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第百二十二話 宝箱

 《そりゃ、前世のオメーんとこの娯楽なんざ把握済みだからな。()()()()()()戦い方だろう?》


 ⋯⋯。確かに。


 《ま、眷属たちは掛け声だけで、技名なんてつけてなかったけどな!》

 戦闘が終わり、砕けた水晶の瓦礫の中、カガリス様はもげた水晶ゴリラの首にもたれ掛かりながら、そう言った。

 まだ見えてる風景が、カガリス様視点と第三者的視点の二つのままなので、変な感じだ。


 『カガリス様。さっきのアレって、ホントにご先祖様たちの技なんですか?』

 《威力は違うが、やり方は同じだ。体術と魔法の組み合わせが多かったからな。特に尻尾は、硬質化と魔法で武器化することが普通だった》

 『武器化が普通?』

 《まさかオメー⋯⋯そっち方向は、まったく考えてなかったのか?》


 ギクッ!!

 だって⋯⋯クルンと丸まったモフ尻尾だから、武器ってイメージが無かったんだよ。もっと長くて硬そうだったらそう思えたかもしれないケド、もっふりだからクッション程度の盾ぐらいにしか思ってなかった。


 《安定のヘタレ思考だな。まー、オメーは、まだガキだし、体毛操作なんてできねぇか》

 『あの~⋯⋯コツとかを教えていただけると、ありがたいのですが⋯⋯』

 《知らん。コツも何も⋯考えんでもできるからな》

 『ですよね⋯⋯』

 カガリス様に訊いたオレっちがバカでした。


 《ふむ。じゃあ、お前の意識の方で戦ってみるか?俺がサポートしてやる!》

 『へ⋯?』

 《おっ、次が来たな。ホレ、やってみろ!》

 「ヒッ!!」


 自分の五感が戻った途端、巨大な水晶の牛魔物が突っ込んできた。

 《跳べ!!》

 カガリス様の言葉に、体が反射的に反応する。


 ターン!


 物凄い勢いで、真上へと跳躍した。あれれ?オレっちって、こんなに高く跳べたっけ!?

 軽〜く、牛魔物の頭上を超えてるんだけど?100メートル以上、跳んだ!?


 《オメーの体は、さっきまでの俺用の体だ。数分ぐれーだが、俺の疑似能力が発動したままになってる。体術でも魔法でもいい──強くイメージしろ!》


 そうか。体が軽く感じるのは、カガリス様の神力サポートがある体だからなんだ。よーし、なんかワクワクしてきた。借り物とはいえ、今のオレっち、チートだもんね!

 ここは、前世の厨二パワーで──


 「もふパワー全開!小獣拳ッ!!」

 硬く、強く──岩をも砕く、アクションマンガの定番攻撃だっ!!


 水晶の牛魔物の額のど真ん中に、拳を当てる。自分でも解る──このパンチ、ハンパなく重い!!


 ビシビシとヒビが入り、パァンと牛魔物の水晶頭部が砕けた。


 やった!スゴいぞ、オレっち!──借り物能力だけど!

 《次が来たぞ!数が多い。魔法を使え!》

 今度は、水晶の獅子魔物の集団だ。興奮しているしているせいか、まったく怖くない。我ながら単純。


 「小獣パワー全開!──カリス・メテオ!!」


 キラキラと光る炎の塊を、地上に向けて放った──





 《⋯⋯なんつーか、さすがの妄想パワーだな。ある意味、俺を超えてるかもしれん》


 『ですよね〜!オレも、今考えると、ちょっと恥ずかしいです⋯⋯ハイ』

 あ~、思いっきりマンガキャラになりきったというか、借り物パワーで恥ずかしげもなくノリまくったというか⋯⋯


 でも、イメージするには一番の見本だったんだよ。努力、根性、勝利の少年誌系キャラ!


 《さて、俺も目当ての物は回収できたし、帰るとするか!》

 『えっ!?宝箱なんか開けてないですよ!?』

 《あ~、もともと、この階層の簡易空間からランダムに出す仕組みだったから、ここの空間から俺の簡易空間に移した》

 宝箱までチート仕様なんですね。宝箱⋯宝箱──あっ!?そうだ!宝箱と言ったら!!


 『か、カガリス様!宝箱をアニキに──ライブルのアニキにあげて下さい!!』


 お店がなんとかなったといってもまだ不安定だし、少しは経済的な余裕をもたせてあげたい!それに、今はアニキがダンジョン内にいるから絶好のチャンスだ!


 《ああ。そーいう話もあったな。別れてからたいした時間も経ってねーから、まだ旧ダンジョンの5階層だろう。だが、あそこはゴミみてーな宝箱しか出ねーハズだから、中身はコッチで用意した方が──そうだ。あの階で取ればいいか!》

 『⋯⋯取る?何をですか?』

 《この遊び場の8階層だよ。あの階層は、石ころさえ宝石でできてるんだ》

 ゴージャス──!!一体、どこの天国!?


