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第30話 母と子のなんて事ない日常会話

 面談が終わって家に着き、今は母さんと一緒に台所に立って夕飯の準備の手伝いの最中。

 オレンジジュースを作るために一緒にオレンジをグラスの上で握りつぶしていると、隣の母さんが搾る手を止めて僕を見た。


「そういえば……なんでわざと叩かせたんだ? 拓真なら避けれたろ?」

「ん? あぁそれは、相手に叩いたっていう意識が残るからだよ。そうすれば後からどこかで僕と会った時に相手に躊躇が生まれるでしょ? さっきは僕が一気に喋った相手が返す余裕なかったからね。保険だよ」


 それにあんな平手打ちくらいなんでもないからね。


「な、なんてズルくてセコくて狡いことを……」

「だから母さんに似たって言ったよね?」

「アタシはそこまでしないぞ? やるなら実力行使の方が性に合ってるからな」

「もしかして野村パパさんもそれで?」

「ん? あぁそうだなー。アイツさ、アタシが学生の頃にこの辺で悪さしててさ? 未成年だったアタシの友達にも手を出そうとしたからぶっ飛ばした」

「だと思ったよ」


 それにしても僕と母さん、話の始め方が一緒。母さんが母親になってから八年経つけど、ここまで似るとはね。


「よし、こんなもんでいいか。次はハンバーグのタネ作るぞ」

「りょうかい」


 僕達は100%のオレンジジュースが注がれたグラスをテーブルの上に置き、搾り尽くしてスッカスカになったオレンジを捨ててタマネギやひき肉等、ハンバーグとその付け合せの材料を用意する。

 僕がタマネギの皮を剥いて母さんに投げると、母さんは包丁を素早く動かし、下のボウルを見るとそこにはみじん切りになったタマネギ。


「ねぇ、それいつも思うんだけどさ、どうやってるの? どう見てもみじん切りになるほど手は動いてないよね?」

「…………しょうがない。拓真ももう16歳だもんな。この秘密を教える時が来たか……」


 な、なんだろう? 何か秘伝の技でもあるのかな? 軽い護身術とかは教えて貰ったけど……。ゴクリ……っ!


「このみじん切りの秘密。それはな? 【事前に切っておいたものがこちら】だ」

「…………どゆこと?」

「先にフードプロセッサーで細かく切ったタマネギをボウルに入れておいて、拓真がタマネギを投げて包丁に視線が向いてる内にボウルを入れ替えたんだ。初めてそれを見た時の小さい頃の拓真のキラキラした目が忘れられなくてなぁ……。それ以来この秘密を言えなかったんだ……くっ!」


 いやいや。なんでそんな悔しそうにしてるの?


「そうなんだ。なら僕が投げたタマネギはどこに消えたの?」

「あぁそれは翌日にスライスしてサラダになってる。勿体ないからな」


 あっ! だからか! ハンバーグとかメンチカツとかタマネギを細かくして作る料理が出た次の日にタマネギ山盛りのサラダが出てくるのは! 有無を言わさずに【食え】ってオーラを出してくる理由はそれだったんだ!


「数年間ずっと騙されてたなんて……」

「ごめんごめん! ほら、今日の付け合せのポテトサラダにはミカンも入れてあげるから。ね?」

「…………わかったよ」

「やたっ! じゃあさっき軽く茹でたジャガイモ潰そう潰そう」


 そう言って母さんが鍋から取り出したジャガイモを、二人で手のひらで潰していく。

 その時、


「ん? 拓真、スマホ鳴ってないか?」

「あ、ホントだ。ちょっと見てくるね」


 手を洗ってる時もずっとなり続ける僕のスマホ。手の水気をとって画面を見ると、相手は渡瀬さんからだった。

 どうしたんだろう? お母さんに何か言われたかな?


「はい」

『あっ……えと、その……拓真?』

「そうだけど? ていうか僕にかけたんだから僕しか出ないよ?」

『そ、そうよね! うん。そうだわ……』

「どうしたの?」

『…………』

「渡瀬さん?」

『…………好き』

「え?」


 プツッ



 電話切れちゃった。



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