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やくもあやかし物語  作者: 大橋むつお
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09『不〇投棄禁止』


やくも・09『不〇投棄禁止』   




 学校をちょっと出たところに不〇投棄禁止の札がある。



 なんで不〇投棄禁止なのかというと、通学路の立て札なんて、そんなにきっちり見たりはしないもんね。


 不〇投棄禁止なんだから、常識で考えれば不法投棄禁止だ。



 あることで、その不〇投棄禁止の札をまじまじ見ることになったというお話……。



 ちょっとだけ学校に慣れてきた、ちょっとだけね。


 クラスで喋れる子も二三人……まだ紹介はしないけどね。だって、友だちになり損ねて挨拶もしなくなったら見っともないじゃやん。


 あ、あの時は友だちだって言ったじゃん。なんて目で見られるのやだもん。


 先生も覚えた。覚えたというのは、授業以外で出会っても――あ、数学の先生だ――ぐらいに分かったということよ。


 まだ名前は憶えていない。だって、ほんの二週間前に転校してきたばかりだしね。


 そんな先生の中に、一人だけ名前を覚えた、ちょっと雰囲気のいい先生がいる。いつも幸せそうなオーラを発散している。


 幸田幸子って、名前からして幸せいっぱいな人だ。


 はつらつポニテを高々と結って、ポニテのせいか、目尻がほどよくキリリとしている。


 ほら、ポニテって、髪をまとめて耳より上の所でくくるじゃない。ポニテにすると顔の皮膚がリフトアップされて元気に見えるのよ。


 一度、トイレで出会った。


 階段の手すりが汚れていて、気持ち悪いんで手を洗いに行ったんだ。


 すると、幸田先生が鏡の前で髪をとかしていた。


「オッス、ごみほりにいったら、チョークの粉とか入ってて、髪に付いたみたいでさ……」


 さすがに髪を下ろしていた。ポニテを解くとロングでしょ。


 ロングなんだけど、やっぱはつらつ美人なんだ。




 ひょっとしたら、いろいろ理由を付けて生徒のトイレに来るのかも。


 そんで、偶然を装ってコミニュケーションとったり、生徒を観察したり。


 怖い顔して張り番されるよりは、ずっといいよね。



 その幸田先生が不法投棄をしているのを見てしまった。



 ほら、例の不〇投棄禁止のとこ。


 なんかレジ袋みたいなのをぶら下げていて、不〇投棄禁止のとこでポイと捨てちゃった。


 見てはいけないものを見てしまった……そんな気がして、目線をそらすと、そそくさと現場を離れた。


 それが、昨日、また見てしまった。



「困るんですよ、そんなの捨てられちゃ」



 オバサンの声がしたんで不可抗力で目が行ってしまう。思わず自販機の陰に隠れる。


「いくら先生でも、こういうことは困るんです。ほら、今までの分も持ってってくださいな!」


 オバサンは特大のゴミ袋みたいなのに入ったのを幸田先生に付き返した。


 チ!


 先生の舌打ちがここまで聞こえてきた。


「いいですね、不〇投棄禁止!」


「わーったよ、くそババア!」


 憎たらしい捨て台詞吐いて、先生がこっちにやって来る。


 わたしは、自販機の陰で小さくなって息をひそめる。


 前を通る。


 横顔なんだけど、見たこともない不貞腐れて土気色の顔で通り過ぎて行った。



 オバチャンの気配もなくなったんで、不〇投棄禁止の札の所まで行ってみる。


 札と注意書きがハッキリ見える。



 不幸投機禁止! ここは町内の、ちょっとした煩わしさや憂さの捨て場所です。不幸そのものを捨てないでください、処理できませんので。


 それから、幸田先生を見かけない。もう自習が三回も続いている。


 


 


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