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第百三十九話 幸せと心配

 《同調神器も必要だけど、身代わり人形も必要だね》

 《俺の手持ちは、一体だけだったからなぁ⋯⋯》


 あー、エイベルもコピー人形いるもんね。ところで、オレっち人形──怪しまれずにいたんだろうか?


 「なぁ、エイベル。オレの身代わり人形、この二日間、変じゃなかった?」

 「変というか〜⋯⋯大人しかったかな〜?授業でも〜あんまり質問してなかったし〜」

 「⋯⋯そうなんだ」

 「でも〜、ちゃんとタロスって感じだったよ〜」

 「うん?オレって感じって?」

 「え~とね〜。声が大きいし〜早歩きだし〜食べるの早いし〜何より元気だし〜」


 ⋯⋯。えっ。それがオレっちっぽいの!?というより、エイベルから見た普段のオレっちなの!?

 なんかアホの子みたいな⋯⋯いや、エイベルのことだからポジティブな意味で言ったんだろうけど!


 《後でコピー人形の記憶を見たらいいだろ》

 『今見たらダメなんですか?』

 《今は、ヴァチュと打ち合わせ中だ。とりあえず、ここのダンジョンと──ウルドラのダンジョンに行くつもりだが》


 「キュ!?ウルドラのダンジョン!?」

 思わず、大声で反応しちゃうオレっち。


 「ウルドラの〜ダンジョンって〜⋯⋯白の賢者様の〜聖宮近くだったよね〜?」


 そーいえばそうだっけ?確か、中央ダンジョンって呼ばれてる場所だよな。海の呪いで他の国には行けない竜人冒険者たちが、唯一入れるダンジョンだったハズ。


 《私は昔、あそこの遊び場に眷属用のアイテムを数多く遺したんだ。私の眷属たちは、私のアイデアで造った階層が大好きでね。遊び場の二階という浅い階層だし、挑戦する者が多かったんだよ》


 ヴァチュラー様の眷属──エイベルや執事さんのご先祖様か。ほう⋯⋯チュラーたちが好む階層とな。──ん?


 『カガリス様は、自分のアイデアとかは出されなかったんですか?』

 《出したぜ。でもなぁ⋯⋯造った階層が深すぎて、眷属達だけじゃ攻略できなかったからな。一度だけ初期のメンバーを連れて行ってやったが、二度と行きたくねぇと言われてな》


 どんだけヒドイ難易度だったんだ。

 初期メンバーって、カリスの第一世代か。加護種としてはかなり強かっただろうけど、神々の遊び場の深層は、さすがに無理だったか。


 《とりあえず、ここのダンジョンで遺物を回収しよう。コピー人形は、ダンジョンの魔物用の囮として人気があったから、きっと沢山残ってるよ》

 『魔物用の囮?』


 あのコピー人形、元はそのための物だったのか。


 《分身は、並列思考が面倒だからなー。その点、あの人形は自立型だし、自爆もできたから便利だったんだよ》

 某忍者の◯分身の術みたいだな。カガリス様の◯分身⋯⋯見たいような見たくないような。

 花だらけのリスが何十体もいたら、圧巻だろうなぁ。別の意味で。


 《とにかく!行くぞ!!》

 《そうだね。人形はともかく、同調神器は絶対に手に入れないと。カガリンの万能薬も負荷の根本的な解決にはならないしね。行こう!》


 『あ!ちょいとお待ちを!!出掛けるのは夜にしておくんなせぇ!これから夕飯だし、エイベルがいないと、執事さんが心配しますから!』

 「うん〜。ジイジには〜心配掛けたくないので〜、お願いします〜!!」


 《⋯⋯仕方ないね。人間の家族は、子供がいないと騒ぎだすから》

 《特に、タロスの母親は大騒ぎするだろうな》

 『そりゃあ、オレもエイベルも身内は一人だけだし、急にいなくなったら驚きますよ!』

 「そうだね〜⋯⋯僕たちは〜他に誰もいないから〜⋯⋯」


 ⋯⋯。そうだな。かーちゃんにもしものことがあったら、オレっちは天涯孤独──あのカモは財布にしか使えんから、精神的にキッツイいだろうなぁ。

 エイベルだって、父親不明で母親だって所在がわからないから、そういう意味ではオレっちよりも大変だ。


 ハッ!なんかネガティブになっちゃった!!


 その時、ガチャっと扉が開く音がした。かーちゃんだ!


 「ただいま〜。⋯⋯あら、エイベル君と遊んでたの?でも、そろそろ夕飯の時間よ?」

 学校に通いだしてから平日にエイベルが遊びに来ることがほぼ無かったせいか、かーちゃんは、少し驚いた表情をしていた。


 「お邪魔してます〜。じゃあ、タロス〜。僕〜今から食堂に行くね〜!」

 「あ、ああ!」


 《ヴァチュ、また後でな!》

 《そうだね。カガリン、できれば君の方から転移してくれるかい?出来るだけこの子に負荷をかけたくないんだ》

 《わかった!》


 「ねぇ、タロス。私たちも食道で食べましょうか。今から夕飯を作るのは面倒だし⋯⋯たまには楽したいわー」

 この中でただ一人、神々の声が聴こえないかーちゃんが、呑気にそう言った。


 「うん!オレも、エイベルと食べたい!」

 「最近は〜土日のお昼か〜夏休みだけだったもんね〜」

 「さあ、行きましょうか!」


 あの朝からの緊迫したドタバタとは真逆の、この平和。幸せだな〜。

 ⋯⋯パールアリアの闇組織に売られそうだったあの子たち──無事に獣神殿へと送られただろうか?

 ダンガリオもカガリス様の下僕になったとはいえ、少しは楽しく生きてくれるといいけど。






 ☆ 補足 ☆


 保護された子供たちは、ネーヴァにいる商人たちを通じて、ビスケス・モビルケの獣神殿に移されることになりました。

 親がいる子供は、後日、手続きが済み次第、親元に帰されます。保護してくれる肉親がいない子供は、保護施設へと入り、獣学校へと通うことになります。


 ダンガリオは、従属神印により、カガリスがネーヴァへと転移する際の座標でもあり、彼の目を通して彼の国を視ることもできます。

 ほぼアイテム扱いされているダンガリオですが、逆に言えば、彼の危機の時には、カガリスが対処できるということです。



 また、タロス人形は、9割方タロスですが、1割は機械的なシステムっぽい部分なので、時折、効率の良い行動をとる時があります。タロスはタロスでも、優等生なタロスというわけです。

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