氷の妖精ぱりぱり……
次の日。
昨日より、あたたかい陽射しが差しているそんな天気になりました。
いつものお手伝いで、朝、新聞を取りに行ったみいちゃん。
「ぱりぱりーおはよう、どこー?」
とお庭を見渡して探しました。
「ここだよー」
氷の妖精ぱりぱりはすぐに近寄って来てくれました。
「あれ?」
みいちゃんは気付きました。
何だか、氷の妖精ぱりぱりが少しだけ小さくなってしまった気がしたのです。
「みいちゃんどうしたの?」
「ううん何でもないよ。また後で遊ぼうね!」
不思議そうに首を傾けた氷の妖精ぱりぱりに、みいちゃんは慌てて首をブンブン振って言いました。
家に入ってからみいちゃんは何だか不安になってきました。
氷の妖精ぱりぱりが消えちゃう、そんな気がしてきたのです。
ハッとみいちゃんはしました。
昨日、初めて氷を持った時、お母さんはなんと言っていたっけ。
確か……。
『そうね、氷は溶けるから。おてての熱で溶けてお水に戻ってしまうのよ』
「ああ!」
みいちゃんは大きな声を出しました。
そしてお外のお空を見ます。
太陽の光は、さっきより強くなってきていました。
つまり。
「あったかいとぱりぱりが溶けちゃうんだ!」
大変です!
「ぱりぱりー!」
みいちゃんはお外へ飛び出しました。
お外は寒い寒い冬のはずなのに、あったかく感じるのです。
みいちゃんの住む国は寒い寒い国です。
でも、そんな寒い国でもあったかい冬の日がたまにあるのです。
たまたま、今日はその日でした。
「ぱりぱりー!」
みいちゃんは半泣きの声で叫びました。
「みいちゃんみいちゃん、泣いてるよ?」
みいちゃんの大声を聞いて氷の妖精ぱりぱりが飛んで来ました。
氷の妖精ぱりぱりはびっくりしました。
みいちゃんが泣いているからです。
「ぱりぱり! お家の冷凍庫に行こう! だって、ぱりぱりが居なくなっちゃうの嫌だ!」
みいちゃんは知っています。
お家の冷凍庫なら、冷たいものがずっと取って置けるからです。
でも。
「ううん。駄目なんだよ、みいちゃん」
氷の妖精ぱりぱりは首を静かに振りました。
「みいちゃんとずっと一緒にはいたいよ? でもね」
「でも?」
みいちゃんはえぐえぐと、涙をこぼしながら聞きます。
「氷の女王様が、呼んでいる。だから、帰らなきゃ」
「だって、まだ冬終わってないよ!」
「うん。そうだね。今度は雪の精の番なんだ」
「ゆき?」
「そう、雪だよ、みいちゃん」
すると、お日さまの光が氷の妖精ぱりぱりを照らしました。
氷の妖精ぱりぱりが、静かに小さく小さくなっていきます。
きらきらと、氷の妖精ぱりぱりから溶けた雫が光ります。
「みいちゃん、サヨナラの時間だね」
「ぱりぱり……」
みいちゃんはもう涙で目がいっぱいでした。
「大丈夫。みいちゃんとは、また来年会おうね。約束」
「うん、うん! 約束だよ!」
みいちゃんは小指を差し出しました。
氷の妖精ぱりぱりも手を伸ばします。
二人の手は、確かに触れ合いました。
ちりり……。
そんな音を残して……。
「またね、みいちゃん!」
氷の妖精ぱりぱりは去ってゆきました……。
「またねー、ぱりぱりー! 来年、絶対に会おうねー!」
みいちゃんはお空に向かって言いました。
笑って、涙の顔ですが、笑顔でサヨナラを言いました。
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