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第四十六話 出発は明日!母のステータスは謎だらけ

毎日の更新が厳しくなってきたので、一日おきになります。とにかく頑張って完結まで書きたいので、継続して読んで頂けたらうれしいです。

 明日、オレっちとエイベルは、竜人たちの国、ウルドラへと旅立つ。

 去年お世話になったスミー村のトムさんとの待ち合わせ場所は、ウルドラの聖竜都、ヴァシュラム・ルアの、中央飛行所だ。


 トムさんとアンさんの一番目の子供、つまり長男さんの家にお世話になることになっている。でもアンさんは同行していないので、今回は、トムさんだけとの再会だ。

 アンさんは緑の少ない竜人の都市部が苦手で、半日ほど滞在するだけでも体調を崩してしまうらしい。⋯⋯オレっちとエイベルもそこんとこは不安だけど、こればかりは実際に行ってみないと分からないしね。




 「御礼の品は、本当にこれで良いのかしら、タロス?」

 ダイニングにあるテーブルの上に、桃色と茶色のやや平たい二つの箱が置かれる。

 かーちゃんが用意したのは、前回も渡した小獣国定番のお土産、小獣クッキーと小獣饅頭だ。どっちも美味いが、とにかく甘い。

 「うん。ウルドラじゃビスケス・モビルケみたいな激甘なお菓子は無いから、喜ばれるんだって!」


 ウルドラ──竜人たちはどちらかというと、辛さや塩っぱさ、あとワサビ的なツーンとした刺激的で味の濃い食べ物を好み、逆に菓子類は、素朴で甘さ控えめな物を好むのだとか。

 スミー村は小獣人たちが多かったし、国境が近かったからあんまり感じなかったけど、竜人たちが多い地域だと甘い菓子類は種類が少ないようだ。

 オレっちたち小獣人の大半は、甘党。でも、塩っぱいのも好き。今もはちみつゼリーと塩煎餅を交互に食ってるオレっちは、その代表みたいなもん。


 「はぁ⋯⋯」

 オレっち用のコップにアイスミルクティー(おわかり)を注いだかーちゃんが、ため息を吐く。

 「かーちゃん、どうしたの?元気ないみたいだけど?」

 かーちゃんは目の前にある塩煎餅には一切手を触れず、アイスティーだけを飲んでいた。

 「そういう訳ではないんだけど⋯⋯」

 視線を上げず、アイスティーを凝視しているかーちゃんに、オレっちは不安を感じる。


 なんか変だ。どうしたんだろう、かーちゃん?

 ハッ!まさか──あの()()のことか!?


 一昨日、性懲りもなく来やがったから、特上うな重と三段重ねアイスを奢らせ、ちょっと甘えたフリをして、ヒーローゴーレムシリーズのゴッドゴーレムと魔法装備品のセットを買わせて、すぐに『またね〜!』って別れて──ウッキウキでアパートに帰ったっけ。

 ⋯⋯もしかしてかーちゃん、アイツになんか言われたのかも。


 「かーちゃん、あの──」

 ⋯⋯なんか訊きにくいな。元夫婦間のことだし、オレっちに知られたくないような何かだったら、かーちゃんが困るし。

 「どうしたの、タロス?」

 「ううん。何でもナイ」


 ⋯一度だけ。一度だけ、かーちゃんのステータスを──ステータス・オープン!



 名前 ピアナ  加護種名 カリス


 HP 1100/1200 MP 1800/1800


 風LV6 土LV5


 スキル  自己治療 風圧パンチ 社交好感(大) 精神安定香


 風圧パンチは元夫を殴った際、発生したスキル。成獣人でも、二、三メートルは軽くぶっとばせる。

 社交好感は、魅了のような強制力では無く、ごく自然に好感度を上げることができるスキル。精神安定香は、花冠の香りのオマケ効果。


 古き神々の一柱、カガリスの加護種。ビスケス・モビルケの海辺の町、ハマグリナの生まれ。幼獣体期に家族と断絶し、マルガナの獣神殿施設で育つ。

 もともと地方なまりが強かった口調だが、神殿施設で一番接することが多かった元上流階級の未亡人の施設職員の影響を受けて、おっとりした上品さを身につけた。

 正直、元夫のことはどうでもいい。最近ではお屋敷の警備員さんに頼んで、追い返してもらっている。

 心配なのは、息子のタロス。少し前までは父親に絆されるのではないかと案じていたが、金づるとしか思っていないようなので、安心した。しかし、そのあまりの情の無さに、別の意味で心配している。


 ウルドラに遊びに行くのは良いのだが、自分の花冠の花の一輪の色が少し白くなっているのが気になる。そういう時は、何か良くないことが多々あるので、心配している。彼女に予知スキルは無いが、母の勘は侮れない。

 直近の悩みは、お腹のお肉と体重の増加。暑いので冷却魔法具を最大モードにしたいのだが、ブア毛でさらに太く見えるので、それができない。そのせいなのか、少々、夏バテ気味。



 ⋯⋯どっからツッコめばエエんや。

 風圧パンチ?家族との縁切り?白くなったかーちゃんの花?お腹のお肉?ブア毛拒否の体調不良?


 かーちゃんの花冠を見上げる。⋯⋯ハマヒルガオ似の花のどの辺りが白くなっているのかが分からない。どれも同じ水色にしか見えないよ、かーちゃん。

 そのまま視線を下に下げて、かーちゃんのお腹を見る。⋯⋯確かにちょっと。ハッキリ言って、デ⋯じゃなく、ぽっちゃりしてる。でもそれは、オレっちも同じ。ワンツーダンスで少しはマシになったが、まだ腹の肉は上下に揺れてる。


 「──かーちゃん、オレ、ウルドラから戻ったら、ダイエットしようと思うんだ。秋の大祭までに少し身軽にならないと。失敗して恥かくの嫌だし。でも、一人だと続かなくって⋯⋯」 

 「!そうね。じゃあ母さんと一緒にダイエットしましょうか。まずは食事から見直さないとね!」



 ⋯⋯何とか自然な流れに持っていけたかな?

 それにしても──かーちゃんが縁切りするほどの家族って、どんな人たちだったんだろ?大人になったら、それとなく訊いてみようかな。案外、自分から話してくれるかも。ものすご〜く気になるけど。






 ◇◇◇◇◇


 「はい、タロス、朝ゴハンよ!しっかり食べて出発するのよ!」


 ウルドラへの出発の朝、食卓の上には小ぶりなオニギリ二個と豆腐入りの味噌汁()()が置かれてあった。

 え。今日からダイエットなの!?

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