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第二十七話 謎の夢とバグったステータス

 三日後、獣神殿で属性やスキルが判明する。一週間は待たされると思っていたが、あっさり予約がとれてよかったというべきか、心の準備ができてないというか──チート⋯いや、せめて複数の属性と何か役立つスキルが一つでもあれば⋯⋯。






 ◇◇◇◇◇


 なんだろうアレは?紫色の雲の上に、大きな毛玉が乗っかっている。


 全体的にぷっくりとした身体、丸めた尻尾に頭を突っ込んでいるせいで、顔が見えない。その身体には、色とりどりの花が咲いている。その花の隙間から僅かに見えるのは、銀色の毛。

 じっと見ていると、ふいに尻尾から顔が出てきた。

 ふくふくとした両頬が何かを咀嚼するように動き、やがて半眼ではあるが、琥珀のように美しい黄の瞳が、こちらを見た。

 目が合った──ような気がする。




 「!」


 アレ、オレっち寝てた⋯?

 ナニか夢を見てたような気がするけど──どんな夢だっけ?

 頭がはっきりしない。顔、洗うか。

 洗面台で顔を洗う。今のオレっちの顔は毛だらけだから、完全に乾くまで貧相なリス顔になってる。もう慣れたけどね。


 「!」


 そうだ!風で乾かせばいいんだ!

 もう魔法が使えるんだから、風が起こせるはず!花が咲いてから二日以上経ってるのに、どうして今まで気がつかなかったんだろう!?

 問題は、風の属性があるかどうかだが──。

 エイベルが言ってたよな。魔法は、属性とイメージだって。よし、やってみるか!

 「か、風!──小!」


 ブワッ!


 「ホゲッ!」


 殴られた──いや、風に圧された。やや傾いた体勢から直立へと体を戻す。『小』のイメージが遅かったんだろう。風圧パンチ⋯効いたぜ。失敗、失敗。でも。


 「できた──魔法が使えた!!」

 ヤッホーイ!!

 ちょっと、ハイテンション。そうだ、ダメもとでやってみるか、お約束!


 「ス、ステータス、オープン!!」


 ⋯⋯ん?


 え!?マジで成功!?


 何も無い空間に、文字が浮かび上がる。

 おおっ、お約束のまんまだ。ひねりも何も無い異世界特典!──にしても、びっしり書いてあるな。

 んん!?レベル3!?オレっち、どこで経験値稼いだの!?

 

 

 名前 タロス  加護種名 カリス  LV3


 HP 299/300  MP 345/350


 風LV1  水LV1  土LV1


 スキル 多才スキルが解禁状態。ただし、これらは全て努力次第。


 高レベルスキル  秘匿


 中レベルスキル  秘匿


 低レベルスキル  自己治癒  他者に施す魔力増幅  花の防御壁  その他


 《初回特典情報》

 死後、魂が抜け出た際、滅多に発生しないはずの高次元嵐に巻き込まれ、三級下位世界から一級下位世界に弾き跳ばされた。

 転生した器の加護契約の発動により、カガリス神の加護を受ける。しかし、カガリス神が休眠期前だったためなのか、または転生者特典なのか、少しばかりバグっている。




 なんじゃ、コリャ?


 カガリス様、寝落ち寸前なの!?一応、転生者特典あったの!?

 しかも多才スキルって、ナニ!?本人に秘匿って、おかしくね?オマケに、最後のその他って、手抜き記載過ぎへん!?

 そんでもって、異世界転生した経緯のあっさり記述よ!高次元嵐って、何やねん!?


 ⋯⋯アカン。情報過多だ。クラクラする。知恵熱かも。

 オレっちは、二度寝した。




 クンクン。味噌汁の匂いがする。しかも、オレっちの大好きなじゃがいもと落とし卵入りの赤だしだ。

 「もう、夕御飯の時間なんだ⋯⋯」

 ぐう〜と、お腹が鳴る。

 空腹感から無意識に、フラフラとダイニングへと向かった。


 「どうしたの、タロス?眠いの?」

 「ううん。いっぱい寝ちゃったから、逆に頭がボーっとしちゃって⋯⋯」

 「そう?」

 かーちゃんはオレっちを心配しながら、料理を再開した。

 だんだん頭がはっきりしてくると、あのステータス画面を思い出す。

 ⋯⋯バグってるスキルか。そもそもチート能力って、バグってるから無双なんだよな。そう考えると、転生あるあるの王道やん。結果オーライ。オレっちの未来は明るい。⋯多分。


 「やっぱり変よ。なんだか元気がないみたいだし⋯⋯」

 かーちゃん、鋭い。

 「え~と。その、ステータ⋯じゃなく──そう、能力判定が、ちょっと不安で」

 これは本当。あのステータス画面を獣神殿の神官に見られたら、いろんな意味でヤバい。


 「あのさ、かーちゃん。能力判定って、どんな風にやるの?」

 話の流れのまま、探りを入れてみる。


 「そうね。各地にある神殿の聖玉は、古き神々の遺した神器が砕けた物で、内包されていた神力が減少してしまったせいで、今は昔ほど詳細には出てこないみたいなのよね」

 おおっ。ってことは、セーフ?

 「だけど、属性とスキルだけは正確に出るの。でも、最初の判定なんて基本のスキルぐらいしか出ないから、数が少なくても気にしなくていいのよ?魔法レベルとスキルの数は、これからの本人の努力次第なんだから」


 ヤベー!正確に出るの!?あのバグってるスキル──ど、ど、どうしよう!?



 その日、オレっちは不安のあまり、ご飯を一杯、好物のエビフライを五本、じゃがいもと落とし卵入り赤だしを二杯しかおかわりできなかった。かーちゃんからは体の不調を心配され、早々にベッドへと寝かされた。


 転生して八年──人生⋯いや、獣生最大のピ──ンチ!






◇◇◇◇◇


 「──ほう。自己治癒と花の壁⋯⋯おや、これは珍しい。魔力増幅はかなりのレアだよ。これだけでも多くの職を選べるね。おめでとう」


 あれ⋯⋯それだけ??オレっち、決死の覚悟でここに来たのよ!?

 「あと、花の防御壁だけど、花の種を買って訓練しなさい。最初は棘のないもので始めるといい。危ないからね」

 オポッサム似の獣人老神官が、オレっちの両頬をポンポンした。困惑しまくったオレっちの心が、一気に落ち着いていく。


 もしかして──あのおかしなステータス表示は、オレっち専用仕様なの⋯?








 ☆ 補足 ☆


 獣神官が聖玉で視た、タロスのステータス


 名前 タロス  加護種名 カリス


 風 LV1 水 LV1 土 LV 1


 確定スキル  自己治癒  他者への魔力増幅

 花の防御壁

 


 幼獣体のスキルとしては平均的なものです。タロスのその他は潜在能力ですが、本人の心や経験から生まれるものなので、今はありません。

 攻撃魔法、防御魔法スキルは、魔法レベルが上がっていないと発生しにくく、ステータスは、数年ごとに鑑定してもらうのが普通です。

 スキルは寿命間近でも発生する事があり、最後の最期でチートスキルを持った人も実際にいました。そのうちの一人は、死後、魔法公(大魔導師もしくは特級国家魔導師)の称号を贈られています。

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