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第六十話 帰国──魔石とステータス

 「お帰り、タロス、エイベル君!」


 マルガナの飛行所の出口ロビーに、かーちゃんがいた。それは嬉しいのだが、かーちゃんの体の周りには、薄紫色のフワフワした布が風に揺らめくように浮かんでいた。


 「⋯⋯風衣(かぜごろも)?」

 「⋯⋯だね~」


 オレっちとエイベルのビミョーな表情に気づかないのか、かーちゃんはニコニコしながら、歩み寄ってきた。


 「⋯⋯かーちゃん、ソレ、風衣だよね?」

 「そうよ。よく知ってるわね?去年頃から上流階級の奥様方の間で流行っていたのだけど、値段が高くて買うかどうか悩んでたのよね。でも、なんだか急に値段が手頃になって、とうとう一週間前に買っちゃったの!」


 かーちゃんは微笑みながら、風衣のフワフワした薄い布地を触っていた。


 「⋯⋯」


 言えない!値段が下がった理由──それは大量のバッタもんが出回って、ウルドラでの流行が終わったから──なんて、言えない!!


 「上品な色だから〜おばさんに〜似合ってると思います〜」


 エイベルも、あの半額売り尽くしセールを見なかったことにしたらしい。


 「あら、そう?」

 「ハイ〜!」

 「そう言ってもらえると嬉しいわ!」


 エイベルは、違和感を持たれることなくごく自然な褒め言葉を発して、かーちゃんを喜ばせた。さすが、我が癒しの友。


 「それより⋯⋯あんなことがあったから、帰りも心配だったのだけど、無事で良かったわ。⋯⋯少し、丸くなったみたいだけど」


 ⋯⋯うん。太りました。即バレ。


 「ゴホン!そうそう、帰りの鳥浮船は、近くの街の市民魔導師さんを雇ったみたいだよ!」

 オレっちは、誤魔化すように大きな声を上げた。


 鳥浮船の警備体制を新たに整えるまでの間の臨時対応らしいが、元A、B級冒険者や、おむすび公ことデンバルさんのような元国家魔導師を雇うことで、警備を強化したそうな。それに、帰りの便には保護施設の子供たちが乗っていなかったから、再び襲われる可能性は低かった。


 「そうだったのね。ああ、そうだわ、トムさんにも御礼のお手紙を出しておかないとね。今回はお世話になった上に、心配をお掛けしたから⋯⋯」


 それはオレっちも思っていたから、別れ際にエイベルと二人、感謝しまくった。


 『いやいや、儂も息子たちに会う口実ができたからの〜。長男はともかく、次男と三男とは、年に一、二度ぐらいしか会わんし』


 なんでも次男のプルカさんは、仕事でビスケス・モビルケに出張することが多く、三男のウースさんは、嫁のコイーナと息子のナマキーが勝手に休日の予定を決めてしまうので、なかなかトムさんとアンさんには会いに行けないのだそうだ。


 プルカさんはともかく、ウースさんは嫁ガチャの失敗としか言えない。オレっちなら即ギレして離婚を申し渡すケース。


 それはともかく、トムさん!お世話になりました!!






 ◇◇◇◇◇ 


 「かーちゃん、コレ、お土産!」

 「ありがとう、タロス。あら。小さいけど天然の魔石ね」

 「うん。ウルドラは魔素鉱山が多いから、アクセサリー用の魔石もいっぱいあったんだ!」


 本来、天然の魔石は、大きく切り出された塊を精製魔導器に入れ、魔素エネルギー変換させる。このアクセサリー用の魔石は、個人消費用に小さく精製加工された魔石の、転用品の一つだ。


 普段、オレっちたちが使っている充魔石は、最初は個人消費用の魔石として買ったもので、使用後に再利用しているだけだから、天然の魔石ほどの大エネルギーではない。

 それでも魔法具程度なら十分動かせるエネルギーだから、自分の魔力を注入して、石が限界をむかえるまで何度でも使う。


 ちなみに現在の天然の魔石は、魔素が爆発的に増えた暗黒期に形成された物が多い。

 今では空気中の魔素こそ薄くなったが、地中などでは、当時のままの濃い魔素が所々に充満している。当然、そこにある魔石も濃い魔素を含んでるってわけ。

 また、ある程度魔石を取り尽くした鉱山でも、空魔石を放置して数百年ぐらい閉鎖しておくと、再び、天然の魔石として採取できるらしい。


 そして、天然の魔石には金と銀の色があり、フツーに考えると金の方が良質ぽいが、実は銀の方が格上。金の倍の魔素を含んでいるのだ。


 充魔石は、その魔素の色が抜けて透明になったものだが、どんなに魔力が多い者が魔力注入しても、灰色にしかならない。


 かーちゃんに渡したモノは、小粒の金色魔石。加工されて真珠のように丸くなってるから、指輪やネックレスに使えるはず。あと、財布の中に入れておくと、ベルビーが貯まるとの噂もある。





 ◇◇◇◇◇ 


 帰国した次の日──オレっちは久しぶりに、自分のステータスを確認することにした。

 まあ、レベルなんて早々上がるもんじゃないから、正直、一年に一回でもいいんじゃないかと思ってる。どーせ、チート無しだし。


 よし、ステータス・オープン!!


 

 名前 タロス  加護種名 カリス  LV5


 HP 360/360  MP 450/450


 風LV2 水LV1 土LV1


 高レベルスキル  秘匿


 中レベルスキル  秘匿


 低レベルスキル  自己治癒  他者に施す魔力増幅  花の防御壁  その他




 うん。レベルも体力も魔力も、地味に上がってる。でも、新しいスキルは無いな。その他のまんまだ。まあ、最初のステータス確認から半年も経ってないし。

 誘拐事件の時だってピンチはピンチだったけど、死にかけた訳でもないしな。(某マンガの影響で、死にかけると強くなる思い込みがある)


 ⋯⋯あ。チクチクポンポンの様子も見なきゃ。あと、ヴァシュラム・ルアで買った種も植えないと。


 結局、定番だけど、薔薇の種を買ったんだよね。その場で鑑定したら『赤の竜賢者のかつての夫人の一人、『ガラティア』の名を冠する白銀の薔薇。大輪が多い改良種の中では、少々、小ぶり。しかし、茎が他の薔薇より細く、銀色の棘がとても美しい。葉が少ないので、全体的にスッキリしている』って書かれてあった。

 オレっちが興味を惹かれたのは、棘。銀色のトゲって珍しいし、カッコいいと思ったから。


 ただ、育てるのが難しいみたいなんだよなぁ。ある程度の魔力を与えないと成長しないし、場合によっては枯れてしまう、とも書いてあったから。それに、改良種だから、次の種は発芽しないかも──⋯⋯って、それじゃあ意味ないな。買う種、間違えたかも。(今さら)


 でも、今回の誘拐事件では己の無力さを痛感したから、せめて、せめて、一撃だけでも敵に食らわせるような武器が欲しいんだよっ!(タロス的一撃=遠隔攻撃=薔薇の鞭。接近戦の想定は、初めからナッシング)

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