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第百二十三話 野良の子やないで!

 《一つ言い忘れたが、俺たちの遊び場は、経験値なんて入らないからな》

 『⋯⋯知ってます』


 だって、ダンジョンを出る前にコソッとステータス確認した時、レベル1のままだったもん。

 考えてみたら、神専用であって人間仕様じゃないから当たり前なんだよね。オレっちたちのご先祖様は、好奇心と神器目当てに入っとっただけなんだろう。あと、神への忖度と。


 『そもそも、借り物能力でレベルが上がっても、嬉しくないですし』

 《ほう。ヘタレなりに、いっぱしのプライドがあるんだな!》

 『⋯⋯』

 ムカつく。己の下僕だと思って、言いたい放題。

 真に上に立つ者なら、配慮というものを持ち合わせるべきだと思うが。


 《配慮ねぇ⋯⋯オメーも、俺に対して言いたい放題言ってる気もするがな。それに最近じゃ、俺に聴かれてるって解ってて言ってるだろ?》

 『⋯⋯でしたっけ?』

 感情部分が大きく揺れると、内側の声も大きくなるらしい。ヤベー。


 《オメー、昔だったら、カリスのコミニュティーで村八分にされてるとこだぞ?》

 『そ、そんなに陰湿なコミニュティーだったんですか!?』

 昔のカリスって、ヤバくない!?集団でイジメをするモフなんて、モフじゃないよ!


 《モフは関係ねえだろう⋯⋯それに、元は人間なんだから》

 それもそうですな。


 《ま、だからって過剰に崇める必要もねぇが──それより、残りの夏休みとやらは好きにさせてもらうぞ!》

 『ハハァ〜、我が神の仰せのままに〜!』

 《うむ!》


 仕方ない。オレっちの予定が無い期間は、カガリス様に体の所有権を渡すことを約束してたんだから。

 こうしてある程度好きにさせとかないと、本当に体を乗っ取られるかもしれないしね。それに、ライブルのアニキの宝箱の件で借りもあるし。

 この先も『困った時の神頼み!』をする可能性も高いしなぁ。

 ギブ・アンド・テイクってやつですな!





 ◇◇◇◇◇


 「タロス〜、ずいぶん〜痩せたね〜。夏バテした〜?」

 夏休み明けの初日、獣学校へと向かう魔牛車の中で、エイベルがそう言った。

 去年までの夏休み明けは、どちらかというと増量──もとい、ぽっちゃりになっとったから、エイベルが心配するのは無理もない。


 「大丈夫。ちょっとハードに動きまわってたから、痩せただけさ!」

 

 そう。あれからカガリス様は、精力的に移動しまくった。

 遠くの座標設定ができなくとも視界に入る範囲ならば自由に転移できたから、ビスケス・モビルケ内を短距離で跳びまくっていた。

 オレっちはそれを、カガリス様の内側からお茶の間感覚で眺めていた。


 しかし、ただボ〜ッと見ていたワケではない。この世界で非常識なことを平気でするカガリス様を制御⋯というか、なだめつつ前向きに誘導してたというか──とにかく、あれやこれやとサポートしていたのだ。

 そして気づけば、カガリス様に憑依されていた肉体も、めっちゃスリムになっていた──というワケ。


 《なにも、オメーをダイエットさせるために動いてたわけじゃねぇんだが?》

 『まあ、まあ。小獣国内を見てまわった結果だということで──』


 実際、海辺だとか魔獣の生息地まで見に行ったのだ。今世では初めての海だったから、物凄く興奮した。特に、浜辺!

 季節は夏だし、海水浴しましょうよ!と、カガリス様にお願いしたのだが、『潮の香りがキツい!それに、俺は、毛がベタベタになる海は好かん!』と、にべも無く断られてしまった。


 あ~っ!体毛のこと、忘れてた!!

