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第百三十一話 マジカルな頬袋

これから先、ややシリアスになります。しかし、タロス視点や一部の神々視点だとあまり変わらない⋯と思います。他者視点も多くなるかもしれません。文章がちょっと難しくなるので(シリアスは苦手)、更新は当分、火曜日と金曜日のみの予定です。どうか、最後までよろしくお願い致します!!

 春の大祭が間近となった頃──ビスケス・モビルケ最後の賢者──ビルビーレ・アウル様が亡くなった。




 「小獣国の賢者様がお亡くなりになられたらしいな。この国の半神血族はもう御一人だけしかいなかったから、お前たちもショックだろう」

 「寮じゃ、大騒ぎだったよ〜!」

 教室に入ると、メロスとボビンの二人が、オレっちとエイベルを待ち構えていた。


 「ああ、うん⋯。お屋敷も大騒ぎで──なぁ、エイベル」

 「うん〜。夜になってからの〜緊急放送だったから〜余計にね〜」


 そもそも、お屋敷内の放送は業務的なものがほとんどなので朝か昼間しか流れてこないのに、昨晩の放送は、その時間帯と内容に驚愕したものだ。


 ちょうどその時、風呂上がりのブラッシングタイムだったオレっちは、驚きのあまり手からブラシがスッポ抜けた。

 確かに、いつ亡くなられてもおかしくはなかったが、事前に危篤の情報が無かったらものだから油断していたのだ。





 訃報を受け、今年の春の大祭は、急遽中止となった。──というよりも、これから一年間は喪に服することになるから、秋の大祭も開催されない。


 「⋯⋯なんだか寂しいわね。仕方ないけど」

 セーラがため息を吐いた。

 「この分じゃ、年末イベントも──いや、国中のイベントが中止だろうな」

 イベント関連の関係者たちの悲鳴が聴こえてきそうだが、ビスケス・モビルケ最後の賢者様の死だけに、関係者は愚痴さえこぼせないだろう。


 最後の──そう、加護種の国々の中で、初めて神の血が喪われた国となってしまったのだ。


 《あんな薄っすい血の加護種一匹で、大袈裟な⋯⋯》

 一匹って⋯⋯ヒドイっ!


 『賢者様は、小獣人たちの心の支えであり、皆を束ねる大神官様だったんです!いくらカガリス様でも、失礼ですよ!!』

 《フン!どっちが!オメー、俺は神だぞ?》

 『実績ですよ、実績!カガリス様はいわば過去の支配神であって、現在では実績ゼロでしょう!?賢者様は、なが~い間、小獣国のトップで導き手だったんですっ!』

 《過去の神⋯⋯実績ゼロ??》

 あっ──言い過ぎた!


 『え~と、その──とにかく、オレたちにはショックなことなので⋯⋯その』

 《まぁ、それはもういい。それより、旅に出るぞ。人間の国へ向かう!》


 !?いきなり、なんですと!?


 『第5レベルクラスの卒業までは待ってくれって、言ったじゃないですか!?』

 《そのつもりだったが──あのネーヴァという国はどこかおかしいし、探る価値はある。それはつまり、あの御方がいる可能性が高いって事だ!》

 ニーブさんが⋯?いや、でも!


 『時期的に夏休みでもないし、無理ですよ!オレに休学しろと!?』

 一応、一年以上は第4で学んだから休学できない訳でもないが、かーちゃんやエイベルたちに、どう言えと!?


 《そこは心配すんな!遊び場から回収したアイテムの中にいいもんが残ってたんだ!》

 キュ⋯?いいもの!?


