2.それぞれ思うことはあって。
カクヨムコン参戦中!
そちらでは、先行公開しています!!
「ボクとエヴィ……さんが、友達……?」
帰宅後、自室にてソシャゲをしながら思い出す。
さっきは勢いで引き受けたものの、果たしてそれは正解だったのか、と。彼女はいまや陽キャグループの中心で、対するボクはただの陰キャ。敵対しているほどではないけど、好意的に見られているわけでもなかった。
というか、さらに言えば『無関心』というのが近いだろう。
「んー……?」
どうにも、居心地が悪かった。
しかし不快なわけでもなく、不思議な感覚。
ただ、少し気になったのは――。
「それにしても、どうしてエヴィはボクの名前を知っていたんだ……?」
なぜ彼女が、接点のないボクのことを認識していたのか、ということ。
クラスメイトだから、という単純な理由だけではない。エヴィよりも今の面子と同じ教室にいるボクでさえ、まだ顔と名前が一致しない人もいるくらいだった。陰と陽の者では、ここまで差があるのだろうか……?
「まぁ、考えても仕方ないか。ひとまず、調子に乗らないようにしよう」
そこまで考えて、やめた。
そしていつも通りに、大きな欠伸をしながら深夜までゲームに勤しむ。典型的なヲタク学生の生活を満喫するのだった……。
◆
「はふぅ……」
帰宅後、エヴィは湯船につかりながら拓海のことを思い出す。
「日本でできた、初めてのヲタク友達……」
彼女にとって、彼はある意味で特別だった。
クラスメイトとは滅多に交わらず、休み時間にはカバーもつけていないライトノベルを黙読する。しかし本人もそれでいい、と考えているようだった。
自分は自分で、他人は他人。
その姿勢にエヴィは、ほんの少しだけ尊敬の念を抱いていた。
「杉本くん、強いよね」
彼女はどうしても、周囲の様子を気にしてしまう。
どう見られているのかを過剰に意識して、思っていることを言えず、結果的にストレスを抱えることがあった。そんなエヴィにとって見れば、杉本拓海という少年の生き方は理想形だとも呼べるのだ。
そして、そう考えるのにはもう一つ理由があって――。
「……ううん。だめだめ、思い出しちゃだめ……」
そこで少女は、首を大きく左右に振るのだった。
とにかく自分にもようやく、日本で初めてのヲタク友達ができたのだ。あとは、少しずつでも良いから仲良くなれるよう努めたい。
そう思いながら、エヴィの夜は更けていくのだった……。