 《まあ、魔素と神力の無駄遣いだと一部からの評判はあまり良くなかったが⋯⋯実際、俺もそう思ったしな。魔物も宝石で出来てるから、目がチカチカしたし》

 『どなたが発案者だったんです?』

 『光り物好きなカラシスだよ。最初は金にしようとしたんだが、別のダンジョンに似たようなのがあってな。だから、宝石にしたんだ』


 カラシス様──どこの加護種の神様だっけ?ま、それはいいか。

 それより、黄金だらけのダンジョン──確か、どこかのダンジョンに、魔素金属だらけの階層があるんだっけ。

 しかも、魔物はゴーレムのみだったハズ。ゴッドゴーレム及び脇役ゴーレムの生誕地設定だったから、一度は行ってみたいと思っとるんだが。


 《まあ、そこの石ころを詰めて宝箱として置いておけばいいだろう──行くぞ!》






 ◇◇◇◇◇ 


 オレっちは知った。宝石とは、量が多すぎると美しいと感じるよりも色彩の暴力──つまり、チカチカ、キラキラし過ぎて目が痛いんだな、っと。


 レンタルした剣でその辺の木の枝を斬ってみる。硬い。さすがは宝石──斬れんわ。この枝、翡翠⋯なのか?

 花は、アメジスト、ルビー、サファイア、その他いろいろ──花芯は真珠?岩なんて、オキニスとダイヤモンドなんですケド!


 《ここの宝石魔物は厄介だ。サッサと詰め込んで、退散するぞ!》

 『イエッサー!』

 カガリス様が複製した宝箱に、適当に宝石を放り込む。主に、地面の石ころ宝石だけど。


 そして、めちゃくちゃ派手な宝石魔物の姿が見えた時、カガリス様は再び転移した。






 ◇◇◇◇◇


 《さて、オメーのアニキとやらは──おっ、いたな!》

 ライブルのアニキは、5階層の魔物を簡単に蹴散らし、ズンズンと青い光を目指していた。

 あの下にある休息所に向かっているのだろう。どんなに魔物が弱くても、ダンジョン内は危険なのだ。長時間安心して体を休める場所といったら、そこしかない。

 しかも、アニキはソロだ。余計にリスクは高い。ただし、宝箱を見つけた場合は独り占めすることができる。


 《よし、アイツの行く道を予測して──あそこに置いて置くか!》

 カガリス様は、アニキが通るであろう道の岩の下に、宝箱を置いた。


 よし、これでOK!⋯とか思ってたら、なんと宝箱の上に、超デカいカタツムリみたいな魔物がヒョイと乗ってきた。


 『あ、このヤロー!降りろ!!⋯って、オマエ、何すんの!?』

 

 上に乗ったカタツムリ魔物の体が液体のように溶け、宝箱を覆ったのだ。これは──宝箱の略奪!?魔物のクセに!!


 『カガリス様!アイツに天罰を喰らわせて下さい!!』

 《天罰って⋯⋯お?》


 カタツムリ魔物が、宝箱から離れた。ライブルのアニキを察知して襲いかかったのだ。

 そして、呆気なく殻を毛針で壊され、魔核を破壊されていた。


 ザマァみろ!──って、アニキ、通り過ぎたらアカンやんけ!!


 アニキは宝箱に気づかず、ササッと通り過ぎてしまう。


 《ええい!めんどくせー!!》

 カガリス様は宝箱を浮かせると、アニキに向かって放り投げた。

 雑過ぎる!!


 だが、そこはアニキ──背の毛針が、カーンと宝箱を弾いた。


 「なんだぁ!?」


 そりゃ驚くだろう。宝箱が背後から飛んできたんだから。

 「た、宝箱!?」

 宝箱を見たアニキが、恐ろしく素早い動きで、蓋を開ける。

 ミミックだったらどうすんの!?⋯などと思うなかれ。アニキには、簡易識別スキルがあるのだ。なんでも、黒く見えたなら魔物、白く見えたら無機物⋯のたった二種類だけだそうだが。でも、それで十分だと思う。


 「宝石!!しかも、こんなに⋯⋯!」

 アニキの声が震えていた。おそらく、極限まで歓喜しているのだろう。

 でも、その宝石──道端の石ころなんですよ。しかも、急いでたから適当に入れて、どれが価値のある宝石なのかも一切考えず⋯⋯大丈夫かな?




 


 ふぅ。予想外なことが続いて焦ったが、なんとかなった。

 しかし、神々の遊び場って、つくづくぶっ飛んでるよな。確かに旧ダンジョンよりもはるかに大金を得られるだろうけど、生還率がゼロどころかマイナスだから、意味ないし。


 ところで──カガリス様の回収したアイテムって、一体何だったんだろう?

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