 《自律型の身代わり人形──コレに、オメーの情報を入れて、オメーの代わりにするんだ。少しばかり情緒──感情面の表現が不安定だが、時々戻って入れ代わればわからんだろう》

 つまり、自律型のコピー人形か。


 『え~と、時々でもコッチに戻ってこれると?』

 《ああ、そうだ。アイテムを一つ一つ確認してたら、その中に、俺たちの『眼』のコピーがあったからな。コレを宇宙(そら)へ打ち上げ、座標を決める。ただ⋯⋯劣化版だけに範囲が狭いから、移動する度に目の位置を変えねーとならねぇが》


 なんだかカガリス様が、ド◯え◯んのように思えてきた。考えてみればあのネコ型ロボット、神級のチート持ちやんけ。


 『そう言えば⋯⋯どうして古き神々は、宇宙のことを《死の空》なんて言ってたんです?』

 《あー、アレな。ヘタに興味を持たれて俺たちの『眼』の邪魔になるもんを作られたら嫌だから、そうしといた》


 ⋯⋯。めっさ、勝手な理由だった!!

 オゾン層とか、星の環境を護るためとかじゃなかったんだ!幻滅!!






 ◇◇◇◇◇ 


 《よし、これでいい。オメー、そっくりだ!試しに、会話してみろ!》


 獣学校から家へと戻ってきたオレっちの目の前には、オレっちそっくりな白毛のカリスがいた。


 「こ、こんにちは?」

 「こんにちは」

 「あ、あの、オレはタロスです」

 「オレもタロスです」

 「す、好きな食べ物は?」

 「う~ん。いろいろあるけど、最近は天津飯かな?」

 「!!」


 《ククク。なかなかの仕上がりだろ?》

 「これなら、大丈夫かも!?」

 「ドンと任せてくれ!」

 思ってたよりも高性能で、ホッとした。


 《よし、旅支度しろ!明日の朝には旅立つぞ!まあ、最低限の──いや、俺の簡易空間を使わせてやるから、何でも放り込め!》

 簡易空間=魔法鞄(マジックバッグ)だもんな。超便利。


 『じゃあ、このオレっち愛用の鞄と繋げて──』

 お気に入りの空色マイバッグを見る。


 《何を言ってる?お前には──カリスには()()()袋があるだろうが!》

 自前の⋯⋯袋?いやいや、カンガルー獣人じゃあるまいし⋯⋯えッ、もしかして──


 『頬袋⋯!?』

 

 《オメーの先祖たちも、そうやって口から出し入れをしてたもんだ。最強のセキュリティってヤツだな!》

 そりゃ、盗まれる心配は無いでしょうケド、マジで!?頬袋ですよ!?


 『試しに、そこのベッドを収納してみろ。口を大きく開けて、空間に放り込むイメージを強くするんだ』

 『は、ハイ⋯!』


 オレっちは、口をパカッと開けてベッドに近づけた。

 イメージ!空間に放り込むイメージ!!


 ベッドが目の前から消えた。消える瞬間も見えないほどの速さ。もちろん、口の中に入った感覚もないのだが──


 《よし、俺の簡易空間に入った。次は、出してみろ》

 『ハイ!』

 出すイメージ──引っ張り出して、ここに置く!

 ベッドは、元の位置に戻っていた。成功だ!


 《よしよし、これからも上手く使いこなせよ!》

 『ハイっ!!』


 まさか頬袋が魔法鞄代わりになるとは⋯⋯考えもしなかった。さすがはファンタジーな世界!これまた、何でもありですな!!






 ☆ カガリス視点 ☆


 マヌケめ⋯!まんまと騙されやがって!!

 過去の下僕たちの誰一人、頬袋を簡易空間に繋げた者などいないというのに。


 タロスのヤツ、よくも過去の神だとか実績が無いなどと、扱き下ろしてくれたな!許せん!

 しかし、ちょっとやり過ぎたかな。今さら冗談だったとも言いにくい。

 ⋯⋯もう、このままでいいか。


 遊び場で回収したアイテムは、眷属用のオモチャみてーな品ばかりだが、中には使える物もあった。タロス人形も『眼』のコピーも──これは、他の遊び場に遺した物も回収した方が良さそうだな。 


 タロスと交代できる時間は短けぇが、そこは臨機応変にするしかねぇ。

 ──しかし、本体ではなくタロスの体だと、本当に神力の出力が弱えぇ。万が一の時の事を考えると、逃げの一手になるかもな。⋯⋯ハァ。

次回は、火曜日更新です。

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