 ツルツル肌の時も全身がベタベタになって、磯臭かったっけ!毛だらけの体の今世だと、極限までサマーカットしてからでないと、えらいことになるところだった!!

 まあ、今後、自分で海に行く時はそうしよう。それより──



 『そもそも、上空から見るだけで人捜しができるもんですかね?』

 《言っておくが、ただ見てたわけじゃねーぞ?神力で探ってたんだ。それで見つからないってことは、確実にいらっしゃらないということで──そうなると、別の国に行く必要があるな》

 『だからそれは、第5レベル卒業後で!それに、今回だって、かーちゃ⋯母に、かなり怪しまれているんですから!』


 それはそうだろう。いつもの如く大食いしているハズのオレっちの体は痩せていくし、毎日、外に出ては日暮れ直前まで帰ってこないんだから。

 それに、夏休みだというのにエイベルと遊んでなかったことが、かーちゃんにとっては一番の不安要素だったらしい。


 オレっちとエイベルは、去年までの旅行でもそうだったが、ほぼニコイチ。休日のお屋敷内でも、かなりの頻度で一緒にいた。

 ところが今年の夏休みは、前半こそ頻繁に遊んでいたが、後半はほぼ食堂での会話のみ。

 幸い今年のエイベルは、服飾学科の年末のイベント用の商品を大量に作るノルマがあったから、それを理由に、なんとかかーちゃんには納得してもらったが──


 《ちっ⋯めんどくせーな!》


 正直、オレっちも、かーちゃんにだけはカガリス様のことを話した方がいいのではないかと思ったのだ。

 でも、それだと極端な話、オレっち=カガリス様→配慮した扱い⋯⋯になりかねず、親子としてそれはどうよということになるので、ヤメた。

 それぐらいなら、不良化したと思われる方が遥かにマシである。






 ◇◇◇◇◇ 


 「えっ、アニキのお店、改装するんですか!?」

 「ああ。実はダンジョンで宝箱を見つけてな。前から店の老朽化が気になっとったから、内装だけでもキレイにしようと思ったンだ」


 あの石ころ──じゃなく、宝石、そこそこの値段で売れたんだ。見かけ倒しのクズ石じゃなくて本当によかった!


 『でも⋯⋯そんなに古い感じはしなかったですケド?』

 「オフクロやバッちゃんが丁寧に掃除しとるかンな。でもよ。よく見ると床も壁もヒビが入っとるし、厨房内の調理魔導器も古いタイプだから、燃費が悪くてな」

 なるほど。


 「え~っ、ライブルさん、ダンジョンで宝箱を見つけたんですか!?」

 アニキとオレっちの会話が、近くにいたボビンに聞こえていたらしい。ヤケに興奮したボビンの声はデカく、クラス中に響いた。


 「宝箱!?」

 「ダンジョンで見つけたの!?」

 「中身は何!?」


 まだポラリス・スタージャーから戻っていないメロスと、多分、夏休みが終わったことに気づいていないアランを除いたクラスメートたちが、ワラワラとアニキを取り囲んだ。


 オレっちたちが進級する前は、クラスの皆から浮いていた──というか、少し怖がられていたアニキだが、オレっちたちと会話することが多かったせいか、夏休み前には普通に話し掛けられるまでになっていた。

 だからだろうか。宝箱だけでなく、ダンジョンに関しての質問も多かった。特に男子は、一度は挑戦してみたい職である冒険者のアレコレを熱心に聞いていた。反対に女子は、宝箱の中身が宝石だったことに目を輝かせていた。女って⋯⋯なんだかな。






 ◇◇◇◇◇


 「た、タロス!アンタ──なんで痩せてるの!?お腹でもくだしたの!?ハッ!まさか──お腹の中に、寄生虫が!?」


 ダンス学科にて、お久しぶりの──髪が元の長さに戻ってたミンフェア先輩が、失礼極まりない暴言を吐いてきた。

 オレっちは、野良の子やないで!?(怒)

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