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第百三話 第4レベルクラスへの進級

 今年の秋の大祭も、無事に終了した。

 オレっちの舞は、正直、去年ほどのキレが無く(体重増加で)イマイチだった。しかし、十番手以降の舞い手の一人が派手にコケたこともあり、転ばなかっただけマシかと思うことにした。

 賢者様も目を開けて起きてはいらしたが、今回は一度もお立ちになることもなく、最初から最後まで椅子に腰掛けたままの状態だった。


 《アレは、もうダメだな。器が限界だ》


 カガリス様が、賢者様をアレ呼ばわりする。そりゃあ、神様からしたら、半神血族なんて神族の出涸らしみたいなモンなんだろう。


 『もうかなりのお歳ですからね』

 《というよりも、アウルヴィーダの血が薄すぎる。神力というよりは、普通の魔力しか感じねぇ》


 アウルヴィーダ様というのは、賢者様の神祖様のお名前だろうか?そーいえば、賢者様のステータス、視てなかったな。HPの残数がエライことになってるのかも。


 《だが、半神の血が未だに残ってるとは⋯⋯そっちの方が驚いたな》

 『あの〜、それなんですけど、半神様って昔はどれぐらいいたんですか?』

 《そこそこの数はいたな。眷属どもの管理を丸投げするにはちょうどよかったからな》


 えっ⋯そんな理由で!?


 《ま、それは結果論だ。ただ単に好みのタイプを侍らせた結果、ガキができたって話だ》

 『エロき神々のハーレムですか⋯⋯』

 別の意味でも好き放題してたワケだ。


 《おかしな言い方をすんな。大勢の眷属を従えると、自然にそうなるもんなんだ》

 『じゃあ、カガリス様も?』

 カリスにも半神血族──賢者様がいた時代があったんだろうか?


 《いねぇ。俺はすでに休眠期前だったからな。眷属も少ねぇ上に、そっち方面の興味もすでに無かった。それでも一応、縄張りは持ってたが、所詮は短期滞在だ。下位世界の過剰魔素期は短い。この世界だと、二万年ちょいぐらいだった》


 思いっきし長いやんけ。でも、神様感覚だと短いのか。カガリス様も休眠期前だったとか言いつつ、まだ起きてるもんね。寝る寝る詐欺。


 『ところで──最近、どこかの倉庫⋯っていうか、樽がいっぱい並んでる場所の夢ばかり見るんですけど──どうしてなんでしょうか?』

 《⋯⋯ふ~ん。オメー、おかしな夢ばっかりみるんだな》


 いや、絶対アンタがなんかしてるだろ!?──と、叫びたいとこだが、ボヤンとした夢の記憶なので強くは言えない。

 オレっちが眠った後に何かしてるにしても、体がダルいとか眠いとかも無いし。先月ぐらいまではあんなに眠かったのに⋯⋯もしかしてオレっち、ひっそりと肉体改造されてる!?めっちゃ、怖いんですけど!!






 ◇◇◇◇◇ 


 「今回の〜テストは〜良くできたかも〜」

 「だな。っていうか、楽勝だった」

 っていうか、物足りないぐらいになってきたな。


 「ふ~ん。エイベルとタロスもそうなんだ。私も苦手だった神獣学がそうでも無くなったし⋯⋯そろそろ、クラスレベルを上げようかしら?」

 「そうネ。アタシもそうするワ」

 「一度、第4の授業を受けてみて、ダメだったら第3に戻ればいいしね〜」

 セーラ、ニジー、リリアンの女の子たち三人組の言葉に、オレっちとエイベルは、顔を見合わせた。


 「⋯⋯第4か。エイベル、どうする?」

 「うん〜。どんな感じか〜上がってみないと〜わからないもんね〜?」

 「だな。第4クラス、挑戦してみるか!メロスはどうするんだ?」

 ついでに、近くにいたメロスにも訊いてみる。


 「フン。じゃあ、俺も上がってやるか!」


 メロスは、相変わらずのツンデレ口調でそう言った。メロスは、苦手な統一国語──特に作文系がダメだったけど、今回は珍しく平均点がとれてたから自信がついたのかも。他の基礎学科は問題ないしね。

