第三話 その23
その場にいた全員がサシリーノを見た。
「特にそいつは借りた金をテメェで用意できないようなクズだ。そんな雑魚が魔物一匹でも倒せるとは思えねぇな」
サシリーノはウォーレンを指差しながら言った。その顔には復讐の喜びが見える。
「部外者は引っ込んでろ!」
誰かが野次を飛ばした。
「おっと。今の声はリアムかな? お前は昔俺に泣いて金を貸してくれと頼まなかったか? 奥さんは元気か。ああ,金が原因で別れたんだったか」
「てめぇ!」
男が一人サシリーノに詰め寄ろうとして,周りの戦士たちがそれを諫めていた。
「やめろ」
受付の男が唸るように言うと,場は静まり返った。
「サシリーノ。お前は確かに部外者だ。昨日の一件も知っている。個人的な恨みなら出ていってもらおうか」
「おいおい。そいつの信用がないって話だろ。そいつを俺が証明してやるって話だぜ? 部外者と決めつけるのは早いってもんよ」
「証明?」
周りからざわめきが起った。
「つまり,こうするのさ!
Imagine!—Expolsion!」
サシリーノが右腕を高く挙げると,高い吹き抜けの天井まで届くような火球がそこに現れた。
悲鳴や悪態が一斉に生まれた。
サシリーノは間髪入れずに腕を振り下ろした。火球は床に叩きつけられ,爆ぜた。
爆発音と,ガラスの砕ける音が炸裂した。黒煙が視界を奪った。
だが。
咽る声が方々から聞こえて来た。
「離せ! クソども!」
鈍く重い音が床の方からした。誰かが取っ組み合っているらしい。
「Imagine!—Wind!」
誰かが叫ぶと,煙は小さな竜巻によって換気され,視界が開けた。そこには二人の戦士に取り押さえられたサシリーノがいた。
そして俺の前,正確には俺とハル,子供達の前に,ウォーレンが立っていた。ウォーレンの前方には半透明の光りの壁が生まれていた。ウォーレンは肩で息をしている。険しい表情で,深く息を吐くと壁は消えた。
「なるほど」
受付の男はカウンターから出て来て,ウォーレンとサシリーノのちょうど中間あたりに立った。
「証明とはそういうことか」
「は?」
床に押し付けられながらも,サシリーノは顔だけ動かして男を睨んだ。
「“ウォーレン”は,無詠唱で,安物の魔石で,これほど堅固な防御魔法を使えるという証明だな」
サシリーノの顔はみるみるうちに真っ赤になった。
「ふざけんな! そいつに力があるわけないだろう! クソ貧乏のくせに!」
「いや,私は見た。反射的に子供達の前に立ちふさがり,お前の出した魔法を防ぐのを。まあ,咄嗟だったから,制御レベルは甘くみてやろう」
光の壁によって抉れた石壁を見ながら男は言った。ウォーレンはまだ呆気に取られている。
「おい,そいつを連れて行け」
男がそう言うと,サシリーノはそのままどこかへ連れて行かれた。その間,ずっとウォーレンについて喚いていたが,誰も耳を貸す者はいなかった。




