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第三十四話 雨の日も風の日も

 ザァザァ音がして、目が覚めた。

 雨が激しく降っている──シトシト降るのはよくあるが、ここまで激しいのは久しぶりだ。

 「学校、行かなきゃ⋯⋯」

 ムクリと起き上がり、ベッドから床に足を着ける。

 姿見の鏡の前に立つと、湿気のせいで我が白き毛がヘタれていた。体毛ブラシを駆使して、サッラサッラに──ならない。

 「⋯⋯」

 あ〜、ダル〜、ベトベトして気持ち悪いぜ。仕方ない、かーちゃんに風魔法を──。

 あ。オレっち、自分で魔法使えるわ。よしよし、ソレなら──。



 「タロス〜、今日はなんかいつもと違って見えるんだけど〜?」

 「⋯⋯ちょっとしたオサレだよ、エイベル」


 思いっきし失敗した。

 風魔法の風圧が強すぎて、毛が左側寄りのブア毛になってしまったのだ。花冠のポピタンは影響を受けなかったので無事だったが。我ながら、めっちゃワイルド・ブア。


 オレンジ色のレインシューズを履き、雨を軽減する風魔法付与のミントグリーンのレインコートを装着。エイベルは、黒のレインシューズと、グレーとホワイトの水玉模様のレインコート。

 はっきり言ってこの装備の時は、いつもの倍は着膨れる。オレっちなんか尻尾が大きいから、テント被ってるみたいな見た目になってんだよね。それでも恥ずかしくないのは、他の皆もそうだから。

 雨の日のマルガナ街は、着膨れたモフたちで溢れかえっているのだ。ワハハ。



 「なんか、いつもより少くね?」

 「うん〜、いつもなら〜満員なのにね〜」

 魔牛車が停車する度にどっと入ってくる学生たちが、今日は半分もいない。それは、学校内の魔牛車でも同じで、空席が多かった。入学してからずーっと満員が当たり前だったから、何だか変な感じ。



 「⋯⋯少ねっ!」

 教室には、フェンリーやメロスを含めた五人だけしかいなかった。

 「こんなに激しく雨の降る日は、通学組はほぼ休みなんだ。君たち、よく登校して来たね。偉いよ!」


 いや、知らんかったから。


 「僕達は男だから毛の状態が悪くても気にしないけど、女の子たちは気にするからね。加護種によっては、ああなるけど」

 フェンリーの視線の先には、机にうつ伏せたメロスの姿があった。尻尾穴に通した二又の尾が床に撃沈している。ピクリとも動かない。本体も尻尾も。

 いくら寮住まいとはいえ、そこまでダメージを受けているなら登校しなくてもよかったのに。



 「モブラン先生は体調不良のためお休みとなったので、この私、リブライト・メイズが本日の授業をさせて頂きます!」


 おっ。モフ好きの加護人先生だ。雨の日でも元気だな〜⋯⋯って、人型だから体毛に左右されないのか。モブラン先生は、湿気にやられたな。歳も歳だし。

 「さあさあ、今日は何から始めようかな?統一国語、数学、獣神学──」

 「ハイ!先生の──加護人の国の事を、教えて下さいっ!!」

 オレっちは勢いよく手を挙げた。

 コレはチャンスだ!加護人国──アメジオスの最新情報が聞ける!!


 「そう?嬉しいな、君はうちの国に興味を持ってくれてるんだね!」

 リブライト先生が、水色と金が混じった瞳を輝かせた。


 いやいや、ウルドラム大陸全般にですけど。


 「私の国、アメジオスはね、統一国時代からエルフたちと交流が深くて、彼らが自分たちの国⋯ブルタルニアを興した時、そのドサクサついでに建国した国なんだ」


 ドサクサついでにって⋯エラい簡単に言わはるな。


 「あの海の呪いの後、加護を失った竜人たちは支配体制を維持できなかったからね。エルフたちは竜人とは一線を引いていたから、これはチャンスだと思ったんだろう。そこから、加護人国(アメジオス)大獣国(ポラリス・スタージャ)小獣国(ビスケス・モビルケ)と続いた訳だ」


