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第九十八話 いいとこ取りの世界

 今回の夏の陣の優勝者は、あのエルクだった。準優勝者は、去年の夏の陣の優勝者である虎獣人の青年。(あの血まみれ転写真の)


 彼は、冬の陣では四回戦で敗退し、リベンジに燃えていたという。

 おそらく、魔法やスキル、体術もレベルアップしていたはずだが、それでもエルクには勝てなかった。

 一方のエルクは、旧ダンジョン深層で瀕死の重傷を負い、奇跡的に生還したことで潜在スキルが覚醒し、今回の勝利を掴んだ。

 やっぱり、死にかけて強くなるんだ〜。まあ、あのエルクはもともと強かったから、その上での話だろうけど。






 ◇◇◇◇◇


 「ワ〜⋯⋯」

 「豪華ね」

 「毎日が〜お祭りみたい〜?」


 その日の夕食は、新鮮な魚貝類を使った、刺し身に寿司、カルパッチョにパエリアといった海鮮料理ばかりだった。多分、メロスの好きなものばかりなのかな?

 ちなみに昨日は、フカヒレスープや北京ダックなどの高級中華三昧だった。いや〜、前世とまったく同じ料理ばかりで、食に関しては悩むことがない。


 《そこはおかしいと思えよ、単細胞!》


 「キュ?カガ──」

 「どうしたの〜、タロス〜?」

 「いや、ちょっと寿司が喉に詰まっちゃって──ゴホゴホ!」

 ヤベェ!独り言になっちゃうとこだった!えーと、え~と、そうだ!心の声!!


 『カガリス様、おかしいって、どういうことですか?』

 《オメーの前世のまんまの料理だって事にだよ!》

 『⋯⋯』

 《元々、この生の魚料理は、この世界には無かったって言えば──解るか?》

 えっ、無かったの!?


 《そうだ。俺たちは、オメーのかつての世界を含めた多くの下位世界の情報を持っている。その中から一番いいと思うものをこの世界に取り込んだのさ。もっとも、下位世界は似たような料理が多いから、そのままっつー訳でもねぇが》


 いや、ほぼまんまのような気がするが。


 《こーいう物に関しては、雑多な下位世界の方が発展してるもんなんだ。細けー文化なんかもな。そのかわり時の流れが早く、文明もすぐに崩壊しちまう。オメーのかつての世界も──》


 まさか──核戦争とかで終わった!?それとも隕石でも落ちた!?


 《最期は知らねーな。俺たちが観るのは、面白ぇ時代だけだし。なんせ下位世界も数が多いからな。知的生命体がいねぇ世界も含めての話だが》


 『⋯⋯例えば、恐竜だけの世界とか?』

 《そうだな。アレはアレで面白かったが、あの世界が濃い魔素に覆われた時、降臨した何処かの神族がアレらのほとんどを造り変えて、別の生物にした。その造り変えた一つに、人間の祖も⋯⋯いや、確か、その次に降りた別の神族が改造したんだっけ??》


 ミッシング・リンクの謎が、今──いや、オレっちがいた世界じゃないかもしれないけど。ん?そういえば──


 『カガリス様!この世界も、古き神々より以前に、別の神々がいたんですよね!?』

 《⋯⋯オメー、なんで知ってる?》


 アレ?声のトーンが低くなった?


 『アナナグラの町で小人を発見して、ステータス画面を視たら書いてました!』

 《異星人はいい。奴らは、ヒッソリ、コッソリ、慎ましく暮らしてるだけだからな。問題は、オメーのステータス画面だ。なんか、おかしいぞ?》

 『そりゃあ、異世界転生特典だからでしょ!?』

 あるあるのお約束。


 《⋯⋯そうなのか?ステータスの情報源ってのは、上下界の過去、現在、パラレルの全ての情報を集める多次元アーカイブのことだ。そこから管理者の意思をつけて、情報が与えられる》


 そうなんだ。前世のAI管理の検索アプリみたいなもんなのか。


 『あの〜、管理者って?』

《それは俺も知らねぇ。その昔、神族の中でも一番大きな(つら)した奴らの造ったシステムだったからな。だが、その神族は、ヤベーもんを造り出した後に自滅した。システムだけが遺されて、それが今でも使えるってことしか解らねぇ。オレたちも調べ物に関しては、利用させてもらってる》


 ⋯⋯神々の世界にも、国みたいなモンがあるのか。で、一番栄えていた大きな国がヤベーもんを造って、滅びたと。でも、彼らが造った聖遺物だけは残って、データ収集、及び情報公開は続いてるってことか。


 《でもまあ、管理者の見当はつくがな。滅びた神族の一柱──しかも、そいつを模した思念体だろう。よーするに、製作神の精神コピーだな》


 さいですか。じゃあ、オレっちのステータス画面の書き過ぎ感のある細かい情報と、たまにある手抜き感ありの情報は、製作神の意思が反映されてるってことなんですね。

 つまり、意思がそれに興味があるか無いか⋯それによって、情報量が違うと。


 ステータスアプリの製作神──なんだか人間臭くて、親近感があるなぁ──あ、コレも美味い!


 「タロス君は、小獣人にしては大食漢じゃな!」

 「ホントにな。しかも、会話も無しに黙々と食い続けるとは⋯⋯」

 メロス祖父とメロスの声に、一旦、箸を停止させる。


 「いや~、美味すぎて、つい!」


 《ホントにオメーは器用だな。心話で俺と話しながら、あれもこれもと食いまくるとは⋯⋯》

 『自分⋯⋯不器用ですが、食に関しては器用なもんで!』

 《威張るような特技でもねーだろ。⋯⋯だが、俺も久しぶりに外界の味を⋯⋯ちょっと代われ!》

 『え!?』






 ◇◇◇◇◇


 「あ~、よく寝た!」

 っていうか、いつの間に寝たんだろ?特大のエビフライを食べた後の記憶がないんだけど。





 「──無い!儂の──儂の秘蔵の酒が、全部無くなっとる!!」


 「どうしたの〜?お祖父さん?」


 珍しくエイベルに起こされずに起きたオレっちが朝食を食べに行くと、メロス祖父の悲痛な声が聴こえてきた。


 「それが⋯⋯じーちゃんの酒コレクションが、全部無くなってるんだって。魔法印つきの冷却棚に保管してたのに⋯⋯」

 「へー、⋯って、お酒だけ?他には?」

 「酒だけみたいだけど。魔法印が壊された形跡が無いのに、中の酒だけが無くなるって⋯⋯おかしいよな?」

 「⋯⋯」


 ま、まさか⋯⋯


 『ちょっとカガリス様!!お訊きたいことがあるんですけど!!!』

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