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第五話 神々の無理ゲーと情報過多

 神々の遊び場とは。

 神話時代、もともとあったダンジョンに物足りなさを感じた神々は、その最下層の下に、新たなダンジョン階を追加。

 旧ダンジョンは15階層。新ダンジョンは13階層程度なのだが、設定がえげつない。


 新しい階層で跋扈する魔物は、元のダンジョン最下層のラスボスが雑魚扱いになるぐらいの規格外ステータスの持ち主ばかりだし、階層そのものも地上の風景を模した元のダンジョンとは異なり、上位世界の環境を取り入れたそれは、世の理を無視したかのような摩訶不思議さらしい。


 神々を除けば、実際に見た者はごく僅かで、しかも古い記録しか残されていない。

 一番新しいとされている千年ほど前のS級パーティーの手記には、新ダンジョンの7階層までの記録が記されていた。


 何でもこのパーティーには、その当時まだ存命だった半神がメンバーとして加わっており、そのおかげでそこまで辿り着けた、とのこと。

 半神とは、その名称通り、神々と加護種との混血で、その肉体も魔力も加護を持つだけの眷属とは段違い──いや、次元違いのスペックだったとされている。

 それこそチートなステータスの持ち主ばかりだったのだろう。生まれながらの格差ってやつでんな。羨ま。


 しっかし古き神々がこの世界を去ったのはかなり昔のはずなのに、千年前とはいえまだ生きとったんかい。どんだけ長生きやねん。



 「その手記にあるダンジョンは、ここではなかったので参考にできないのは残念ですが、そもそも現在のS級では、旧ダンジョンの深層がやっとですからね。あ。でも、旧最下層でも踏破すれば、S級認定されますよー」


 以上、ガイドのお姉さんの説明でした!


 

 それからのダンジョン街での見学は、冒険者志望の若人たちの切実な就職問題へと変わっていった。彼らは皆、一年以内には学校を一時休学する予定だという。

 学校を一時休学?そんなんできんの!?オレっち就学前だから知らんかった!


 少年たちから教えてもらった話では、この小獣国──ビスケス・モビルケでは、獣学校という教育機関を50歳までに卒業すれば、学問履修済みの学歴にみなされるんだと。50歳!?つまり、獣学校って前世の大学みたいなもんなの?まー、あっちの方は上限ないけどな。


 「俺たち獣人は、300年は生きるからな。学業優先の連中もいるが、大半は途中で休学して、適正のある職を探す」

 鳩似獣人の少年が、翼とは別になっている腕を組みながら、衝撃情報を追加する。

 ⋯⋯成長スピードが前世と変わらんかったから、寿命がそんなに長いとは気づかんかったわ。不覚!


 「冒険者は、魔法やスキルに自信を持つ者なら一度はやってみる職なんだ。ギルドに登録しておけばいつでも復帰できるし、冒険者として適性ありなら、早めに学校を卒業して本業にできるしな」

 「アタシは魔法に自信あるから、冒険者か市民魔導師。小獣軍や獣警団は規律が厳しいから面倒いしね」

 オコジョ(?)獣人の少女が、またも新情報を追加。追加されすぎて、オレっち興奮状態。


 「ねぇねぇ、シミン魔導師って?」


 小獣軍や獣警団はそのまんまだからスルーしちゃうけど、魔法関係の職種は興味津々。


 「んー、要するに、魔法やスキルを使って市井の困り事を解決する何でも屋って感じかな?冒険者ギルドの護衛の依頼とは違って、戦闘外の依頼が多いんだけど。で、自分の魔法属性と固有のスキルを役所で登録して、その都度、依頼を受けるの。手数料は取られるけど、報酬の踏み倒しは無いし、何より法に触れるようなヤバイ依頼が無いから安全だし」


 それって──国営の魔導師の派遣業じゃん。てか、法に触れるヤバイ依頼って?この小獣国にもあんの、闇バイト的なナニか!?


 「国家魔導師は、三級以上の魔法知識資格か、もしくは特能スキルがないと入れないから、アタシには無理だしね」

 「あら。あなた若いんだから、まだどちらも伸びるわよ?」


 それまでニコニコして隣に座っていただけのかーちゃんが、オコジョ獣人の姉ちゃんに話し掛けた。


 「ウ~ン、魔法もスキルもそれなりに伸びるとは思いますけど、そもそもチロヴィの加護スキルは、防御系のものばかり発生しやすくて、しかもメジャーなものばかりで、他と被るんですよね。パーティーメンバーとしては必要不可欠ですけど」


 オコジョ姉ちゃんは、チロヴィ加護種だったのか。ちょこっと知識ゲット。多分、すぐ忘れるけど。


 「確かに古き神の加護は、眷属によって偏りがあるわね。私たちカリスも属性は風や土ばかりだし、スキルは補助的なものが多いしね」

 ええっ!初耳なんですけど!!補助的なって──チートどころか地味な脇役系の臭いしかしねえ!


