第三話 その7
「さっきはありがとうございました」
「いえいえ。ハルちゃんは大丈夫ですか?」
「わかりません。実はまだ出会ってそれほど日も経っていないんです」
「そうなんですか? あまりに仲が良いので勝手に兄妹なのかと思ってました」
「はは。ハルは妖精です。俺は転移者で,ハルに連れてこられたんです」
「ええ!? そうだったんですか? 僕も二,三度妖精を見たことがありますが,ハルちゃん程大きくは無かったような……」
ドリンクに口をつける。牛乳と砂糖の甘さが不思議なほど全身に染みる。砂糖のべたべたした後味が無いのは木の実のおかげだろうか。爽やかな香りが鼻を抜ける。
「マリアさんとはどういう関係で?」
「それが全くわからんのです。なんか勝手に付きまとわれてて――」
「フン。そうやってみんなに嘘ついていくつもり?」
振り返るとちょうどマリアが部屋に入ってくるところだった。濡れた髪をタオルで乾かしている。
「ウォーレン,コイツの話は信じちゃダメよ。私と初めて会ったとき,コイツはハルと一緒じゃなかったもん。大方転移者ってのも嘘ね」
「そうなんですか?」
「そんな訳ないっすよ。俺はこの異世界に来てからずっとハルと一緒だった」
「じゃあ何? 記憶喪失とでも言うの?」
マリアは今にも噛みつかんとする狼のような目で見てきた。
「本当になんのことなんだよ」
「チッ」
マリアは舌打ちし部屋を出て行った。
「えっと……二人はどういった関係ですか?」
「……さあ,俺にもわかんないです」
顔を見合わせ二人で笑う。
「あの,今晩泊めてもらう礼と言いますか,何か俺らに出来ることはないですか?」
「そんなお気遣いなさらなくても。うーん,でもそうですねぇ」
ウォーレンはいつの間やらやってきた猫を膝に乗せ中空を見つめた。
「では明日,一緒に木の実狩りに行きませんか? みんなドリョクさんたちを歓迎してますよ」
俺はこの提案を受け,明日に備え寝ることにした。