 ボビンは──


 「数学が⋯⋯でも、皆と一緒に上がりたい⋯⋯」


 ボビンはメロスと真逆で、統一国語が得意で数学が苦手だったんだよな。でも、フェンリーが熱心に教えていたから、言うほど酷くはないと思うんだが。


 後は──編入して半年のアレイムと、微妙な成績のヒンガーは──無理だな。


 「こればかりは仕方ないよ。でも、頑張って、早く皆に追いつきたいな」

 アレイムは微笑んだ。今の彼には、元継母に受けた虐待の影も形も見えない。常に前向きだ。心配なのは──


 「⋯⋯無理。どう考えても⋯⋯ボクには⋯⋯無理」

 「焦らないで、ゆっくり勉強しよう。ヒンガーは、数学には強いんだし」

 ブツブツ言ってる落ち込みアヒルを、アレイムが励ます。

 しかし、アレイムは善意で言ったんだろうけど、裏を返せば、ヒンガーは数学以外は全滅だということだ。少なくてもあと二、三年は、第3で勉強することになるだろう。


 オレっちも、ホントはもう少し第3に留まりたかったんだけど、タイミング的に今がチャンスなんだよな。

 そう。今なら親しいこのメンバーと、同じクラスに編入される可能性が高いのだ。


 どういう事かというと、年始めやテスト後の編入は、各レベルクラスの連中がゴソッと抜けるから(上に進むか下に戻るかの二択)、その穴埋めで申請順に、これまたゴソッとまとめて同じクラスに編入される事が多い。

 反対に閑散とした編入時期だったりすると、メロスとアレイムのように、一人、二人になるってワケ。

 オレっちとエイベルの時は、タイミング的に11組まで満員になった直後に入ったから、12組になったんだって。




 「じゃあ、明日にでもモブラン先生に言って、進級の申請手続きをしてもらおう!」

 早くて半月、遅くて一ヶ月後──オレっちたちは、第4へとクラスレベルを上げる。⋯とは言っても、授業内容についていけなかったら、即、出戻りだけどね。


 《第4と言わず、第5までいけよ。もしかしたら、お前、イケんじゃねぇの?ものは試しだ。それでもって、すぐに休学──》

 『無理ですね。オレには記憶系のスキルも演算系のスキルも無いもんで。地道に勉強するしかないんですよ。それに、この世界の授業は楽しいし』


 前世みたいに、先生の話を聞く一方の授業じゃないもんね。


 《ふ~ん⋯そうか。ま、短い生のオメーらは、他人から知識を与えられる必要があるもんな。俺たちみたいな永く生きる者は、経験を積めば勝手に知識を得るモンだが》

 『⋯⋯人間でも、学校を出てからの知識の方が、実際には役立つんですケドね』

 この世界ではともかく、前世ではそうだった。複雑な計算式を勉強しても、それを活用する職を選ぶ者がほぼいなかったからだ。


 それはともかく、こんなにアッサリと進級してしまうとは。第4レベルクラスか⋯⋯どんな感じなんだろう。

 今回はエイベルだけじゃなく他の友達とも一緒だから、人間関係に関しては不安はないんだけど⋯⋯あ、専門学科も増やしたいな。

 ダンス学科と日替わりになるけど、農業学科にも入りたい。第5レベルクラスになれば基礎学科が三時間に短縮されるから、時間的にはその時点で入る方が余裕なんだけど⋯⋯早く、花の育て方のノウハウを学びたいし。


 けど、ダンス学科も段々と内容が難しくなってきたんだよね。基礎が終わって、動きが激しい構成の小ダンスの練習ばかりだし。悩むなぁ。





 ◇◇◇◇◇ 


 「ふむ。以上の者が、進級の申請者だね。他のクラスの申請者も多いから、調整に時間は掛かるけど⋯⋯年内には第4に上がれるよ。今の12組は良いクラスだっただけに、少し残念だけどね」


 モブラン先生の言葉を聞いて、オレっちはハッとした。

 そうか⋯⋯モブラン先生ともお別れなんだ⋯⋯

 モブラン先生の授業、好きだったんだけどなぁ。第4レベルクラスの先生もいい先生であって欲しいけど。それもガチャみたいなモンだからなぁ。責任感皆無のクズ教師でなければいいんだが。

 ⋯⋯そう言えは、モブラン先生のステータス、視てなかったな。今更だが。


 《基本的には普通の加護種だな。珍しいのは、スキルに情報処理(中)と不動精神(大)があるとこだが》


 カガリス様、また勝手に⋯⋯人のことは言えんが。

 でも、情報処理は分かるけど、不動精神って──モブラン先生の動じない冷静な性格って、そこからきてるのかな?先生があわてたとこって、見たことないし。


 第4レベルクラス──新しい担任教師も含めての、不安と期待──こればかりは前世の学校と同じだな。さて、これから忙しくなるぞっ!

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