 「あ、皆さんー、鑑定店に着きましたよー!慌てず、順番に降りて下さいー!」


 ああー、もうちっとスキルの話を⋯!

 などとは言えず、仕方なく下車すると、冒険者ギルドほどではないが、周辺のどの店よりも幅の広い入り口が目立つ大きな建物が、目の前にあった。猫姉さんに続いてカルガモ入店。列を乱してはいけない。


 魔物素材やダンジョン内の宝箱から入手できる宝石や貴金属を鑑定・査定する店の内部は、意外とシンプルで、魔物素材等も見当たらなかった。その代わり、革鞄が棚に多数あったから、素材や宝石などは、あそこに収納されているのだろう。


 この世界、流通している魔法鞄(マジックバッグ)は、全て神々の聖遺物の複写(コピー)だ。

 冒険者は登録後、ギルドからこの魔法鞄をレンタルすることができる。期限はないが、法律でダンジョン外への持ち出しを禁じられているので、ダンジョン内やダンジョン街に限っての使用しか出来ない。

 でもね。実はこの魔法鞄、一般市民にも流通してんの。前世の買い物カゴ4つ分ぐらいの極少容量、もしくは買い物カート4台分の少容量で。

 そんなんでもめちゃお高いから、庶民は先祖代々受け継がれたものを大切にしている。うちにある魔法鞄は、かーちゃんが離婚した時に父ちゃんからふんだくった。今も肩から下げている。いずれはオレっちのものとなるだろう。うん、大切にしよう。


 それはともかくとして、冒険者達がレンタルしているのは特大容量の魔法鞄。これはそこそこの商人でも自前で持っている。もちろんローンを組んで、チマチマ返済しているらしいけど。

 どんだけ高額なん?この鑑定店の棚に置かれている無数の革鞄(多分、特大容量)を見て、思わず魔法紙幣の束が浮かんだわ。総額おいくら!?

 

 そんな心配はご無用の事実発覚。


 「ダンジョン街でー、このお店だけは、国営なんですよー。鑑定や金額査定は信用第一ですからねー」


 この店の鑑定スキルの持ち主は、全員、公務員。買い取り金額を査定するのは商業ギルドからの派遣だが、両者とも誓約魔法によって虚偽の申告が出来ないようにされているらしい。

 国営だからあの魔法鞄の数なのか。納得。

 

 それから、魔物素材を数点見せてもらった。浅い階層の魔物、深い階層の魔物──角や爪や牙や毛皮や皮。はっきり言って大きさが違うだけで、それ以外は区別がつかなかった。


 「これは加工したものです。さっきとは全くの別物でしょう?」

 鑑定士見習いだという鴉獣人の青年が魔法鞄から取り出した薄いかまぼこ板サイズの物体は、虹色の光沢を放っていた。

 え。コレがさっきのうす汚ねー、角なの!?


 「次は深層の魔物の角を」

 テーブルの上に、まな板サイズの薄っすらと金色掛かった虹色の板が置かれる。先程の物よりも7色が濃い上に、金色(こんじき)のメタリック感が強い。ワタクシはいかにも格上だと言わんばかりの高級品オーラ。眩しい。


 「コレ一点で、なんと馬魔獣が三頭も買えるんですよ。ただ、火炎系と雷系の魔法を使う魔物なので生還率はかなり低くはなりますが!」


 おい。色々とツッコミどころが多すぎるぞ、兄ちゃん!つーか、馬魔獣ってそんなにお高いの!?めっちゃ気になるんですけど!








 ☆ 魔法鞄(マジックバッグ)・補足 ☆


 魔法鞄は、密輸や盗みなどの犯罪に使用される恐れがあるため、土地や建物と同じで登記義務があり、また印章魔法で所有者の情報が検索できるようになっています。登録されていないものは特例(冒険者ギルドからの貸出しなど)を除き、違法とされてしまうので、摘発されると国に没収されてしまいます。

 また、他者に貸し出す事も違法なので、家族間での使用も基本的には禁止です。婚姻後は、妻と夫の2人名義にしておくことがベスト。



 ☆ オマケ ☆


 オコジョ似の加護種、チロヴィは、古き神の一柱、チローヴィチュの眷属。

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