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第二十五話 誕生日。ハイテクかアナログか

 冬一番の寒波が続くこの時期。オレっちの八歳の誕生日がある。毎年、お屋敷内では幼獣体の子供たちのみだが、食堂でささやかな誕生パーティーが開かれる。

 プレゼントは、かーちゃんは別枠として、個人からではなく、旦那様一家、使用人一同(子供も含む)の二つ。今年は国からも届いた。秋の大祭の参加賞か?

 お屋敷の子供たちにとって他人の誕生日は、ご馳走デイ。オレっちも度々、ご相伴に預かりました!てなワケで、今年も賑やかに行われた誕生日。ケーキの数も料理の種類も多くて、食堂パーティ万歳!


 「タロス〜、これ〜僕からのプレゼント〜」

 「キュ?」

 「タロス〜僕の誕生日の時に〜皆とは別でくれたでしょう〜」

 「ああ、あれは──」


 前世の誕生日では普通だった、親友に対してのお祝い。オレっちは皆のとは別に、エイベルに新しい裁縫道具セットを贈った。それまでエイベルが使っていたものは、使い込まれた共用の裁縫道具だったからだ。


 「だからね〜、僕〜コレ作ってみたんだ〜。気にいるかどうか分からないけど〜⋯」

 手渡されたプレゼントは、白い糸でオレっちの姿が刺繍された空色のスカーフ。

 キリッとした横顔がカッチョええっ!


 「ありがとな、エイベル!大事にするよ!」

 「ん〜、でも〜できれば普段使いにしてもらった方が〜嬉しいかも〜」

 「分かった!寝る時以外は身につけてる!」

 「草臥れた時は〜また新しいの贈るね〜」


 エイベル──我が癒しの友よ!!



 「タロス。これは母さんからの今年のプレゼントよ」

 食堂から家へと戻り、居間のソファでうたた寝していたオレっちに、仕事から帰ってきたかーちゃんが、プレゼントを渡してくれた。

 「どう?タロスを刺繍してみたの」


 ミントグリーンの新しいベストの左胸元に入れられた、白いワンポイント模様のオレっちの顔。

 頬袋がプリティ⋯じゃなく、大き過ぎる。代わりに目と鼻が縮小され、頭の蕾は緑の点になり、まるでク◯リンの頭──は、ともかく、今回のはセンス云々よりも、かーちゃんの視力低下を疑う仕上がりだ。


 「うん⋯⋯一応、オレかな?」

 「そう?そっくりだと思うけど?」

 かーちゃんの目から見たオレっちって、こうなのっ!?






 ◇◇◇◇◇


 夜も更け、ベッドに寝転がった瞬間、ふと思い出した。

 あ。国からのプレゼント!開けるの、忘れてたわ!


 「──写真だ!」

 国から送られてきた郵便物には、秋の大祭の衣装を着たオレっちの姿、魔笏を振る舞のシーンが写された写真が、二枚入っていた。


 ビスケス・モビルケ──いや、この世界、写真や映画、果ては立体映像なんかもあるにはあるんだが、その全てに規制が掛かっている。国からの許可がないと、そうした魔法技術は、使ってはいけないのだ。


 これは統一国時代からの継承で、前世の電子レンジに似た、物を温める魔導器、冷蔵庫のように物を冷やす魔導器などが一般化している一方、映像などの魔導器は国からの許可が必要で、しかも大量生産していない物だから、めっちゃお高い。


 写真に関しても然り。写真魔導器の購入には印章魔法登録が必要だし、何よりコレも、金額設定がおかしいのだ。はっきり言って、ベルビーのゼロの数がバグってる。

 しかし、それは魔法映像──写真を含める全ての映像()()()にかかる規制であって、視覚転写スキルの転写⋯⋯ほぼ写真なのだが、それに関しては規制が緩い。

 視覚転写スキルとは、実際に見たものをそのまま写し出す能力のことだ。


 オレっちも年に何回かは、かーちゃんやエイベルとのツーショットを、この視覚転写スキル持ちに転写してもらっている。

 魔導器による写真と大きく異なるのは、壁であろうと床であろうと──よーするに何にでも写し出されることと、メインである人物以外の周りの風景がボヤケてしまうことだ。

 これは視覚転写スキル持ちの集中力の問題で、意識がメインに集中し、その周囲までは正確に転写できていないのだ。あと、スキルレベルによって白黒とカラーの違いも出てしまう。


 当然、それによって料金も違ってくるから、このスキルで商売をする者は、とにかく転写しまくってレベルを上げ、最終的には、視界に入る全ての転写、画素数の増加(?)による鮮明なオールカラー、サイズの自在調整まで可能になるという。

 ここまでくると、高額な魔導器を購入する必要もなく、新聞社も彼らを雇うことが多い。⋯⋯実のところ、昔からいる彼らの職を守るために魔導器の規制があるのかもしれないと、オレっちは思っている。ま、それだけじゃないかもしれないけどね。


 「カラーで周りも鮮明──だけど魔素金属紙だから、視覚転写スキルの転写真だな」


 魔素金属紙とは言葉通り、紙のように薄〜く伸ばした魔素金属で、これに転写すると半永久的に保つと言われている。

 理由はあるんだろうけど、技術はあるのにあえて広めない──人々もまた、昔からそういうものだと思っているから、抗議しない。オレっちは前世の記憶があるから『それぐらいいいじゃん!便利で皆が使える方を優先しようよ!』とか思っちゃうけど、この世界、そう思う者の方がおかしいのかもしれない。

 ハイテクなのにアナログ──これは、他の物にも言える事だが、それは追々。


 「キュ?これは──」


 二枚かと思ったら、一枚にくっついてもう一枚あった──賢者様の転写真だ!

 なぜか、目を瞑っているお姿。⋯⋯いや、コレって居眠りこいてるとこだろ、絶対。

 ん、待てよ。賢者様の写真って、かなりレアだよな。でもって、亡くなられたら、もっと──よし、大事にとっておこう。そう⋯⋯いつか、大金に化けるその日まで!





 ☆ 補足 ☆

 

 罰当たりなタロスですが、おそらくその通りになるでしょう。

 賢者の写真は珍しいです。肖像画などは山のようにありますが、動く映像と写真は、国家の財産として管理されているので、市井には出回りません。転写真も、賢者に関しては規制がかかります。

 今回は、映像編集部さんのうっかりミスです。しかし、売るにしても、正規ルートではなく闇ルートになるので、あまりお勧めできません。

 

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