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第百四十四話 改造されてる!?

 《モデルにした彼は、ギリエルという私たちとは対立していた側の者でね。もともと仲は良くなかったんだが、少し揉めた時に私の事を『汚い翼持ちめが!』と言いやがったんだ》

 「え〜ッ、そんな〜!僕たちの〜一番のチャームポイントを〜!?」

 《そうだね、エイベル。この皮膜翼こそが私達の特徴だものね。それを汚いなんて、酷いだろ?》

 「ハイ〜!」

 

 チャームポイントはともかく、確かにそこが他のネズミ──いや、他とは一線を画すとこだよな。

 オレっちやカガリス様で例えると、頬袋やこのプリティな尻尾を──いや、花冠かな?ポピタンを汚ねぇ花だと言われたら、そりゃ怒るよ、マジで!


 《そもそも人型の翼持ちは、自分たちが一番だと思い込んでるからな。俺たちの中でも──あー、なんつーか古株って言えばいいのか?少なくとも俺が俺として自我を持つ前からいた連中が多い》

 《何でも早ければいいってもんじゃないけどね。確かにあちら側は自我の確立が早かったかもしれないけれど、それが何なのって話だよ。いちいちケチをつけてくるし!》


 カガリス様とヴァチュラー様の会話からすると、天使型の姿をしている神々は、前世で言うところの老害みたいなもんなのかな?


 「へー、そうなんで⋯⋯って、やべ!!」


 初めはこちらからの攻撃を待っている様子の階層ボスだったが、痺れを切らしたのか、天井から突き出している鍾乳石を操り、上から攻撃してきた。


 「カリス・バリアー!!」


 オレっちとエイベルの頭上を、強固な盾のイメージで覆う。


 ガンッ!!ビシッ!バンッ!!

 鍾乳石はカリス・バリアーに阻まれ、さらには砕けた。


 よし!とりあえず鍾乳石攻撃は防いだ。次は、コチラからの攻撃を──って、エイベル!?


 「え~いッ〜!!」


 エイベルが鍾乳石と鍾乳石の隙間を縫って上空を飛び回り、障害物の無い空間へと抜けると、ヴァチュラー様の黒バットを構えた。そして、階層ボスである天使モドキに襲い掛かる。 


 ドゴンッ!!


 エイベルは躊躇もせず、的確に天使モドキの頭をかち割った!


 ──スゲーなエイベル!!速えし、無慈悲!!

 ヴァチュラー様の戦い方そのものだ!普段の優しさはどこ行ったの!?ってぐらいの、非情な殺り方!!


 「あ〜っ!?」


 バサバサバサッ!

 なんと、天使モドキの頭は、無数の金色のコウモリ魔物へと変化していった。エーッ!?結局、中身はヴァンパイアなの!?


 夥しい金色コウモリ魔物の群れが、エイベルの全身を包み込んだ。


 「エイベル!!」


 あーッ!エイベルがヤバいッ!!

 オレっちは慌てて、階層ボスとエイベルの近くへと向かった。


 「エイベルーッ!!⋯って、アレ?」


 ボッ、ボワッ!

 オレっちの叫び声と同時に、エイベルを覆って固まったコウモリ玉から青い炎が噴き出した。


 ゴォォォオ!!

 青い豪火が、金色コウモリ魔物たちをあっという間に焼き尽くす。


 「ハァ〜!ちょっと〜驚いちゃった〜!」


 エイベルが燃え尽きていくコウモリ玉の中から姿を現した。怪我はないようだ。あの青い炎は、ヴァチュラー様の黒バットから噴き出したものらしい。


 「これって〜やっぱりスゴいね〜!燃えちゃえ〜と思うだけで〜炎が出るんだもん〜!」

 即席で造ったとはいえ、さすがは神器⋯といったところですか。


 《オイ!まだ終わってねーぞ、タロス!》


 ハッ!そうでした!まだ天使モドキの首から下が残ってた!!

 って、頭が無くても、フツーに動いてる!!しかもなんかモゾモゾして──げっ!頭が再生しちゃった!!


