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第百十三話 美食家モフ

 「いや、美味かった!ホントに美味かった!」


 天津飯をベタ褒めしているのは、転写真器を持っているアイフさんだ。自称、食通のアイフさんは、ウォンバットに似た小獣人だった。

 食いしん坊だとは聞いていたが、確かに予想通りの、デ⋯いや、ぽっちゃり体型の人だった。

 しかも、藍色の毛艶がとってもツヤツヤしている。日頃からいいもん食ってるからだろうか?


 「いつもは魔導回路の話しかしないメロス君が、まさか創作料理の店を紹介してくれるとはね!」


 メロス⋯⋯専門学科でも我が道を行く授業態度なんだ。いや、生徒が全員、魔導器オタクなワケだから、それが普通なのか?


 ここは、ライブルのアニキの店。

 連日、専門学科を休んでまで平日の学校で居残り勉強をしていたオレっちたちは、土曜日の朝、メロスが連れてきたアイフさんと共に、再びアニキの家へとやってきたのだった。


 「他にも、お好み焼きと焼きそばが一つになった合体焼きとか、変わり種のスパゲッティなんかもあるのよー。どれも美味しいから、評判も良くて⋯⋯タロス君、ありがとねー!」

 アニキのオフクロさんは、写真用にと、次から次へと料理を作りながらオレっちに声をかけてきた。


 「いえ、いえ。思いつきの料理なんで、自信はなかったんですケド⋯⋯」

 嘘です。自信はありました。前世で実証済みだから!ふむ。それにしても、一週間で早くも効果が出たのか。


 「おお、キレイに撮られてる!」


 アイフさん自作の転写真器は、前世のカメラよりもスマホに近い。どういう魔法原理なのかは分からないが、彼の手元にある紙には、料理が鮮明に写し出されていた。しかも、カラーで。


 アイフさんは、魔導器具学科の生徒のなかでも相当な技術者だと聞いていたけど、アマチュアでもこのレベルだとは。

 ちなみに、自作の転写真器は、商業用に使わなければギリセーフらしい。ああ、だから報酬はお金じゃなく料理なんだ。


 「これも、美味い!」


 一通り写真を撮り終えると、アイフさんは明太子スパゲッティをフォークで毛糸の玉のように絡め、バクバク食べていた。

 さっき天津飯を食べたのに、この食欲──オレっちもよく食べるとは言われるケド、そこまで入る胃袋は無い。





 「いや~、今日は、久しぶりに満足したわ。世の中に、こんな未知のメニューがあったとは!これは、料理学科の連中にも、是非とも教えてやらないといけないな!」

 「料理学科?」

 「アイフさんのもう一つの専門学科は、料理学科なんだ」

 首を傾げるオレっちに、メロスが補足してくれた。


 「ハハハ。ボクは作るよりも試食目当てで入ったんだけど、他にも同じような連中がいてね。そうした奴らと飲食店巡りをしてるんだ。だから、この店は、絶対に紹介しないと!」

 「それは──助かります!!」

 ライブルのアニキが、目を輝かせた。


 舌の肥えた料理学科の学生間で噂になれば、お店の宣伝になるしな。なんだか、良い方向へと転がりそうだ。


 だけど、そのうち同じメニューを出す店も出てくるに違いない。それは世の常だから仕方ないとして──お店が忙しくなった時、オフクロさんとお祖母さんだけで大丈夫なんだろうか?


 「アニキ。客が多くなると調理が大変だから、メニューをしぼった方がいいと思うんですけど」

 「そ、そうか?」

 「そうかも〜。新しいメニューと〜あまり手間が掛からないものがいいよね〜?」

 エイベルが後押ししてくれた。


 「そうだな。人手を増やすって手もあるが⋯⋯それは、実際に店が繁盛してからでもいいしな」

 メロスがさらに口添えしてくれる。


 「うむ。あまり時間が掛かり過ぎると、怒る客もいるからな」

 「そうねぇ。昔、そういうお客さんもいたわー。じゃあ、どれを残そうかしらー?」

 アイフさんの言葉が決め手となったのか、オフクロさんがメニュー数を減らすことに同意してくれた。


 「それにしても、タロスってよく気が回るよな〜。スゴいよ!」

 「だよね~!」

 「そうだな」

 ボビンの言葉に、エイベルとメロスが同意する。まあ、確かにオレっちの歳でそこまで考えるヤツはいないだろう。これも前世の大人思考がなせる技よ。

 




 ◇◇◇◇◇


 そして迎えた、テストの結果──オレっちたちは全員、平均より上の点数をとれた。もちろん、ライブルのアニキもだ。


 「おメーらのおかげだな。予想していた問題が多かったから──ホントにありがとよ!⋯⋯店も客が増えてきたし、ワイも少しは安心できた。勉強は好かンが、頑張ってみる!」


 アニキの店は料理学科の間で話題となり、口コミで広まりつつある。まだ安心はできないが、以前よりはいい状態だ。

 オレっちもかーちゃんやお屋敷の人たちにそれとなく宣伝しているが、アニキの家は少し遠いので、そう頻繁には行けない。やはり、近隣の常連客がつくことを祈るしかないな。


 ふと、オレっちは自分の腹を見下ろした。

 ⋯⋯なんだか太ったような⋯⋯気のせいかな?だって、最近お腹が空かないから、めっちゃ少食だもんね。かーちゃんに心配されるぐらい食べてないから、逆に痩せてるハズだし!





 ☆ カガリス視点 ☆


 ズルルっと、音を立てて麺を食う。美味い。

 この屋台のラーメンは、しょぼくれたタヌキ親父が作ってる割には上出来だ。安いしな。


 まあ、多少高くても問題はないんだが。タロスの貯金を元手にカジノとやらに行って、一発当てたからな。俺に掛かれば、スロットのズル防止用の魔法消去の魔導器なんぞ意味はねぇ。神力消去じゃねーからな。


 元手はタロスの貯金箱に戻しておいたから問題ねえし、儲けた分は簡易空間に放り込んでおいたから、いつでも引き出せる。

 ただ問題は、このぜい肉だが⋯⋯タロスのヤツ、スルーしやがった。本当にマヌケだな、コイツ。





 ☆ オマケ情報 ☆


 天津飯 600ベルビー

 合体焼き 700ベルビー

 汁つけ焼き(10個入り) 500ベルビー

 ナポリタン 500ベルビー

 明太子スパゲッティ 600ベルビー


 めっちゃリーズナブル。


 小獣国のカジノもまたリーズナブルで、少額で遊べる。スロット1回、300ベルビーから。

 規制が緩いので、ほぼパチンコ感覚。借金して破産しても、自己責任。借金奴隷になるだけの話。

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