駄目だな…俺
「寝るか?千尋」
「まだ、大丈夫」
「うまかったか?」
「梨寿さん、絶妙に鍋の具をくれるから、めっちゃうまかったです。」
「よかった。」
「はい」
俺は、お客さん用の薄い毛布を真ん中の部屋から取って降りる。
リビングに入ろうとして、手を止めた。
「真白、家じゃないから駄目だよ」
酔っ払った真白さんのヤキモチはヒートアップしていた。
「やだー。」
「んんっ、駄目。戻ってくるから」
梨寿の口にキスをした。
綺麗で、目が離せなかった。
今までなら、俺が触れていた部分を彼女が触れる。
「駄目だよ。そんなとこ触らない。」
梨寿の柔らかい胸に手をいれてる。
「あっ、駄目」
梨寿は、可愛い声で鳴く
もう、その声は彼女のもので…。
「駄目だからッッ」
拒めば、拒むほど、真白さんは、梨寿を求めた。
もう、あの体に触れられない。
俺だって、梨寿のいいところを沢山知っていた。
「はぁー。もう、駄目だから」
とろけた顔をした梨寿が見える。
「ダメ、こっち」
無理やりキスをされてる。
「んんっ、はっ…。ヤダ」
綺麗だ。
やっぱり、梨寿は…
「綺麗だね」
後ろから、千尋の声がして振り返った。
「これどうするの?まぜてもらう?」
俺のを触って、千尋が言った。
「そんなの無理だよ。」
梨寿は、真白さんから離れようとするけど、引き寄せられて舌を絡ませられてる。
「可愛い声で鳴くんだね。抱きたくなった?」
「違う、何でか」
「仕方ないよ。夫婦だったんだから…。」
俺は、毛布を落とした。
「こっちきて」
そう言って、千尋は洗面所に連れてきた。
「ごめん」
「夫婦だったんだから、普通だよ。梨寿さんのあの顔も、いいところも全部知ってるんでしょ?」
「わからない。全部かなんて」
「そうだよね。だって、由紀斗さんのいいところで俺しか知らない場所ひとつだけあるよ。梨寿さんだって、きっとそうだよ。」
「千尋…。戻すから、待って」
触ろうとする千尋を止める。
「やだよ。梨寿さんに、感じた体を俺にちょうだい」
「千尋ッッ。んんっ」
今、そんな事されたら駄目だ。
千尋は、止めてくれなかった。
「はぁー、ぁぁっ」
「可愛い声で鳴くのは、俺しか知らないよね?」
千尋は、俺のを食べた。
「んんっ、んんっ」
「ありがとう」
暗くて、千尋がどんな顔をしてるかよく見えなかった。
「千尋。ベッドでしようか?」
俺は、手探りで千尋の頭を撫でる。
「先に、毛布渡してきなよ」
「わかった」
千尋は、蛇口をひねって手を洗っている。
俺は、後ろから抱き締めた。
「これから、毎回こうなったらどうしたらいい?」
「なるよ。夫婦だったんだから…。それは、梨寿さんも同じ。気にしなくていいんじゃない?付き合いたてのカップルは、猿と同じだよ。」
「40歳に、言う台詞じゃないよな」
「由紀斗さんは、年齢のわりに激しいよ。俺を毎日欲しがってくれるでしょ?」
千尋は、振り向いて俺に舌を絡ませてきた。
「俺にもさせてよ。」
「駄目、毛布渡してきてから」
千尋に、抱かれたかった。
「待ってて、二階で」
「わかった」
この家で、千尋に抱かれたかった。
「持って行ってくる。」
「口、ゆすいでから」
そう言われて、口をゆすいだ。
ズボンを綺麗に整えて、手を洗う。
俺は、毛布を拾ってリビングを開けた。
梨寿は、ソファーにいなかった。
「ありがとう」
キッチンから、やってきた。
聞かれたか?
「泊まっていきなよ。したくなったら、二階の部屋でしたらいいよ。俺達も、遠慮しないから」
見た事を告白するみたいに、言ってしまった。
「酔うと真白、独占欲強いから…。そうするなら、そうするよ。由紀斗達も、遠慮しないでね」
「わかった、おやすみ」
「うん、おやすみ」
何で、胸が締め付けられたかな?
まだ、気持ちが残っていて…。
なのに、俺にはあんな風に優しく梨寿を求める事は出来ない。
気づいてるから、余計に苦しかった。