 《魔核を狙わなきゃ駄目だよ!》

 ヴァチュラー様のアドバイスが入る。


 「あ、そ、そうだった!」

 「魔核〜どこにあるのかなぁ〜?」

 《教えてもいいけど、それじゃ面白くないしね。探してごらん》


 「そう言われても⋯⋯エイベル!とにかく、どんどん攻撃しよう!」

 「わかった〜!!」

 「小獣一魂!カリス──キュ!?」

 攻撃しようとした途端、足下の地面から先が尖った石筍が無数に出てきた。危ねぇ!直撃したら、股から串刺しやんけ!!


 えーい、宙を跳んで──ヒッ!また、鍾乳石が下りてきた!!


 「イヤーッ〜!!」


 エイベルが、黒バットをものスゴい勢いで振り回し、旋回する。

 神力で作られた光る風が、ゴッと渦を巻いて石筍も鍾乳石も吹き飛ばした。ついでにオレっちも、コロコロと地面に転がった。

 エイベルの殺意の対象外なのに、余波で飛ばされるオレっちって──


 《タロス。オメーも、根性見せろ!》

 「は、ハイ!!」


 態勢を立て直し、階層ボスを見据える。ん?あ!──視える!視えるぞ!!

 一箇所だけピンク色の部分がある!!


 階層ボスの白い六枚の翼のうちの一枚に、薄っすらピンクの部分があったのだ。

 今のオレっちはカガリス様の神の目を持っているので、意識を集中すると、その部分がハッキリと視えた。


 「カリス・アロー!!」


 弓をイメージし、光の矢を放つ!

 正直、小さな標的に正確に撃ち込むなどできないので、大量の光の矢を放った。数撃ちゃ当たる戦法!


 バッ!バサバサバサ!


 「な!?」


 光の矢が届く前に、狙った翼が大量の白いコウモリ魔物に変化し、多方面に分散してしまった。その中にピンク色のコウモリが一匹だけいたが、白い群れの中に紛れ込んで、もうその姿が見えない。

 チクショウ!!


 「タロス〜、僕に任せて〜!!」


 いつの間にか、分散したコウモリ魔物の真上にいたエイベルが、黒バットを構えていた。


 「エイベル!ピンク、ピンクのヤツを狙うんだ!!」

 「わかった〜!!」


 エイベルの瞳も、すでに銀色に変化している。ヴァチュラー様の『目』だ。

 だが、白いコウモリ魔物たちも攻撃に転じてきた。弾丸のように、宙を舞うエイベルに襲いかかる。


 「え~と⋯⋯あ、あそこ〜!」


 エイベルは、弾丸と化した魔物たちを宙で躱しながら、少し離れた場所に突き出していた鍾乳石へと向かった。


 「いた〜!!」

 

 エイベルの声に焦ってのか、鍾乳石の陰からピンク色のコウモリ魔物が一匹、飛び出してきた。だが、エイベルの反応の方が速く、しかも黒バットがグーンと三倍ほどの長さに伸びた。え、如意棒!?

 エイベルが、それを大きく振る。


 カーンッ!!


 クリーンヒットで打たれたピンクのコウモリ魔物は、物凄い勢いで、地面から突き出た大きな石筍に打ちつけられた。その瞬間、白いコウモリ魔物の群れは、全て霧散した。魔核が砕かれたのだ。


 「スゲー、エイベル!階層ボスを倒したよ!!」

 「⋯⋯僕〜、初めて〜魔物を倒したんだ〜!嬉しいな〜!!」


 いや、エイベル。嬉しいのはわかるけど、黒バットは振り回さんといて!怖いっ!


 それにしても、エイベル──レベル0なのに階層ボスを倒したんだ。スゴいな。まあ、神々の遊び場じゃ、経験値は入らんが。


 《タロス。オメーは経験者なのに、いいトコ無しだったな》

 「はい⋯⋯まったくで!」


 って言うか、エイベルがスゴいんだよ。ヴァチュラー様の影響を受け過ぎて、めっさ好戦的になったというか、違う方向に目覚めたというか──もしかして⋯⋯密かに改造されてる!?

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