みいちゃんとぱりぱりの出会い
みいちゃんは小さな女の子。
みいちゃんは、あったかな外国の国で生まれました。
でも、みいちゃんが五歳になった時、お父さんのお仕事の都合で今度は寒い寒い国に行くことになりました。
引っ越して初めての冬の始まりがやって来ました。
昨日の天気は雨でした。
みいちゃんには朝のお仕事があります。
お仕事と言っても、みいちゃんの役目みたいなものです。
それは、お外のポストからお父さんの読む「新聞」を取ってくることでした。
今日も、お外に行ってポストに入った新聞を取ろうとお庭の土を踏みました。
ぱりぱり。
「え? 何の音?」
足の下から、不思議な音がしました。
みいちゃんはもう一度お庭の土を踏んでみました。
ぱりぱりぱり。
足元をよおく見ると、白いヒビが入った不思議な見たことの無い物がありました。
確かここは昨日小さな水溜まりだったはずです。
「お母さん! お母さん!」
みいちゃんのお母さんは、びっくりして飛んできました。
「みいちゃんどうしたの」
「お母さん、これなあに?」
片足の靴の下を指差して、みいちゃんはお母さんに質問をしました。
みいちゃんのお母さんは、すぐにわかりました。
みいちゃんがこれを見たことが無い事にです。
にっこり笑ってみいちゃんのお母さんは言いました。
「みいちゃん、これは“氷”というのよ」
「こおり?」
首を傾けてみいちゃんは言います。
「そう。氷。みいちゃん触って見てごらん」
みいちゃんは氷を恐る恐る触りました。
ひんやり。
「冷たい!」
みいちゃんはびっくりして手を引っ込めました。
そしてもう一度触ってみます。
「硬いよ、お母さん」
氷は硬くて、とっても冷たいことがみいちゃんは分かりました。
みいちゃんのお母さんはそっと手を伸ばして氷をつまみました。そしてみいちゃんの前に掲げます。
氷は透明で、お日様の光を浴びてキラキラとしていました。
「きれい!」
みいちゃんは手を叩いて喜びます。
そおっと、みいちゃんも氷を持ってみます。
氷は、冷たくて透明できれい。
でも、なんだかつるつる滑ります。
「お母さん、つるつるしてる!」
「そうね、氷は溶けるから。おてての熱で溶けてお水に戻ってしまうのよ」
「そうなんだ!」
みいちゃんの手の中で氷は溶けてつるつる滑って。
「あ!」
ぱりん!
落ちて割れてしまいました。
「割れちゃったね。さあ、お父さんが待ってるわよ」
みいちゃんのお母さんが、残念そうにしているみいちゃんを促して、新聞を取りに行くように言ってお家の中に戻りました。
慌てて新聞を取ってきたみいちゃん。
でも、割れてしまった氷が気になって仕方ありません。
もう一度だけ、触ってみたいな……。
みいちゃんの耳には割れた時の何とも言えない音が響いていました。
「もう一度、もう一度だけ」
割れて落ちた大きな氷の欠片を、みいちゃんはそうっとまた持ち上げて。
ぱっと手を放しました。
すると。
氷の欠片は空中でピタリと止まって……。
クルクルと回り始めたかと思うと!
「ばあっ!」
「きゃあっ」
みいちゃんはどてん! と思わず尻もちを付きました。
だって、氷の欠片が急に声を出したんです!
「ごめんみいちゃん!」
「こ、氷がお話してる!」
みいちゃんは思わず辺りを見回しました。でも、みいちゃん以外誰もお庭には居ません。
「僕は氷の妖精さ!」
「氷の妖精……?」
目の前に浮いている氷の妖精さんは、三角の氷の欠片の帽子に氷の冷たそうな服を着た、不思議な姿の妖精さんでした。
「みいちゃん、ぼくまだ名前が無いんだ。みいちゃんみたいな名前が欲しいんだ……」
氷の妖精さんはクルクルと回りながら、恥ずかしそうに言いました。
「お名前ね! 分かったわ!」
みいちゃんは何だかわくわくしてきました。
どんなお名前がいいのかしら!
「そうだ! ぱりぱり! あなたは氷の妖精の"ぱりぱり"よ!」
手を叩いてみいちゃんは笑って言います。
氷の妖精さんは。
「ぼくの名前、ぱりぱり! ワーイ、ぼくぱりぱりって言うんだよー!」
とみいちゃんの周りをクルクルと回りながら嬉しそうにお空に向かって言いました。
これがみいちゃんと氷の妖精ぱりぱりの出会いでした。
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