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第二話 おまけ

 子供達に柔道を教えていくと必然仲良くなる。不思議なことに子供らは俺を尊敬しているようだった。俺からすると魔法をうまく使いこなしている彼らの方がよっぽど才能に溢れていて羨ましいとも思うが,隣の芝はなんとやらで,お互いに相手を上に見るという関係が出来上がった。

 ある昼休みのこと。

「お兄さん,ご飯一緒に行こう」

と誘いを受けた。アツシは用事があるとかで俺とハルは子供らに店まで連れられて行った。

 異世界に来て不便に思うことは少なくない。日本から外国に行くのだって文化や言語の違いに困惑するのだから,異世界とて同じだ。その困ったことの一つに「文字」がある。アツシから異世界のことをいくつか聞いた時,さらっと言っていたことだが,この世界には文字が無い。看板もないし,地図も白地図でわかりにくい。装飾の文化はあるらしく,柄付きの服やバッグなどは見かけたが,文字や果ては記号までもが敬遠されているようだった。だから俺とハルはいつも同じ食堂で飯を食った。他に店があることを知りようが無かったのだ。そのため子供らに連れられて新しい店に行くのはわくわくした。

「なんて言う店なんだ?」

俺が尋ねると

「バーキン!」

と先頭を歩く男の子が答えた。バーキンというのは人名のようにも聞こえるが,俺はあえて追求せずに,どんな店か楽しみに後を付いて行った。

 店に入ると中は賑わっていた。子供らはずんずんと奥へ行き,空いていたテーブル席にぎゅうぎゅうと詰め込んだ。

「席取り完了! みんな行こうぜ!」

みな席に荷物を置くとわいわいがやがやと席を離れていく。ウェイターがいるのではなく,自分から取りに行くのか,と,なんだか高校にある食堂を思い出して懐かしくなる。

 カウンターに向かうと見慣れた顔つきの店員が対応してきた。見慣れた顔つき,とは日本人のような顔つき,異世界では存在が浮いてしまうような,そういう顔つきである。そして向こうも気付いたのか,お互いに

「転移者?」

と指を差しあっていた。

 店員は名をタカトと言って,数年前に転移してきたという。

「転移したときはマジビビったけどさ,今じゃこんな店を開けたんだから悪くもないと思ってるぜ」

ここ,バーキンはタカトの店だった。

「ご注文は?」

「何があるんだ?」

「ワッパーが看板商品さ。セットだとお得だぞ。今なら二個で5インだ」

「へぇ~,って」

思わず叫んでいた。

「バーガーキングじゃねえか!」

ハンバーガーをワッパーと呼ぶ感じ! 二個だとお得になるその感じ! まさしくそれはバーガーキングであった。

「バーキンってバーガーキングの略じゃねーか!」

異世界で,新しい店が見つかったと喜んでいたら知っているお店だったでござる。

「いやー,転移前は俺バーキンでバイトしてたんだよね。そんでメニューの作り方も知ってたからこっちで店開いたら結構人気出ちゃってさ」

タカトはへらへらと笑っている。

「ワッパーチーズのお客様~」

「はーい」

隣では注文を終えた子供達が商品を受け取り席へと戻っていく。

「で,なんにする?」

結局俺は腑に落ちないまま注文をし,席へと戻る。タカトは「転移者のよしみだ」と言ってフレンチフライにオニオンリング,更にはアップルパイなどおまけを大量につけてくれた。一人ではとても食いきれないと思ったので子供達に配ると,みな俺を尊敬の眼差しで眺めた。変なところで株を上げたようだ。

 異世界に来てバーガーキングかあ。美味いけどさ。なんか,こう,うーん。まあ,子供達も,ハルも喜んでるし,良いか。久々に知った味を味わえて俺も満足だしね。

 しかしただでさえ店舗の少ないバーガーキングが異世界に出店しているとは。貴重な一店舗を異世界で消費しているようでなんだかもったいない気がした。


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