ついてきてくれるか?
俺は、千尋と離れて下に降りた。
ちょうど、真白さんと梨寿が玄関にいた。
「梨寿、今日実家で晩御飯食べないか?」
「お母さんから、呼ばれたの?」
「ああ、父親の方の従兄弟の息子が結婚するからみんなで食事をしようって、いつものやつ」
「ああ。真白は、千尋さんと一緒にいれる?」
「かまわないよ」
「なら、よかった。」
梨寿は、真白さんに微笑んだ。
「なら、行くわ」
「ああ、ごめんね。」
俺は、梨寿に頭を下げた。
「これ、住所です。では、後で」
「はい、トラック借りたら行きますね」
俺は、真白さんから住所の紙をもらった。
二人は、出ていった。
「由紀斗、行こう」
「ああ、行こうか」
千尋は、工具を持ってきてくれた。
俺達は、一緒にトラックを借りて真白さんの家に向かった。
「ベッド、これね。」
「先に、マットレス運ぶよ」
ベッドを解体して、できる限りのの荷物をトラックに乗せた。
「これは、ゴミだから」
荷物が少ないから、たった一日でほとんどの荷物が運べてしまった。
「後は、少しずつ自分でやりますから」
真白さんは、笑った。
「粗大ごみ捨ててくるよ」
「うん」
俺達の解体したベッドを運ぶ。
「待って」
梨寿が、呼び止めた。
「今まで、ありがとう」
梨寿は、ベッドにお礼を言った。
「持ってくね」
「うん」
俺は、千尋と解体したベッドやマットレスを乗せた。
粗大ごみを捨てに行って、トラックを返した。
俺も、最後に「ありがとう」と言った。
千尋と手を繋いで歩く。
「あっ、結婚指輪。いい加減はずさなくちゃな。」
「今日は、使うだろ?」
「そうだけど…。指輪買いに行くか?」
「別に、たいした問題じゃない。」
「なんか、怒ってる?」
「怒ってるって聞いちゃいけないんだよ。由紀斗。」
「ごめん。でも、眉間に皺よせすぎだから…。」
「ごめん、疲れただけ」
「なら、いいけど」
千尋と家に帰った。
「シャワー先に浴びちゃった。」
梨寿が、準備をしていた。
「俺も入って用意するわ」
「うん」
黒のレースのワンピースに身を包んだ梨寿は、相変わらず綺麗だった。
俺は、シャワーを浴びた。
あがって、カッターシャツを着る。
「スーツは、固すぎるよな」
「ジャケットやめて、ベストにしとけば」
「そうだよな」
リビングで、俺達が話してるのを真白さんと千尋が見ていた。
「なんか、ごめん。」
「なんで、謝るの?二人は、夫婦だったんだから」
「でも、やっぱり行くのやめようかな」
「由紀斗、何言ってんの?たった一回でそんな事言ってたら、これから先もっとあるんだよ。」
「千尋…」
俺は、二人に申し訳なかった。
「まだ、離婚していないんだから仕方ないだろ?ほら、梨寿さんもお化粧してきなよ」
千尋の言葉に、梨寿が化粧をしに行く。
しばらくして、梨寿が戻ってきた。
「それじゃあ、俺達行ってくるよ」
「うん、気をつけて」
真白さんと千尋は、玄関まで送ってきてくれた。
俺と梨寿は、手を振って家を出た。
「お互いの恋人に見送られるって不思議ね」
歩きながら、梨寿が笑った。
「本当だな。」
「由紀斗、芸能人って結婚したらすぐに子供出来るじゃない?あれって、何でかな?」
「さあな。お金もあるし、スペシャリストみたいなのがいるんだろ」
俺は、前を見て歩く。
「治療すれば出来たって信じてる?」
俺は、首を横に振った。
「どうして?」
「治療しなくちゃ出来ないのは何か違うよねーって、前の会社のやつに言われたよ。当たり前みたいな顔してたけどな。俺は、治療しても出来なかったと思ってるよ」
「本当に?」
「ああ、もっとサヨナラが早かったんじゃないかな。」
「由紀斗…。もっと早くサヨナラしとけばよかったよね?」
「なーに言ってんだよ。前も言ったけど、俺は梨寿の子供が欲しかったんだよ。自分の遺伝子を残したいだけなら、他所にいってるよ。そこを間違ってもらいたくないよ」
「フフフ、相変わらず変わらないね。由紀斗は…。昔も同じこと私に言ったよ。自分の遺伝子だけ残したいなら、とっくに新しい人見つけてるよってね」
「かわるわけないよ。梨寿は?」
「私も同じだよ。自分の遺伝子だけを残したいなら、他にいってたよ。私が欲しいのは、由紀斗と私の赤ちゃんだったから」
「ありがとな」
愛があったって、乗り越えられない試練があることを俺は、知らなかった。