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第二話 カリスってなんぞや?

 鏡に映されたオレっちの姿は、なかなかのモンである。

 かーちゃんとおそろいの、真っ白い毛。かーちゃんみたいな紫色の瞳ではないが、白目の少ない金の輪に縁取られた大きな黒い瞳。少しばかり内側に折り目のついているラブリーな両耳。

 そして、愛らしい丸みのあるフォルムに、これまたお洒落な内側にクルンと巻いたボリューミーな尻尾。

 前世のリスに似た姿形ではあるが、まず毛並みが違う。メチャ光沢のあるフワ毛つーか、モフ毛つーか──清潔感と高級感溢れる白い毛。漆黒の瞳には、星のキラメキ的な知性の光。

 だけど、一番の違いは『手』と『足』かな。


 手の甲はモフ毛だけど、手のひらは肉球のあるだけの五本指だし、足だって人間時代と同じく直立歩行だし。

 まあそこんとこは他の種族でも同じなので、やはり獣人⋯『加護種』とは、前世の動物たちとは別物なのだ。






 ◇◇◇◇◇

 

 『加護種は皆、古き神々の眷属である。そして、その姿もまた、それぞれの加護を授けし神の姿を模している』

 フムフム。

 オレっち7歳。

 ある程度この世界の文字を憶えたんで、獣神を祀る神殿で信者用に無料配布している《再創世記》をもらい、速読した。(前世の頃からの普通のスキル)



 ──はるか昔、魔素の濃度が異常なほど濃くなり、この世界の全生命に多大なる影響を及ぼした。

 植物を基本とし人類を頂点とする多種多様な種たちは、巨大化と本能の暴走に歯止めがかからず、やがて人類でさえも理性の希薄さから文明を失った。


 弱い命が強い命に捕食されるだけの弱肉強食時代──それは、後に暗黒期と称され、それ以前に存在していた多くの種は変質していった。

 しかし、暗黒期はわずか数年で終わりを迎える。

 突如現れた数多くの神々が、この世界を救うべく、全ての種に慈悲を与えたもうたからだ。


 ──と、ここからは、オレっちがまだ読めない難しい単語や神々への感謝と称賛がごった煮になっていて正直イラッとしたので、オレっちの言葉で説明することにする。


 つまり、降臨してきた神々は、この下位世界を造り変えたんだな。


 基本的に下位世界つーのは、神々を実体化させるほどの魔素が無くて、せいぜい特定の人の夢の中に出てくるとか声を届けるだとか、その程度の干渉しかできなかったワケ。ところが一時的とはいえ、この世界の魔素が異常に濃くなったことで、神々が実体化・活動できる環境が整ったらしい。

 で、手っ取り早く魔素を制御できる方法である『眷属』を作ったんだな。


 眷属とはなんぞや?

 簡単に言うと、神々の『加護』を授けてもらった下位生命体。その見返りとして、それぞれの神の下僕にならなければならない。


 加護とはなんぞや?

 魔素耐性の器をもらって、神の能力の一部を貸し与えられた状態。オレっちが推測するに、下位世界用の劣化コピー能力ってとこ?


 オレっちたちの祖先、最初の『カリス』は、『カガリス』という獣神の加護を授けてもらって眷属になったらしい。

 加護種別眷属一覧表で確認済。

 カガリス神だからカリスって⋯単純ですな。


 それはそれとして、つまりオレっちたちの祖先は元人間ってこと。それが眷属化することで、カガリス神と同じ(?)姿になっただけ。


 ガワはモフモフ!中身は人間!


 ソレってただの着ぐるみじゃねーか!とツッコミたくなるが、まさにそれ。

 道理で、異加護種間で結婚・出産できる訳だ。

 ちなみに子供は、先祖代々の加護の強い姿の方で産まれるので、加護優先遺伝みたい。オレっちはカリス同士の夫婦の子供だからカリス?

 けど、両親とともに純血のカリスではないから、別の加護種の姿で産まれる可能性もあった。確率としては、半々ってとこ?

 あの浮気親父は、今では希少となったカリスであることに優越感を持っていて、かーちゃんと結婚したのも、カリスの子供狙いだったんだろう。目論見どおり、オレっちはカリスの姿で誕生した。ま、花の数までは理想どおりにはならなかったが。


 ちなみに今のオレっちの頭の茎先には、花の蕾らしきちんまりとした膨らみがある。花冠になるにはあと何年ぐらいかなー?

 色とか大きさとかいろいろ気になるけど、早く咲いてほしいもんですな。

 なぜかって?


 魔法だよ、魔法!


 この際、チートは諦めたとして!(ホントは諦めてナイ)魔法は使いたいし!属性も知りたいし!ステータスも知りたいし!

 そう。魔法が使えるようになると、獣神殿で調べてくれんの、オレっちの未知の才能!

 カリスの能力は、花が咲いてからが本番なのよ!って、かーちゃんも言ってたしね!




 ☆ 補足 ☆


 神々は魔獣となった動物たちには加護を与えず、神力で少しばかり改造するだけに留まりました。これによって凶暴性が薄れた魔獣たちですが、巨体化した姿は変わらず、野生の魔獣は加護種たちに恐れられています。

 しかし、基本的に彼らは山や森のみに生息するようになっていたので、加護種たちが攻撃してきたり、テリトリーに踏み込んでこない限りは襲ってきません。

 さらに時が経つにつれ魔素が薄くなり、小型の魔獣や性質の穏やかな種が増えて、今日のように家畜化できるようになったのです。それでもかつての愛玩動物たちは、この世界には存在しません。魔獣は一部を除いて、今もなお、飼い慣らせない種なのです。

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