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3.このままで良いのかな、って。






 翌日、ボクはいつも通り教室の隅っこでラノベを読んでいた。

 昨日の一件があったとしても、日常は変わらない。エヴィも『ヲタバレはしたくない』というだけあって、ラノベを読むボクからは距離を取っていた。

 いや、違うな。

 正確に言うならば、いつも通りの距離に違いなかったのだ。



「ないない。そんな、ラノベじゃあるまいし……」



 ボクは口癖の一つになっているそれを言って、再びラノベへと視線を落とす。

 友達になったとはいえど、彼女にとっては数ある友人のうちの一人。ヲタ友というアドバンテージ(?)はあるものの、ぶっちゃけると域を出ない。

 よくある『ボクだけが知っている』から仲良くなるパターンは、あり得なかった。


 なので、その日もいつも通り。

 なんの変哲もない一日が、過ぎていくように思われた。







「あはは! エヴィって、ホントにクールビューティー、って感じ!」

「わかるー! 顔色もめったに変えないし、ホント綺麗でさー!」

「………………」



 比較的よく話す女生徒二人に挟まれて。

 昼休みのエヴィは、緊張した面持ちで弁当を口に運んでいた。

 そんな最中にも気になるのは、やはり杉本拓海の動向。ちらちらと彼の方に視線を投げては、ラノベを読み耽る姿に安堵していた。


 ――やっぱり、杉本くんはすごい。


 エヴィは改めて、ヲタクらしいヲタクを貫く彼に尊敬の念を抱いた。

 しかし、その様子に気付いた女生徒の一人が彼女に訊く。



「ん、どうしたのエヴィ? もしかして、メガネくんが気になる?」

「ふぇ……!?」



 至って普通のやり取りのはずだった。

 それなのに、図星を突かれたエヴィは思わず間抜けた声を上げる。すると、それを面白がった女子二人はこう言うのだった。



「なになに? もしかしてエヴィ、アレがタイプなの?」

「うっそ、マジでー?」



 もちろん、拓海には聞こえないよう配慮していたが。

 それだとしてもエヴィにとって、肝が冷える会話であることに変わりなかった。



「Type……?」

「え、あー……好み? 好きか、ってことだよ」

「………………?」

「あ、駄目だよ。これ通じてないって」



 とっさに『日本語分かりません』作戦で乗り切る。

 それが功を奏したのか、女生徒二人の意識は拓海から離れそうになっていた。だが、その間際に一人がこう口にする。



「メガネくんとは、かかわるのやめときな? 何考えてるか、分からねぇし」



 それは、ある種の偏見だった。

 昼休みに黙々と趣味に没頭している。ただ、それだけなのに。

 彼女たちには悪気がないにせよ、エヴィにとってもそれは、悲しい響きだった。



「………………」



 ジッと黙り込んで、なにかを考えるエヴィ。

 その様子に二人の女子は首を傾げたが、予鈴が鳴って散会となった。



「このままで、いいのかな……?」



 最後に、ぼそっと少女が呟く。

 しかしながら、それを耳にする者は誰もいなかった。









 ――で、放課後になったわけなのだけど。



「はい……? エヴィ、なんて……?」

「ですから、デートしましょう! 杉本くん!!」




 一人っきりの帰宅路。

 そこになぜか待ち構えていたエヴィは、ボクにそう言った。




「へ…………?」






 ――何がどうして、こうなった?


 ボクはしばらく思考停止に陥ってしまうのだった……。



 


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