モビルケの学校には無いだろ、格闘技学科は」
「キュ!無いの!?」
「ポラリス・スタージャーにはあるが、大獣人でも力自慢の連中しか選択しねーよ」
「ふ~ん⋯⋯そうなんだ」
「お前は、ダンス学科だったよな」
「うん」
「タロスは、秋の大祭の舞のためにダンス学科に入ったんだよね。エイベルは──」
フェンリーが、エイベルを見た。
「僕は〜服飾学科だよ〜!」
「フェンリーの学科は?」
エイベルが応えた後、オレっちもフェンリーに訊いてみた。
「ボビンと同じで、書籍学科なんだ」
書籍学科。図書館の司書さん?
「ボビンは魔法書の研究で、僕は古き神々の神話を研究してるんだ。神獣学系の専門学科だよ」
ホエ〜⋯学科って、名称から想像してたのと違ったりするんだ〜。一応、学科一覧表は見たけど、これは実際に見学してみないと、ホントの内容は分からないかも。
「⋯⋯僕は⋯⋯」
「キュ!?」
あ~、ビックリした〜!ヒンガーいたんだ!存在感、薄っ!
「ヒ、ヒンガーはどの学科にしたんだ?」
「⋯⋯魔素学⋯⋯」
ヒンガーは大きなアヒル口で、ニンマリと笑った。
⋯⋯笑うような内容の学科なのか⋯!?
◇◇◇◇◇
「タロス、今年の秋の大祭は、なかなかだったわヨ」
ダンス学科教室に入った途端、レキュー先生からお褒めの言葉を頂いた。
「いや〜それほどでも?レキュー先生のご指導のおかげです!」
この際、ミンフェア先輩はスルーしておこう。
「フフ。普通に踊れていただけでも十分ヨ」
「普通⋯⋯」
なんか少し前にもそう言われたような⋯⋯
「それでネ──」
「ヤッチュー!」
「ハッチュー!」
「イエ〜チュー!」
こ、この声は──げっ!金、銀、銅のスナネズミ三兄弟!!なぜ、ここに!?
「レ、レキュー先生、あの三人は!?」
「あら、知ってるのタロス?あのコたちは第2レベルのコたちで、専門学科は必須じゃないんだケド、ダンスが好きみたいでネ。三人組での動きが面白いから、入れてあげたのヨ」
ガーン!!
夏のプールでの奴らは、オレっちの浮き輪を横取りしたり(単に早いもの勝ち)水をぶっかけたり(人魚のおねーさんにザマァされてたけど)した、品の無い連中ですよ!?絶対、なんかしでかす!
「それでネ、タロス。さっきの話だけド、一度、君自身で考えたオリジナルダンスを見せて欲しいノ」
「オリジナル⋯ダンス?」
「ダンスは、運動神経やリズムセンスも必要だけド、新しいダンスの形を模索する才能も欲しいのよネ」
なるほど。レキュー先生の言う通り、皆が同じ高レベルのダンス技術になると、あとは個性での勝負になるもんね。そうなると、他の誰かがまだ思いついていない構成で差を広げる必要が──ん?
そうだ!あった!前世のダンスが!!
この世界でもあるダンス以外だと──ポールダンスやフラダンス、あとはブレイキン?えーと、盆踊りも一応、ダンスなのかな??
ポールダンスは⋯⋯キレイなおねーさんが長い脚で魅せるやつだから、オレっちには無理ですな。
フラダンスは──単独でやると、腰フリフリの奇妙なダンスで終わりそう。そうなると、残るはブレイキン──
⋯⋯どんなんやったっけ?
テレビやスマホの動画だと、回転したり、飛び跳ねたり──んん!?そうだっ、尻尾!このクルンとモサッとした尻尾を使って──あ、なんかできそう!あとは音楽だけど──
「レキュー先生!えーと、こう⋯ズンチャズンチャと、ノリのいい魔楽音ってありましたっけ!?」
「あるわヨ。なんならリズムのみのやつモ」
「ではそれで、お願いします!」
ズンチャズンチャ、チャチャチャ!ズンズン、チャ!
オレっちは記憶にあるブレイキン──ぽい動きで片腕を床につけ、足で勢いをつけると、横に大きく回転した。そして、尻尾を下敷きに、高速周回転!──よし、上手くいった!
さらに、起き上がった瞬間に、腕と脚を大きく振りかぶって、ジャ~ンプ!!
その後は頭で考えず、無意識のまま身体を動かした。
「やるじゃなイ、タロス!ぶっちぎりの独創性ヨ!」
「──ハッ!?」
レキュー先生の大声で意識がハッキリすると、身体の動きが盆踊りになっていることに気づいた。このポーズ⋯⋯阿波踊り?
えっ⋯いつから、ブレイキン→阿波踊りになってたの!?
パチパチパチと、レキュー先生だけでなく、周囲で練習していた他の生徒たちからも、拍手をもらう。
⋯⋯阿波踊りは、ラスト直前だったのだろうか?ウ~ン、思い出せない。
とりあえず、レキュー先生には褒められたし、他の生徒たちも、オレっちのダンスの斬新さにビックリしていた。
斬新以前に、前世の丸パクリダンスなんだが⋯⋯まあ、バレなきゃいいワケで。そう、誰も知らないなら、それはつまり、オリジナル。
オレっちは開き直った。
◇◇◇◇◇
次の日、オレっちは天罰を受けた。
ズンチャズンチャ、チャチャチャ!
「ヤッチュー!」
「ハッチュー!」
「イエ〜チュー!」
金、銀、銅のスナネズミ三兄弟による、三位一体のブレイキンぽい踊り&組み体操──斬新かつ、アクロバットな派手な動き。名付けるなら、サーカスブレイキン?ブレイキンサーカス?うん、どっちにしても、負けた。
⋯⋯つーか、三人掛かりのパクリって、ヒドくねぇ!?最後の阿波踊りまで、丸ごとパクってんじゃねぇよッ!!(涙)
パクリの連鎖〜完。