第17話 はい、ちょっとそこ正座
驚愕の真実に頭がパーンッ! ってなっていると、突然後ろから視線を感じた。後頭部にハゲができそうな程の熱視線。
振り返るとそこには真顔の彩音さんの姿。そしてその手には溢れそうな怜央きゅんグッズ。
なるほど。やっと理解したよ。
渡瀬さんや藤宮さん。そして奈央ちゃんまでもが彩音さんを敵視していた理由が。
渡瀬さんが言っていた怜央きゅんの恥ずかしい写真っていうのは、きっとゲーム内のスチルだろうね。近くの棚に『なんと! アクキー5種類の内3種類買うと今なら限定スチルと回復飴が貰えるシリアルコードプレゼント!』ってPOPが置かれているからね。
そして藤宮さんが言っていたNTRは、きっと抱き枕の事だろうね。アクキーの隣に『これであなたも獅虎怜央と一緒に朝を迎えられる! 今なら回復飴のシリアルコード付き!』って書いてあるし。
えっと……この飴ってアレだよね? 二人が付き合って〇〇日記念日とかに貰ったって言ってた飴のことだよね? え、ただのログインボーナスじゃん。怜央きゅんがポケットにパンパンに飴詰め込んで配ってると思っていた僕の時間を返して欲しい。
──ん? あれ? 等身大パネルの怜央きゅんのポケット少し膨らんでる? 気のせいか。
そして二人に共通してる事の一つに、全財産をつぎ込んだってあるけど……それってガチャだよね?
怜央きゅんと一緒に天井見たって言ってたけど、それってガチャの天井だよね?
これ以上ダメって言ってたのは課金の限度額だよね?
ちょっとキミ達なにしてるの。怜央きゅんはただのデータだよ? サービス停止したら無駄になるんだよ? ダメだ。無課金でそこそこ遊ぶ勢の僕には理解出来ない。
なによりもそれを彼氏だと思っているのがわからない。少し拗らせすぎじゃない?
そしてそんなことで恨まれてる彩音さんが可哀想だよ。これはちょっとなんとかしないといけないね。
「あら、拓真じゃない」
「あ、拓真くんだー」
……ん? 二人にお説教しないといけないと考えていたら幻聴が聞こえたぞ?
「何無視してるのよ。刺すわよ」
「なんで無視するのー? 拓真くん拓真くん拓真くん拓真くん拓真くん拓真くん拓真くん拓真くん拓真くん拓真くん拓真くん拓真くん」
怖いこと言うのやめて。馬鹿みたいに連呼するのもやめて。
「あ、渡瀬さんに藤宮さん。どうしたの?」
「どうしたの? こっちのセリフなんだけど? って拓真。あなたそれ……」
「あー! 拓真くんも怜央きゅんの持ってる! もしかして拓真くんもオレ奏やってるの?」
「やってないよ。全然。興味もないよ」
「ちょっと拓真。それは聞き捨てならないわね。興味無い人が持つものではないわ」
うわぁ。めんどくさい。
「知り合いの妹さんが好きみたいでね。僕も買うのを手伝ってるだけなんだ。あ、ちょうど良かった。二人とも、この子がその知り合いの妹さんで日高奈央ちゃん。今度僕達の高校に転校してくるんだって」
よし、これで話題は逸らせたはず。
「転……校? 飛び級かしら?」
くっ、僕と同じ事を考えたなんてなんかちょっと悔しい。
「違うよ。僕達と同級生だよ」
「そうなの? それにしては小さいのね──って待って。その子の手に持っているのって……」
「そうなんだ! よろしくね〜! ってあれ? んんん? もしかしてその子も……」
そして見つめ合う三人。数秒後、ガシッと握手を交わしていた。
意味がわからない。
「ってあの女もいるじゃない」
「ホントだ。だけど今回はボク達の方が早かったみたいだね。ふふんっ」
「…………我より先に買おうとするとは片腹痛いわ」
そして彩音さんを見つけて文句を言ったあと、また目を合わせてガシッ。
なんて理不尽なんだ。そして二人は会計終わったなら早く店から出ないとだめだよ。邪魔になってるじゃないか。あ、待てよ?
「ねぇ、二人とも僕達の会計が終わるまで待ってて貰える? 話があるんだ」
「……な、なによいきなり。そんな……照れるわ」
「まだ知り合ったばかりなのに……少し早いよ?」
頭に虫でも湧いてんのか。
……おっといけない。口調が荒くなってしまったよ。
「じゃあもう少しだからあそこのフードコートでね。テーブルはさっき見た時埋まってたから、靴脱いで上がるところにいてよ」
僕は真面目に相手にするのも面倒くさくて、場所だけ伝えて前を向いた。
そして会計後、僕と奈央ちゃんは渡瀬さん達の元に向かうと、二人の前に座る。
渡瀬さんは足を横に流しての女の子座り。藤宮さんはスカートなのに体育座り。膝で胸が潰れている。エグい。そしてちょっと見えそうで見えない。さすが女の子。
ってそれはどうでもいいんだ。僕の要件はただひとつ。
「はい、二人ともちょっとそこに正座して。奈央ちゃんも」
お説教タイムの始まりだよ。




