第三話 その3
子供達は木の実の入ったかごを持ってどんどん進んでいく。時々歌さえ歌っている。俺たちとウォーレンはその後を見守りながら付いて行く。
「これから向かうのは僕たちのハウスです」
そう切り出しウォーレンは話し出した。
ウォーレンは孤児院の院長で,森の中に建てられた院を一人で経営している。親に捨てられた子,戦争で家族を失った子,様々な理由で孤児となった子供達と暮らしている。ウォーレン自身も孤児院で育ち,先代の経営者が引退すると聞き,世話になった院が無くなるのを忍びなく思い後任を引き受けた。
ウォーレンは道中,そんな話を暗い顔も見せずに教えてくれた。
日が落ち木々が茜色に染まる頃,石造りの洋館が姿を現した。子供達がわっと駆けていき,どうやら目的の孤児院に着いたのだと分かった。
中に入り,ウォーレンが明りを点けると,部屋は優しく暖かな光で満ちて心がほっとするのを感じる。
「ごめんなさい。今日は週に一度のお風呂の日なんです。夕食はもう少し待っていただけますか?」
ウォーレンが心底申し訳なさそうに言う。さらりと言った,週に一度のお風呂という言葉に驚く。孤児院の経営を一人で行っていると聞いた時から,苦労はきっと多いだろうと思っていたが,風呂にも頻繁には入れないとなると相当に厳しいのかもしれない。それでいて困っていた俺らを招待してくれたのだから,彼は優しすぎるのかもしれない。
「全然構いません。俺らはお邪魔させてもらってるだけですし……」
俺は言い知れぬ罪悪感のようなものを胸に覚えた。いくら好意に甘えると言えど,限度がある。あまりに貰いすぎると毒になる。せめて何か力になれないだろうか。
「ねえウォーレン。ごはんはお風呂の後に作るの?」
「そうですね。いつもは帰ってからすぐに作るんですけど」
「じゃあさ,ハルたちがごはんの用意をしても良い?」
ハルの提案は唐突だった。
「ハル,料理作れたっけ?」
「ううん,でも努力なら作れるでしょ?」
料理は作れないこともないがどれも簡単なものしか作ったことはない。ハルはそれを知らずに提案をしたのだからなかなか向こう見ずだと思う。しかし良い機会だ。少しでも彼の負担を減らせるなら協力したい。
「俺,出来ます。もし迷惑でなければ,何か作っても良いですか?」
言うと,ウォーレンは
「では,お言葉に甘えて」
と嬉しそうにはにかんだ。
キッチンに案内され,食材はなんでも好きに使って良いと言われた。ウォーレンが子供達を風呂に入れに行くと,キッチンには俺とハル,それからマリアだけが残された。




