表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/137

第五十八話 小獣人はアイドル?

 「おお!高い!」


 ゴンドラは上昇を続け、ほぼ聖竜都全域が見える高度にまで達した。

 さすがウルドラム一の大都会!大きくて高い建物ばかりで圧倒される!人がゴミのようだ!⋯⋯じゃなくて、多い!


 「⋯⋯アレ?」


 ゴンドラはそれ以上動かず、オバサン竜は、ずーっとホバリングを続けている。


 「⋯⋯空を周回しないの?」

 「コレは、上昇してヴァシュラム・ルアを見下ろすだけのアトラクションじゃからのう」


 ⋯⋯ハイ?


 「聖竜都の空はの、基本的に飛行禁止なんじゃ。この上昇するだけのアトラクションでさえ、ギリギリのラインじゃな。よく許可がおりたものじゃ。⋯⋯というのも、実はこの観覧所は、赤の竜賢者様の夫人のお一人がオーナーでの。つまりはそういう事じゃ」


 奥様、権力使いまくり。


 「そもそも地方都市でもそうじゃが、人が多い地域では、緊急時以外の竜体化は、禁じられておる。じゃから皆、地方の村や山や谷、あるいは南方の砂漠地帯で、時折、竜体化するんじゃ。後は──ダンジョン内ぐらいかの?」


 「ダンジョン⋯⋯あ~⋯」


 そういえば、竜人とエルフの上級冒険者だけは、神々の遊び場のごく浅い層のみだけど挑戦できるんだっけ。竜人は体力チート、エルフは魔力チートで。

 ってことは、一般の竜人でも冒険者登録して、旧ダンジョンで竜体化しまくり!?


 「そもそも、竜人は人型が基本で、竜体化は、力の誇示と空を飛ぶ娯楽みたいなもんじゃからのぉ。あとは⋯⋯物流関係や国境警備の仕事ぐらいかの」

 「そうなんだ⋯⋯」


 竜体化は魔力消費が激しいとは聞くが、それ以前に、場所を選ばないといけないのか。竜体で旅をするには、事前の調査が必要なんですな。


 「それよりタロス〜、アレが〜赤の聖宮殿じゃない〜?」

 「おおっ!」


 オレっちは、サッとエイベルの隣の席に移動する。

 エイベルの視線の先には、真ん中の部分が歪んだ──なんか、水に油を垂らしたような七色の膜?っぽいものがあって全く見えなかったけど、その周辺の建物や庭園、そして、幾つかの白くて高い塔が見えた。

 その塔の上に、赤い服を着た竜人たちの姿が見える。


 「ふ~ん。赤い建物とかじゃないんだ〜」

 「一応、結界内の宮殿の屋根は、赤と金の配色らしい。じゃが、壁は白だと聞くの」

 「ねえ〜、あの塔の上の人たち〜もしかして〜神聖竜騎士団の人たちじゃない〜?」


 エイベルの言った通り、赤い服の軍服じみた作りからして、騎士団ぽい。


 「赤の竜賢者様の専属騎士たちじゃな。あの塔にいる者たちは、いざという時には竜体化して、聖宮殿を護る任に就いておる」


 ほうほう。でも、どーせなら常時竜体化してた方がカッコいいのに。残念。


 「黒の〜聖宮殿も〜見えるよ〜」

 「うん⋯黒だな!」


 少し遠目だが、こちらもやはり中心部が歪んでいて、高い塔が多い。でも、こっちは黒い塔だ。分かりやすい。


 「白の賢者様宅は──アレ、何処だ?」


 聖宮殿は規模が大きいから場所が分かりやすいんだけど⋯⋯アレレ?


 「あそこじゃよ。ヴァシュラム・ルアの端の方にあるんじゃ」

 トムさんが、西の方角を指す。


 あ、アレか!遠い──めっちゃ遠いよ!?


 「なんで竜賢者様宅が、あんな端にあんの!?」 

 「昔からじゃからよく分からんのじゃが、あの場所は、ダンジョンに近くての。じゃから、何らかの理由があってのことかもしれん」


 ウルドラのダンジョン!あそこにあるんだ!


 「それに、血が断絶した竜賢者の聖宮殿はそのまま竜神殿となるが、その幾つかは地方にもあるんじゃ。何も中央だけに住まいを構えておられる訳ではない」


 そうなんだ。規模の大きい神殿=旧聖宮殿なのか。⋯⋯ビスケス・モビルケもそうなのかな?学校が始まったら、モブラン先生に訊いてみよう。


 目立つ建物をチェックした後は、その他の景色を見渡す。聖竜都の外れでは、鳥獣人たちが飛んでいる姿が見えた。動きからして配達の仕事っぽい。

 そうか。あの辺りの大きな建物は、荷物の集積所──物流倉庫があるんだ。ん?今、チラッと竜の姿が見えたような!?あー、建物の影に行っちゃった!?

 

 他にも、中心部以外には、建物が乱立している。でも、聖宮殿周辺では、一軒家やマンション、アパートだとかはまったく見えない。ホテルはギリギリの線で建ってるが。トムさんの言った通り、一般人の住宅は建てたらダメなんだ。


 「見て〜、タロス〜!下の方は川だった〜!」

 「ホントだ!気づかなかった!」


 空中観覧所の背後には、大きな川が流れていた。小さいけど、船も行き来してる。

 道だって荷物を積んだ魔牛車や魔馬車が運行されていて、こうして上から眺めると、ヴァシュラム・ルアにも少しだけ生活感が出ていた。






 ◇◇◇◇◇


 「楽しかったね〜!」

 「だな!」


 オバサン竜は、ゴンドラの着地と同時に『あ~今日も疲れたわ〜』と言いつつ、竜体化を解いていた。


 オバサン声ではあったが見た目は若く、前世年齢二十代後半ぐらいの紫色の髪のお姉さんだった。そこにも驚いたが、一番驚いたのは、服を着ていたことである。

 トムさんによると、魔法を重ねがけした魔法繊維の特殊服は、竜人国では需要が多いので多国と比べると安く買えるのだそうな。

 まあ、安いって言っても、それなりのお値段なんだろうけど。




 「じゃあ、転写真を撮るね〜!ハイ、ポーズ!」


 何故かゴンドラアトラクションのスタッフたちと一緒に、転写真を撮ることになった。


 こういった商売は、もともと転写真専門の視覚転写スキル持ちのスタッフがいて、記念用に依頼すると撮ってくれるものだ。

 だが今回は、『今日は、サービスで無料にしておくね〜!』と言われ、無料という言葉に弱いオレっちは、よく分からんが別にいいかという顔をしたトムさんとエイベルと共に、撮られまくった。


 ハガキサイズの紙にフルカラー転写されたものが、それぞれ三枚づつ渡される。残りの大半はスタッフの手に渡ったようだ。


 「タロス君は希少種じゃからの〜。この機会に、とでも思ったんじゃろうな」

 「⋯⋯そうなんだ」

 希少小獣人リストでも出回ってるんだろうか?


 なんつーか、アイドル的な感じで見られているのか、珍獣扱いなのかがハッキリしないが、得をしたので良しとしよう。うん。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