 まさにドミノ倒し。勢いに任せての独立でんな。


 「でも、場所的には失敗したんだよね。なんせ隣が人間の国だったから、彼らの内乱、分国騒ぎが何度もあって、正直、迷惑したからね!」

 「え~と、最初は二国に分裂して、今は三つの国に分かれているんでしたっけ?」

 「そうだよ。海の呪いで竜体化できなくなっても、賢者家の者には神の血が流れている──だから彼らの号の下、1200年は何とか一つの国として存続できていたんだ。だが、その血が絶えると10年もしないうちに内乱が起こった。そこから二つに分かれ、200年ほど前にまた分裂して、三つの国となったんだ」


 古き神々の争い以降、竜人が支配していたこの世界では、大きな戦争は起きなかった。

 それぞれの国の独立だって、海の呪いのドサクサでほぼ争うことなく、それぞれの加護種が元々一番多く住んでた地に集まって『俺たちここに国作るからね〜』って、感じだったらしいからな。

 そもそも最初はどこの国にも元竜人や他の加護種たちが住んでて、それが長い時を経て、それぞれの国に移住して行ったって話だけど。

 やがて人間の国となった一つの国が、内乱という数万年ぶりの争いを起こす。周辺の国々はそりゃあびっくりしただろう。魔法や魔導兵器を使った大規模な争いなんて、歴史書でしか識らないんだもん。そこは前世のオレっちとかぶるからよく解ります、ハイ。


 「と、まあ、それはともかく、アメジオスもビスケス・モビルケと同じくらい自然豊かな美しい国なんだよ。湖が多くて夏でも過ごしやすいし、エルフの国とは国境があるようで無いから出入り自由だし」


 ⋯⋯いや、それならもう統合して、一つの国にすればいいのに。⋯あ、そうだ!あのステータス画面のナゾを聞こう!!


 「リブライト先生!加護人の『幻妖種』って何ですか!?」

 「よく知ってるね!フフ。興味あるかい?」

 「ハイ!」

 「そうだね。んー、見た方が早いかな?」

 「?」


 ポム!!


 「キュ!?」「ワッ!」「ヒエッ!」「ヒッ!」


 ガタタン!

 オレっちと教室内の数少ない生徒たちが、一斉に椅子から立ち上がる。だってリブライト先生の姿が消えて、目の前に四本脚をした大きな水色の体毛の魔物が出没したんだから。

 そう。どう見ても前世のゲームに出てきそうな魔物ビジュアル。幻獣?妖怪?ポケ◯ン?モフっとした体型の首長のナニか。あ、足元だけ金色ソックス!


 「驚いた?コレが私の変化した姿だよ!」


 ナゾ種としか言いようのない垂れ耳の丸っこい頭が、リブライト先生の声で話す。

 「⋯⋯先生?」

 「そうだよ。竜人の竜体化とは違って、変化できる時間は短いけれど、人型時の二倍は全能力がアップするんだ。その分、多くの魔力を消費するけどね。さて──この姿では授業はできないね」

 ポム!っと先生は、瞬時に人型に戻った。

 ⋯⋯服ごと元に戻ってるってことは、服も含めての変身なのか。それにしても、人型時の美形度が木っ端微塵の変化だな。


 「これで分かったかな?幻妖種とは、幻体に変化できる能力を神より授かった者のことだ。変化する姿は人それぞれ。先祖に影響されるとも、性格や趣向が出るとも言われているんだ」


 趣向。なるほど、リブライト先生はモフ好きだから、モフ的なナニかの姿なのか。納得。


 それからリブライト先生は、今のアメジオスの流行りや、あっちの学校の事を面白おかしく聞かせてくれた。普段のモブラン先生の授業も面白いけど、こうして違う国の先生が話してくれる授業は、もっと面白い。

 こうした話が聞けるなら、雨の日も風の日も、オレっちは学校に登校するぜ!


 ちなみに、メロスは辛うじて折れ耳を立てながら授業を聞いていたけど、ほぼ机にうつ伏せたまま一言も発する事なく、その日の基礎学科を終えた。

 明日から週末の連休だし、ゆっくり休め!

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