第三話 その2
再び歩き出すと森に差し掛かった。道は拓かれていて歩いていくのに問題は無かった。
何事もなく進んでいくと一人の男の子がぽつねんと一人,道に座り込んでいた。
「努力,あれって……」
ハルは確かめるように聞いてきた。俺は頷いた。迷子だと思う。見過ごすわけにもいかず近寄ると,男の子は俺らに気付き,同時に顔をゆがめ,勢いよく立ち上がり逃げ出した。
「待って!」
ハルが呼び掛けるのとほとんど同時に男の子は転んだ。反射的に駆け寄り
「大丈夫か?」
「うわあああん!」
声を掛けると泣き出してしまった。その声に驚き鳥が数羽,バサバサと飛び去っていった。
「ちょ,ちょっと! 大丈夫だって!」
あたふたする俺。
「ど,ど,どうしよう!?」
同じくあたふたするハル。
「はあ……」
ため息を吐くマリア。(少しは手伝えよ!)
男の子はわんわんととどまることを知らず,どうしてよいか分からず途方に暮れかけていると,森の方から「エドくーん」と声が聞こえてくる。男の子は声のする方へ素早く振り返ると「ウォーレン!」と叫び,森の方へ入っていった。
「追いかけよう!」
ハルに賛成だ。森の中へ子供一人では危険だ。俺らは後を追った。
男の子はすぐに見つかった。ずっと泣いているので声のする方へ行けばあっという間だった。男の子は眼鏡をかけた男に縋りついていた。男は男の子の頭を優しく撫でている。こちらに気付くと軽く会釈をしてきた。反射的に俺も頭を下げると,男は話しかけてきた。
「どうも,すみません。失礼ながらどちら様でしょうか?」
「その子が道に一人でいたので,声を掛けようと思ったら森の方へ入っていったので,危ないと思って,その,追いかけて来たんです」
なんとも妙な会話だ。だが男は納得したようで
「そうですか。それはお騒がせしました」
と言い再び頭を下げた。
「あれ? またエドが泣いてる!」
「本当だ,まただ!」
今度はたくさんの声が森から聞こえたかと思うと,ぞろぞろと子供達が現れた。
「ねぇウォーレン,だれこの人たち?」
子供の一人がこちらを指差した。
「この人達は……,何でしょう?」
男は首をかしげた。こういう時にハルは頼りになる。
「ハルはハル。こっちは努力で,こっちはマリア。妖精女王様に会いに行くんだ!」
「ということは,旅人か何かですか?」
「はあ。そういうことになるかもしれません」
俺は曖昧に答えた。旅人と自己紹介する機会は無いと思っていたから,自分自身の回答に納得がいかなかったのだ。しかし男の方はさして訝しむこともなく「そうですか」と笑顔で応えた。
日も落ちてきて,木々に囲まれたここは暗くなりつつあった。
「ウォーレン,もう帰ろう。木の実もキノコもたくさん集まったよ」
「そうですね。ところで皆さんのこの後の予定は?」
そう聞かれて答えを考える。特に予定というものもないが,もう少し早く次の町へ着くと思っていた。少々無計画だった。腹もすいてきた。このまま森を無事抜けられるか不安だ。この人は地元の人間かもしれない。そう思い次の町までどれくらいか尋ねるとまだずっと先だと言う。困った。弁当も用意していない。いよいよ雲行きが怪しくなってくる。
すると
「もしよかったら僕らのところへ来ませんか? 夜は危険ですし,旅の疲れもあるでしょう」
男は柔和な笑みを浮かべた。俺は彼を頼ることにした。
「では,お言葉に甘えて」
そう言うと,彼は「フフ」と笑った。
「ああ,いえ。歳に似合わない言葉だと思って」
俺は少し恥ずかしくなった。
「改めまして。僕はウォーレン。よろしく,ドリョクさん,ハルさん,マリアさん」
こうして俺らはウォーレン達に付いて行くことにした。




