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やくもあやかし物語  作者: 大橋むつお
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08『猫尽くし』


やくも・08『猫尽くし』   





 図書室当番が終わった。



 本来の図書室当番だったら一週間つづく。それが四日で終わったということは、もともと当番だった女子が学校に戻ってきたということなんだろうけど、その説明は無い。「小泉さん、今日からはいいから」。終礼で担任から言われておしまい。


 ま、いいんだけど。


 四日もピンチヒッターやったんだから説明くらいあってもいいんだけどね。


 この四日間で本の貸し出しと返却が二件ずつあっただけ。四時半を回ると、ほとんど杉野君と二人っきりだった。


 ま、いいんだけど。


 杉野君とは、マップメジャーのことと近道の事で、ちょこっと話しただけ。


 なんか、お互いに気を使ってるみたいな四日間だった。


 わたしも杉野君も人間関係苦手みたいだけど、まあ、よくやったんじゃないかな。


 ま、いいんだけど。



 もうちょっとで崖に突き当たるとこまで来た。


 ささやかなことを悩む。右に曲がるか左に行くか……。


 右に曲がれば216メートルの遠回り。


 左に行けば、路地っぽいのを抜けてつづら折れの道。つづら折れ通ったら、また時間が巻き戻ってしまうかも。


 終礼終わって真っ直ぐ帰ってるから、あの調子で巻き戻ったら、まだ授業をやってる時間に家に着いてしまう。「おや、早いわね」では済まなくなるだろう。


 でも……ウジウジしてるうちに左に曲がってしまった。


 路地っぽいを抜けてつづら折れが見えてくる。



 トトト……音もなく猫が駆け下りてきた。白いネコだったから印象的。


 音もなくと言って、トトトって表現はおかしいんだけど、なんか擬音めいた表現しないと頼りない。


 トトト……今度は黒猫が駆け下りてきた……と思ったら、茶猫が駆け下りてきた。


 次に三毛猫が下りてきたら笑っちゃう……思ったら、ほんとに三毛猫が下りてきたよ!


 アハハ!


 久しぶりに笑った。


 つづら折れを半分上がって振り返ると四匹の猫も振り返っていて「「「「ニャー」」」」と鳴いた。なんだか挨拶みたいだ。


 残り半分を上りかけると虎猫が下りてきた。こいつは挨拶もせずに、わたしの足元を駆け下りて行った。


 ということは……四毛猫とかが下りてきたりして?


 トトト……ほんとうに四毛猫が下りてきた、白黒茶に虎模様。


 めちゃくちゃ面白い!



 家に着いたら、別に時間は巻き戻っては居なかった。



 でも、お風呂掃除しながら思った。でもさ……四毛猫って存在してたっけ?


 ひょっとして世紀の大発見?


 人には言わないでこう、コミュ障少女の痛い妄想と思われるから。


 コミュ障少女って言いにくい(^_^;)、つづめてコミュ少女……コミュ障女……?


 ああ、だめだ、こんなこと考えたら、本当にそう呼ばれてしまう。


 湯船の中に手を潜らせて、ひそかにエンガチョをしてみる。


 一人でエンガチョができるかって?


 できるんだよ、内緒だけどね。


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