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第22話 クンカクンカスーハーんふーっ!

 翌朝、起きてスマホを見ると凄いことになってた。

 なんと通知が56件。

 その全てが藤宮さんからのスタンプ爆撃。時々『寂しくて寝れなーい』とか、『寝る時はブラをつける派。ホントかどうか見てみる?』とかって思春期男子を弄ぶようなメッセージも来ていたけど、それを吹き飛ばすようなメッセージがたった今、届いた。


『あ、既読付いた。おはよ、拓真くん』


 どういうこと? 既読付いたのすぐわかるってどういうこと? え、なに? ずっと見てたの? まさかね…………こわっ。


『今日は拓真くん何するの?』

『特になにも考えてないかな』


 さすがに無視するのもアレだから一通だけ送ってスマホを置く。画面を下にして置く。そして僕は下に降りた。ポコン! って聞こえたけど聞こえない。ポコン!ポコン!なんて聞こえない。


「おはよ」


 リビングに入りながら声をかけるけど返事がない。ただの留守のようだ。今はもう既に九時を過ぎてるから、母さんはきっと朝イチからパチンコに行ったんだろうね。昨日は爆勝ちしたって言ってたし。


「お腹すいたな」


 僕以外誰もいない家で誰に言うでもなくそう呟いてキッチンに向かうと、テーブルにはご飯とジャム。それと置き手紙。


【思ったよりおいしかったわよ】


 ……何がだろう。深く考えてはいけない気がする。

 とりあえずジャムは冷蔵庫に入れて代わりに納豆と生卵を取り出すと、それをご飯にかけて混ぜて食べる。うん、おいしい。


 その後はひたすらぐうたら。ソファーに寝そべってテレビを見ながらお菓子を食べ、飽きたら、マンガ本を読む。

 そして寝巻きのままで回覧板を持ってきたおばちゃんに挨拶をして、寝巻きのままで突然やってきた日高さんと奈央ちゃんに対応する。


 ………………ん?


「弟くん、変に気を使わないでくれるのは嬉しいんだけど、さすがに起きたら着替えた方がいいなぁって未来のお姉ちゃんは思うの」

「すいません。今気付きました。ちょっと着替えてきます」


 そう言って僕はパタパタと階段をあがる。なぜか後ろからトテトテともう一つの足音も聞こえる。

 後ろを振り向くと何故か奈央ちゃんの姿。


「…………なんで奈央ちゃんも?」

「くるしゅうない」

「なにが?」

「…………?」


 いや、そこで首を傾げられても困るんだけどな。まぁいっか。別に着替えるだけだし、裸になるわけでもないからね。それに裸はもう見られてるし。不本意だったけど。


「まぁ、ついてきてもいいけど部屋荒らさないでね」

「御意」


 今日は武士モードがメインみたいだね。

 それにしてもまだ会って二日目なのになんでこんなに懐かれてるのかが不思議だな。多分。聞いても教えてくれないんだろうけどね。


 部屋に入るとクローゼットから適当な服を取り出して着替える。奈央ちゃんはと言うと──


 バフッ!


「んふーっ! んふーっ! スーハースーハー。クンカクンカ……んふーっ!」


 ……え、ちょっと? 人の布団に潜り込んで何してるの!?

 奈央ちゃんの驚愕の行動に急いで下に降りて日高さんの所にいく。


「日高さん! 奈央ちゃんが僕の布団の中に入って匂い嗅ぎながら悶えてるんですけど」


 自分で言っておいてなんだけど、僕はいったい何を言ってるんだ?


「あ、奈央もそうだったんだ。ってことは弟くんの事、好きになっちゃったのかな?」


 この人も何を言っているんだ?


「……はい?」

「私もなんだけど、好きな人の匂いが好きで好きでたまらなくなっちゃうの。カズくんが着て洗濯場に置いた服を洗う前に私が一回着てから洗うし。女の子なら普通だよ?」

「そ、そうなんですか?」


 そうなんだ。女の子なら普通の事だったんだ……。知らなかったや。なんて奥が深いんだ女の子。


「そうそう。だから奈央は多分弟くんの匂いが好きなんだね。匂いだけじゃなくて弟くんの事も」


 いえ、それは無いと思います。



 で、今はリビングで三人ともお菓子を食べながら過ごしてる。あの後、僕の布団から出ない奈央ちゃんを日高さんが米俵のように担いで下におろしたんだよね。

 その事に不満だったみたいで残念そうな顔で唸っていたから、さっきまで僕が着ていた僕のパジャマを与えると大人しくなったからそのまま放置。

 なるほど。これが女の子との接し方なんだね。そう言えば和野先生も僕のジャージを着ながらビクンビクンしてたもんね。あれは普通の事だったんだ。あとで『キモイ』って思ったことを謝らないと。


 あ、そういえば。


「日高さん。気になってたんですけど、兄ちゃんと同棲してたんですよね? それがなんで姉妹で引っ越しを?」


 そう。それがずっと気になっていたんだ。


「あ、えーっとね? カズくんの演じたキャラが人気になっちゃってるみたいでね? その中の人に粘着するファンが増えてきたの。自分で言うのもなんだけど私もそこそこ人気だし、それで同棲がバレるとちょっとマズイって事で今回みたいな事になったんだ」


 なるほどね。あのキャラしかいないよね。


「獅虎怜央ですね?」

「あー……うん。気づいちゃったか〜。ん? でもなんで? あれって女の子向けのゲームだよ?」

「昨日アニメ斎藤に行った時に気付きました。前に聞いたセリフの音声が流れていたのと、さすがに兄ちゃんの声はわかりますからね」

「だよね〜」

「ところでそんなに人気がでるなんて、兄ちゃんが演じてるキャラってどんなキャラでどんなストーリーなんですか?」


 これは気になるよね。渡瀬さんや藤宮さんがあれだけ入れ込むんだもの。


「簡単に説明すると、飴屋の息子の怜央が歌でトップアイドルになる物語かな。怜央の家の飴屋は押し寄せるタピオカとマリトッツォの進撃によって大量の在庫を抱えて倒産間近。怜央はそのせいで心が病んでいくの。そこで怜央がスカウトされて……みたいな?」


 まさかの飴屋の息子。


「それで主人公──つまりプレイヤーね。その主人公が怜央を応援するんだけど、主人公も家の事情で病んでいくの。それを怜央がさらに励ましてトップを目指すストーリーね。ゲームの製作者や演者からはプレイヤーはこう呼ばれているの【マッチポンプヤンデレラ】って」


 なんてひどい呼び名なんだ。


「ちなみにその獅虎怜央の家の飴屋はどうなるんですか?」

「オープニングで倒産するわ」


 慈悲がない。……おや? ってことはアレかな? ログインボーナスの飴は倒産後の在庫処分かな? 僕の予想していたポケットに飴パンパン姿の怜央きゅんはあながち間違っていなかったってことかな?


 へぇ…………。


 クソゲーじゃん。


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